フランス当局は手も足も出ないはず 日本の法律で竹田会長を逮捕することは不可能

田代尚子
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  • 民間人同士の金銭授受は日本では賄賂にあたらない
  • 海外渡航時には身柄拘束される可能性は残る
  • そんな状況でJOC会長としての仕事は務まるの?

民間人同士の金銭授受は日本ではワイロにあたらない

2020年東京オリンピック招致をめぐる贈収賄容疑の金の流れ

オオシバ:
ぼくはオリンピックが楽しみなんだけど、竹田会長はどうなるの?

平松デスク:
そもそもフランス当局は、ドーピング疑惑の捜査の過程で、今回の不可解なお金の流れを発見した。これは賄賂なのではないかとして、竹田会長を事情聴取までしている。しかし、これは、日本の東京地検特捜部が捜査に乗り出すとしても、竹田会長を逮捕したり、強制捜査したりすることはできないんだ。

なぜかというと、日本の刑法の中に国外犯規定というのがある。これは外国で日本人が悪いことをした場合でも捜査はできるんだけれども、日本の刑法の、例えば、「贈収賄」という項目は、日本の公務員限定なんだよ。例えば、海外のお役人に賄賂を渡したとしても日本の刑法で処罰することはできない。

ところが、外国公務員に対する賄賂を処罰する法律も、日本にはある。これを「不正競争防止法」という。ただしこれはビジネスに関する賄賂だけ。例えば、タイのお役人に「ここで工場を作りたいから便宜を図ってもらいたい」と、賄賂を渡した場合は、相手は外国の公務員だから日本の企業の人も立件できるんだけれども、これは、ビジネス限定の話。

今回はオリンピック誘致に関することだから、ビジネスに関わることではないので、東京地検特捜部が仮に竹田会長やJOCに対して捜査に乗り出したとしても、贈収賄で捜査することは無理なんだよ。

オオシバ:
へえー。IOCの委員って「公務員」じゃないんだ

平松デスク:
そうなんだよね。
例えば不正競争防止法やOECDという条約もあるけれども、これはきっちり「商取引」と決まっている。
実は外国の公務員というのは、その国のお役人や政治家、きっちりとした国際機関の人たちが対象になる。だけどIOCというのは、国連の機関という扱いにはならないから、IOCの委員は「公務員」や「みなし公務員」に当たらない。だからそういう人にお金を渡しても、それは賄賂には当たらないというのが、今の日本政府の見解なんだ。

フランス当局の狙い

2020年東京オリンピックが決定した瞬間関係者と抱き合って喜ぶ竹田会長

オオシバ:
じゃ、なぜフランス政府は竹田会長の捜査をしているの?

平松デスク:
フランスでは民間人から民間人への賄賂は処罰できる規定があるんだ。だから今回は、最初に、フランス当局が東京地検特捜部に、竹田会長を事情聴取をしてくださいと2年前に要請が来ていた。しかしその時は、「民間人から民間人に対する賄賂の容疑」で捜査要請をしてきて、それに基づいて事情聴取したんだ。フランスは日本とは状況が違うんだよ。

今の段階は、予審制度の中で、竹田会長を訴追してよいかどうか裁判官が判断している段階だけれども、結局のところ、逮捕するなり、訴追するなり、起訴するなり、をやりたいんだろうけれども、竹田会長が日本国内にいる限りは、フランスは手も足もでない状況じゃないか、と私は思っている。

フランス予備審問の流れ

オオシバ:
フランスが日本に竹田会長の身柄を引き渡しを要請することもあるの?

平松デスク:
フランスが外交ルートを通じて日本政府に身柄の引き渡しを求める可能性はある。しかしまず、日本とフランスの間には、犯罪人の引き渡し条約というものがないので、そもそも条約に基づいた身柄の引き渡しはできない。だからフランス政府から日本政府に対して、身柄を引き渡してくれと要請がきてもそれに応じることはできない。

難しい言葉で「双罰性」というんだよ。両方の国が同じ状況でなければ、捜査協力はできない。

例えば「大麻」。今「大麻」が合法な国がある。一方で日本は「大麻」は違法行為。ここで双罰性が合わないから身柄の引き渡しをしてくれといわれても、うちの国は関係ないから、ということになる。それと同じで、フランスでは違法であっても、日本で違法でなければ、身柄引き渡しに応じることはできない。

代理処罰という制度もある。「おたくの国にいる人間は、うちの国で悪いことをしたから、おたくの国の法律で処罰してくれないか」という代理処罰の制度があるが、これについても同じ。フランスでは違法かもしれないけど、日本では違法ではないので、日本で処罰できないよ、ということ。

つまりフランスがいくら要請してきても、日本としてはどうしようもない、と返答せざるを得ない展開になると思う。

海外渡航すれば身柄拘束か

東京オリンピック開催まであと1年半

オオシバ:
じゃ、竹田会長の疑いは晴れたということ?

平松デスク:
これまでの世界的犯罪者をみていると、そこの国では大丈夫でも、よその国ではアウト、ということもある。フランスは竹田会長を逮捕なり訴追したいと思っている。仮に、竹田会長がドイツに行ったとする。そうすると間違いなくフランスはドイツに対して身柄を拘束して引き渡してほしいと、お願いする。

EUは一つの国のようなものだから、竹田会長がドイツに入国した時点で、おそらく身柄を拘束されるのじゃないかな。ということはEUにはまず行けない。あとは、かつてフランス領だった国にも行けない。

そうすると、竹田会長が世界を股にかけてオリンピック活動をするのは困難になるんじゃないかな。日本のオリンピックの代表者みたいな人なのに、日本から外に出られない状況になる。そうしたら竹田会長は役職を全うできなくなる。そうすると、辞めなきゃいけなくなる状況になるんじゃないかな。

【解説:フジテレビ 社会部デスク 平松秀敏】

【イラスト:さいとうひさし】