ツイッターを「武器」にしたトランプ大統領 就任3年目の行方

折り返し地点のトランプ大統領は再選できるのか?

  • 10年前にトランプ大統領に初めてツイッターを教えたスペシャリストにインタビュー
  • ソーシャルメディアが起こしたアメリカ政治の地殻変動
  • トランプの生の声を、支持者はどう評価するのか

ツイッターを「武器」にした男

トランプ大統領(※以下、敬称略)はこれまで政治を牛耳ってきた官僚機構や大企業、マスメディアを否定、あるいは軽視し、支持者の生活に直結した利益の擁護者として、その地位を強固なものにしている。それを可能にした一つの「武器」がトランプと国民を直接繋ぐツイッターなのかもしれない。大統領就任から2年、折り返し地点を迎えたトランプは来年11月に行われる大統領選で果たして再選できるのか?

今から10年前にトランプに初めてツイッターを教え、現在、AP通信社のデジタル発信スペシャリストであるピーター・コスタンゾさんに、ニューヨークで話を聞いた。

ピーター・コスタンゾ氏(Peter Costanzo) AP通信社・デジタル発信スペシャリスト

10年前に芽生えた大統領への野心

ーートランプと最初に会った時の印象は?

私がトランプに会ったのは2009年の春です。トランプタワーの一室に通され、待っているとトランプが颯爽と部屋に入ってきました。そして、彼は席に座るなり「君は私に何を持ってきてくれたのかい?」と言ったんです。正直、大物のオーラのようなものを感じました。7分だけ時間を与えられ、当時、アメリカでもあまり知られていなかったツイッターについて説明しました。

メディアや、広告会社を通じなくても、自分が出演している番組や、著作を宣伝できるところや、考えたことをそのまま発信できる点をとても気に入ったようでした。トランプはツイッターの仕組みをすぐに理解しました。自分の番組を持っていたトランプは、当時、自分の名前を語って誤った情報を発信するなりすましの被害に悩まされていました。そこで、「私こそが本物のドナルド・トランプだ」という意味も込めて「@real Donald Trump」というハンドリングネームをつけることにしたんです。

その後大統領になりましたが、このハンドリングネームを変えることはありませんでした。2009年に、二度目に会った際、トランプは「オバマ大統領がもし有効な経済政策を打ち出せなければ自分が大統領選に出馬する」と明確に私に言いました。私は予期せぬ発言に驚いたのをよく覚えています。大統領になる野心は10年前からトランプの中に芽生えていました。

ツイッターが起こしたアメリカ政治の地殻変動

ーートランプが多用するツイッターによって何が変わったか?

トランプのツイートが良いか悪かについて一日中議論したところで、トランプ支持者は、何があろうとトランプを支持するでしょう。善か悪かという問題はむしろ重要ではないのです。トランプにとって、それが効果的なのかという問題なのです。そして、今明確に言えるのはそれが効果的だということです。そして今後それが有効でなくなる理由は今のところ見つかりません。

トランプがツイッターを自らの支持者に直接語り掛けるツールとして有効に使っていることは間違いないでしょう。トランプはどんなメッセージであろうと支持者に対して誠実であれば問題ないと考えているのだと思います。重要なのは支持者がトランプは直接自分に語り掛けていると感じていることです。メディアを介して、ある種のフィルターを介してではなくツイートは生のトランプの声なのです。支持者達が、トランプは自分に語り掛けているという感覚を持ち続けているうちはトランプの影響力は維持できますし、2020年の選挙にもきっと出馬することになるでしょう。

ツイッターもいつかはまた別のソーシャルメディアにとって代わる日が来るでしょう。しかし、ソーシャルメディアの有効性を人々が知ってしまった今、アメリカ政治とソーシャルメディアは深くつながり、好むか好まざるかを別にして、それをうまく活用した人間が勝ち上がっていく時代なのです。昔にはもう戻れないのです。

2020年大統領選に向けて

ーー大統領選の前年にあたる今年は、トランプにとって試練の年。米中貿易摩擦などに起因する経済の鈍化、ロシア疑惑など多くの困難が待ち受けている。大統領選に向け今後の行方をどう占う?

トランプの指は益々、スマホから離れなくなるでしょう。自分に対する攻撃に、きっとリアルタイムで反論をすることになるでしょう。最終的にそれが吉と出るか凶と出るかそれはわかりませんが、トランプはツイッターでこれまで以上に発信をしていくことになるでしょう。大統領の弁護士チームがそれは不利になるとどんなにアドバイスしても。

トランプの発信力データ

トランプの記念すべき第1回目のツイートには「今夜の番組に出演するドナルド・トランプを見逃すなよ!」とある。ここからすべてが始まった。

トランプの発信力はすごい。まずは、ツイッターのフォロワー数の多さだ。その数、約5,740万人そして何よりも頻繁にアップされるツイートの数だ。1か月のツイート数は約250~300。1日平均9回ツイートを投稿している。ちなみに、安倍総理のフォロワー数は約120万人。1日の平均ツイートは0.7回。
(※いずれも18年10月~12月の統計より)

ワシントン駐在記者の目

トランプ大統領の就任2周年を翌日に控えた1月19日、ホワイトハウス周辺ではトランプ政権の政策に抗議する女性団体による大規模なデモ行進が行われた。気温4度と冷え込むなか、赤ん坊を抱えた女性や、男性の参加者など数千人が集まり、手作りのプラカードを持った市民が「トランプは辞任しろ!」「アメリカにトランプは必要ない!」などと激しい批判の声を上げていた。

私は、取材先からオフィスに向かうためタクシーに乗ったものの、デモ行進で町のいたるところに交通規制が敷かれ、町は大渋滞。自然と50歳代の男性ドライバーと世間話をしていると、「ここ1か月仕事が激減している」と言って、彼は深いため息をついた。政府閉鎖で、ワシントンの観光名所である国立博物館は軒並みしまってしまい、観光客の数が減っているのだという。「トランプは何を考えているのか、(政府閉鎖で)得をしているのは、デモに参加する市民が利用する長距離バスくらいさ」と言って、また静かにため息をついた。猛々しくスローガンを叫ぶ声よりも、私は、タクシードライバーのため息が気になった。

たとえ大統領がツイッターで国民と直接繋がっても、国民の側からの呼応がなければ何の意味もない。トランプ大統領の政策を肯定的に受け取る支持者層も、自分の生活に害が及ぶと感じた時、果たしてこれまで通り手放しで支持できるのか?

大統領選を一年後に控えた今、アメリカ国民はまず何に重きを置くのか、冷静に見極めていきたい。

【執筆:FNNワシントン支局 藤田水美】

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