「5年で10倍」でも「一番マグロの半分」…中国に売る日本の米

カテゴリ:ワールド

  • 輸出量は5年で10倍に
  • それでも「一番マグロ」の半分
  • 香港では日本のおにぎりが大ヒット

中国・北京で日本の米の魅力をアピールするイベントが開かれた。

会場では寿司や海鮮丼など日本米を使った料理がふるまわれ、グルメドラマで中国でも知名度がある俳優の松重豊さんがPRに一役買った。会場にはネットで影響力を持つ「KOL(Key Opinion Leader)」らが招待され、日本米の情報を発信していた。このほかキャンペーン期間中、北京や上海の日本料理店で、日本米を使った特別メニューを提供するなどの取り組みが行われている。こうした取り組みを仕掛けているのは日本の外務省だ。

中国への日本米輸出量は5年で10倍に

日本の農林水産省のまとめによると、中国にある日本料理店の数は2017年で世界最多の約4万店あり、4年間で4倍近く急増した。また、地域別にみると、広東省や上海など経済的に豊かな沿海地域に多いものの、ここ数年で徐々に内陸部でも増加傾向にあるという。つまり、今後もかなり増加の余地があると見られるのだ。中国への日本産米の輸出量も5年間でおよそ10倍と急増している。

在中国日本大使館資料より作成

それでも「一番マグロ」の半分

順調なように見える米の輸出だが、金額にしてみると、直近の統計である去年(2018年)1月ー11月分では、約1億6900万円。今年、東京・豊洲市場の「初セリ」で落札されたクロマグロ1匹、3億3360万円の半分程度しかないのだ。

輸出拡大の最大の障壁は何といっても価格だ。日本産米はその流通コストのため中国での小売価格は日本国内での価格よりも高く、倍程度。更に中国ではすでにコシヒカリやあきたこまちなど中国産の日本ブランド米が売られていて、日本産ブランド米との価格差は概ね3〜4倍。普通の中国米との価格差に至っては10倍程度になることもある。このため、日本産米はまだ一部の高級店や富裕層向けのものであり、日本料理店ですらまだ一般的ではないのだ。

根強い風評被害

福島第一原発事故による風評も影響している。

中国はいまだに福島など10都県からの食品輸入を停止しているが、去年11月、新潟県産米の輸入停止を約7年ぶりに解除した。日本政府はこれら10都県からの食品輸入禁止措置自体が科学的根拠が乏しいとして 撤廃や緩和を求めているが、新潟県産米の解禁をめぐり、中国のネット上には「日本人が食べないものを中国人に食べさせようとしている」などといった、事実と異なる風評も散見されるなどイメージ克服にはまだ時間がかかりそうだ。

香港では日本のおにぎりが大ヒット

香港の地下鉄の駅などで販売される日本米のおにぎりが大ヒット

しかし、逆風ばかりではない。今、香港では日本米を使ったおにぎりが大ブームになっている。

「冷たいご飯は中国人にはウケない」とのセオリーを覆し、1個200円以上するおにぎりが地下鉄の駅などで次々と売れているのだ。日本政府関係者は、「日本米の味をわかってもらえれば、中国本土でも受け入れられる可能性は十分ある」とみている。中国本土のコンビニでもおにぎりが売られているが、申し訳ないが、日本のコンビニのおにぎりとは全く別物と言っていいほどの味だ。高くても質を求める中国人は多く、かつ市場は巨大だ。今は「一番マグロの半分」だが、今後”化ける”可能性はあるのだ。

おにぎり1個20香港ドル(日本円にして約280円)

【執筆:FNN北京支局長 高橋 宏朋】

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