心機一転バッサリ切る前に…「髪の寄付」の呼びかけが話題なので詳しく聞いてみた

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  • 成人式が終わり、「髪の寄付」を呼び掛ける投稿が話題に
  • 31cm以上の髪は医療用ウィッグに生まれ変わる 
  • カラー、癖っ毛、白髪でもOK

ヘアドネーション知ってますか

「成人式が終わって髪を切る方、子供の医療用ウィッグのため、髪を寄付しませんか?」

先週14日に迎えた「成人の日」。
各地で行われた成人式には初々しいスーツや振袖に身を包んだ新成人たちが並んだが、今、Twitterでこんな呼びかけが話題になっている。

投稿者提供

女性の中には、着物に合わせたヘアメイクのために、大事に髪を伸ばしてきた人も多いだろう。
そしてその中には、式が終わった後は思い切ってイメージチェンジしたい、と思った人もいるはずだ。

そんな時、「せっかくなら、大事に伸ばした髪を有効活用したい!」という人にぴったりなのがヘアドネーション(髪の寄付)。

投稿者自身も以前40cm分のヘアドネーションをしたというが、今回の反響を受けて「寄付する髪は31cm以上」「黒髪以外でもOK」などの情報を追加で投稿したところ、「31cm以下でも受け付けてもらえる場合があります」といった情報や「白髪、癖っ毛でも大丈夫ですか?」などの質問が次々寄せられるなど、ヘアドネーションについて詳細はまだまだ知られていない。

そもそもどんな取り組みなのだろうか?
投稿者が寄付を行ったという、NPO法人Japan Hair Donation & Charity(JHD&C)にお話を伺った。

寄付はカラー、癖っ毛でもOK!

――Twitterでの呼びかけが話題ですが、これについては知っていた?

はい、もちろん存じております!
RTの伸びも凄まじいですが、コメント欄にたくさんの方の経験やあたたかい想いが綴られていて、感動するとともに、皆さまの善意を預かるものとして背筋が伸びる思いです。
ご承知の通り、この活動は広く一般の方の寄付によって支えられています。著名な方が表明されるインパクトもさることながら、ドナー(ヘアドネーションにご協力くださった方)お一人お一人がご自分の取り組みとしてSNSで発信し、それが共感を呼び、拡散されることが多いようです。今回の呼びかけも、ご自分のストーリーと重ね合わせる方が大勢いらっしゃったことで非常に大きな反響があったのではないでしょうか。そういった意味では、ヘアドネーションはSNSとの親和性が高いボランティアなのかなと考えています。

JHD&Cは、脱毛症や乏毛症・小児ガンなどの治療や外傷など、何らかの事情で「頭髪に悩みを抱える」18歳以下の子どもたちに医療用ウィッグを完全無償提供している、日本で唯一のNPO法人。
2009年の活動開始から現在まで、累計321個のウィッグを提供してきたという。

医療用ウィッグは寄付された髪だけで作られているというが、では実際に「成人式をきっかけにした寄付」は寄せられているのだろうか?

――「成人式の後で寄付する人」は多い?寄付が増える時期はある?

今回のように成人式や卒業式、七五三の後、それからプール授業の始まる前や、夏休みなどにも多くなります。
多くの方がバッサリ髪を切ってスタイルチェンジする時に、特に多く集まります。
また、時期はバラバラですが、結婚式の後や何かの発表会の後など、人生の節目に寄付される方も非常に多いです。


――どれくらいの寄付が届いている?

時期によって変動はありますが、平均して1日あたり約150〜200件のヘアドネーションが寄せられています。
ただし、メディカル・ウィッグの素材として役立てられるのは最短でも31cm(12インチ)以上で、それに満たない長さの髪の毛も多く含まれるため、必要な長さの髪の毛が十分に確保できているかといえば、残念ながら不足気味です。

髪の質や色を均一にする工程(JHD&Cのホームページより)

ウィッグにできる髪は31cm以上の長さが必要だが、その質や色などに大きな制限はない。
集められた髪はトリートメント処理されて質感や色が均一になるため、カラーやパーマ、ブリーチをした髪や、癖っ毛、白髪でも問題なく寄付できるのだ。

寄付する髪は小分けにしてゴムで束ねてから、カビが生えてしまうのを防ぐために乾いた状態でカットし、封筒に入れて送付する。
特別な手入れをした髪や、染めたことのない髪でなくてはならない、などの制限はないため、誰でも参加することができるのが特徴だ。

(JHD&Cのホームページより)

JHD&Cが寄付を受け付けている髪は、31cm未満(Sサイズ)・31~50cm未満(Mサイズ)・50cm以上(Lサイズ)の3種類。
31cm未満の髪の使い道は後述するが、Mサイズにあたる31cmの髪は、半分の長さに折ってメッシュ地に結び付けて使うため、約15cmのボブスタイルのウィッグになるのだ。

JHD&Cによると、寄付される髪の約8割がこのМサイズだが、子どもたちが希望するウィッグのほとんどはロングヘアのもの。
ロングヘアのウィッグを作るために必要なLサイズの髪は、寄付される全体の1割程度ということで、「長い毛髪の寄付はまだまだ必要です」と語っている。

集まりにくい長さの髪が特に求められていることに加え、1つのウィッグを作るのに必要な髪は約20~30人分ということで、とても手間暇のかかった一品ということになるが…

――化学繊維ではなく人毛にこだわるのはなぜ?どんなメリットがある?

何よりも、見た目が自然で、一見してウィッグとは分かりにくい点です。
特に、同じような年代の子どもたちが集団生活を送る学校などの場では、少しの違和感でも目立ってしまい、それが原因となって不登校などの深刻な問題に発展するケースがあると聞いています。化繊製のウィッグは安価で手に入りやすい反面、手触りや光沢などでそれと気づかれることがありますが、人毛のフルウィッグの場合、その心配はほとんどありません。

人目を気にせず外出できたり、おしゃれを楽しめたりと、頭髪に悩みがあっても普通の暮らしを送るお手伝いをするために、人毛100%にこだわっています。

集められた髪と仕分け作業(JHD&Cのホームページより)

JHD&Cでは31cm未満の髪はウィッグ用には使われないものの「評価毛(試作用の髪の毛)」としてシャンプーやカラーリング剤などの開発やカットマネキン用に販売され、ウィッグを作る費用になるなど、けっして無駄にはならないという仕組みだ。

さらに、ヘアドネーションを受け付けている団体の中には、JHD&Cではウィッグ用に使わない15~31cmの髪を利用し、帽子と組み合わせて使用する部分ウィッグを作っている団体もあるので、自分が寄付を考えている髪の長さに合う団体を検索するのがいいだろう。

「伸ばす過程も楽しみながら参加して」

ドネーション用のカットをしてもらえる“賛同サロン”も全国に存在し、年々認知度が高まっているというヘアドネーション。

その一方で、JHD&Cによると「15cmの髪もウィッグに使用できる」などの誤った情報によって短い髪が大量に送られるトラブルや、さらにはSNSを通して髪をだまし取られる詐欺事件が起きるなどの被害も起きているという。

JHD&Cは「子どもたちのウィッグとして役立ててほしいという善意が、誤解のせいで生かされないのは非常にもったいないことですし、正確な情報をお伝えする必要性を強く感じています。必要な情報に誰でも素早くアクセスできるよう、情報発信に注力しているところです」と語り、また、SNSを悪用した詐欺については「個別に『髪を送ってください』とお願いするようなことは一切ございません」と注意を呼びかけている。

――ヘアドネーションの取り組みを通して、最も呼び掛けたいことは?

「もしかしたらあの人ウィッグかな?」と思っても、ジロジロ見ないで、ぜひそっとしてあげて欲しいと思います。
これは髪の毛に限ったことではありませんが、「もしも私が当事者だったら」と想像し、相手の気持ちに寄り添った言動を心がけることで、何かに悩みを抱えていても他人の目が気にならない、誰にとっても暮らしやすい社会になるのではないでしょうか。

例えばメガネをかけていても、誰も何も気にしませんよね。ウィッグもそれと同じです。
ウィッグを着用しておしゃれを楽しむことは、心にも体にもポジティブで良い影響を与えてくれます。誰かの視線を気にしてウィッグをつけるのではなく、もっと気軽にウィッグを楽しめる世の中であってほしいなと強く願います。

――現在寄付を考えている人へ…

ヘアドネーションに限らず、チャリティやボランティアは、自分の意思で・無理のない範囲で行うものだと思いますので、気負わずに、伸ばす過程も楽しみながら参加していただければ嬉しいです。31cmもの長さを切ることは、ご自身にとっても大きなイメージチェンジとなりますから、切った後の髪型を美容師さんとしっかり話し合って、素敵に変身してください。

ドネーションカットする際は、必ずドライカットで!
カビなどが繁殖して、せっかくの髪の毛が使えなくなってしまうことがあるので、濡らす前にカットしてくださいね。

成人の日から1週間経ち、心機一転新たなスタイルで頑張ろう、と考えている人にぴったりの、この取り組み。
JHD&Cの公式サイトでは詳しいカットの仕方や送付方法の確認、賛同サロンの検索などができるため、そちらもぜひチェックしてほしい。