テレビは隠す?それとも見せる?CESで見えた世界の最新テレビ事情

カテゴリ:ワールド

  • 隠すテレビで話題を読んだLGと、見せるテレビで注目集めたSamsung
  • Appleがスマートテレビに参入を発表し、日本にも影響か
  • 5Gが進めばケーブルテレビの解約が増え、動画配信サービス中心になるか

今年も大盛況のうちに終了した、世界最大級の家電見本市『CES2019』。CES=Consumer Electronics Showという名の通り、アメリカ・ラスベガスに世界各国から最新の家電製品やテクノロジーが集合するイベントだ。主催者は今年、世界中から18万人以上が参加したと発表している。

最近のCESで良く出てくるキーワードは「5G・AI・Iot・自動運転・8K」の5つだが、今年のCESの会場にあったモニュメントを見てみると、トップの写真の様にテレビは左端にあり、さらに正面を向いていない。

近づいてみてみると左端にあるどころか傾けられ、画面を見るのに一苦労だ。
5つのキーワードの1つである8Kテレビが注目されるはずの家電見本市においても、テレビの扱いはこのようなものなのだろうか…。

一番人が集まっていたのは韓国勢

8Kテレビの製品化が進んだことがわかった今回のCES。途方もない美しさを見せた8KテレビはSONYやSHARP、Samsung、LGなどで大々的に発表されていた。

しかし会場で圧倒的に人を集めていたのは、展示の上手さもあると感じたが、SamsungとLGの韓国勢だった。

CESのメイン会場であるラスベガスのコンベンション・センターの中で最も近い入口にブースを構えていたLG。ブース外側で、曲がる液晶を大々的に使った巨大な映像展示を見せ、多くの足を立ち止まらせていた。そしてブースの中で一番の驚きを持って人々の目を引いていたのは、この曲がる液晶を利用した巻取り式のテレビだ。

「LG Signatures OLED TV R」と名付けられたこの巻取り式のテレビは、有機EL65型のワンサイズで市販予定だという。動画で見てもらうとわかるように、通常時はスピーカーがついた箱のようなものなので、普段はディスプレイを格納して、テレビや映画を見たい時だけディスプレイを表示できるのだ。

上の写真にあるように驚きの薄さで、この巻取り式のテレビは、古いアメリカ映画で見たような家具の中にテレビを隠すという、“隠すテレビ”の進化系だと感じられた。

「The Wall」

一方で、同様に人を集めていたSamsungブースでは、『The Wall』と名付けた219インチの巨大なマイクロLEDディスプレイに人だかりが出来ていた。スクリーンサイズを自由にカスタマイズできて、画面のアスペクト比も、あらゆる映像比率にできると紹介されていて、ベゼル(画面周囲の枠)がないため様々な利用シーンが考えられる。

「The Frame」

また、LGと違ってSamsungがコンセプトとして示していたのは、“見せるテレビ”だったように感じた。
「TV when it's on、ART when it's off」と書かれた、上記写真の『The Frame TV』というシリーズは、電源が切れた状態だと著名な画家の絵が額縁の中に飾ってあるようなデザインで、電源が入ると通常のテレビに切り替わる。QLEDを使用しており、様々な絵画をサーバーからダウンロードできるという。

LGブースのスマートホーム展示

現地で感じたのは、発表されていたテレビには、必ずと言っていいほどオリジナルのAIプラットフォームや、Google Assistant、AMAZON Alexaが搭載されていて、ブースで他のスマート家電と合わせてスマートホームの一製品として展示されていたことだ。車までもスマートホームの一貫として展示しているメーカーもあり、全てがつながっていく将来が見えた。

ついにAppleも参入したスマートテレビ

CES2019開催期間中のテレビに関する大きな出来事は、CESに参加していないAppleが、Samsungなど4社のスマートテレビにiTunesアプリを導入し、AirPlay2にも対応すると明らかになったことだ。

Netflixなどに並びiTunesが加わった

AppleはこれまでiPhoneユーザーが、自宅のテレビにAppleTVをつなげることで、iTunesのコンテンツや、iPhoneのミラーリングで動画、音楽などのコンテンツをテレビ上で見ることを可能にしていた。
しかし今回の対応で、Samsung・LG・SONY・VisioのテレビでAppleTV無しにコンテンツを見られることとなった。SONYが日本市場で発売するテレビにも対応させると話していることもあり、スマートフォンユーザーのうち、iPhoneユーザーが69.1%(株式会社カンター・ジャパン調べ)と多くを占める日本では、大きな影響が出そうだ。

iPhone上のコンテンツをミラーリングでテレビに表示

しかしなぜAppleはここに来てスマートテレビ参入を決めたのだろうか。
これには2つの理由がありそうだ。

1つは前述したように様々なメーカーがGoogle AssistantとAMAZON Alexaを導入する中、Appleの音声アシスタント「Siri」と、スマートホームのネットワーク「HomeKit」をどうしていくかを考えた結果だろう。「Siri」で動かすことができる「HomeKit」対応商品は、他の2社に比べ圧倒的に少ない。そのため、AppleTVといったハードウエアから利益を得るビジネスモデルを捨ててでも、ユーザーの多いiPhoneを活用し、スマートテレビに参入していく道を選んだのではないだろうか。

また2つ目にはコンテンツ戦略がありそうだ。
コンテンツを聞く・見る際に、CDやDVDを購入する形から、ダウンロードするという方向に潮流を変えたのはAppleのiTunesだった。しかし現在、動画配信業界ではNetflixやhulu、Amazon Prime Videoなどがサブスクリプション型のモデルで成功を収めており、それらはスマートテレビ上でアプリケーションとして利用できるようになっている。Appleは現在、独自番組制作や、番組の権利獲得に力を入れていて、コンテンツを様々な媒体で見られるように方針を転換したのだろう。

Qualcommは5Gを使った未来像を大々的に展示していた

一方で5G技術もテレビ業界に大きな影響を与えそうだ。

国土が広いアメリカは、日本のように電波塔から放送波を発信する形が取れず、ケーブルテレビが地方から広まり、2000年末時点ではアメリカの全世帯の約65.2%(総務省)がケーブルテレビに加入していた。2005年末には、ケーブルテレビと衛星放送などを合わせた多チャンネルサービスの普及率は約86.4%(総務省)と、全世帯の9割に迫る勢いだった。
しかしスマートテレビの普及なども相まって、NetflixやHuluなどの動画配信サービスを選択する人が増え、「コード・カッティング」と呼ばれるケーブルテレビなどの解約が進み、2017年3月末にはNetflixの加入者数が、米国のケーブルテレビ加入者数を超えた。

アメリカで5Gサービスを展開する通信大手・Verizonは、昨年10月に世界で初めて商用5Gサービスを開始し、5G対応の家庭向けブロードバンドサービスの提供を始めている。さらに、ケーブルテレビ会社の顧客を引き抜くため、共に接続すればテレビ上で動画配信サービスを見ることができるApple TV 4KかGoogle Chromecast Ultraのプレゼントなどを企画するなどしていて、さらに「コード・カッティング」が増え、動画配信サービスが攻勢を強めていきそうだ。

CESで見えたテレビの未来は、8Kの美しさだけでなく、家庭の中でのテレビの立ち位置が変わり、さらに放送事業者の行く末がどうなっていくのかも予感させていた。
日本でも2020年に5Gが始まる方向だが、テレビの進化と共にメーカーや放送業者はどうなっていくのか。そんなことを考えさせられるCES2019だった。

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