Appleが、GoogleとAmazonに喧嘩? CESで見つけた“音声アシスタント戦争”最前線

  • CESに出展していないAppleがGoogle・Amazonを揶揄するような広告
  • 家電・車などありとあらゆる物に音声アシスタントが搭載
  • 音声アシスタント戦争で遅れを取るAppleはどんな手をとるのか?

今年も大盛況のうちに終了した、世界最大級の家電見本市『CES2019』。CES=Consumer Electronics Showという名の通り、アメリカ・ラスベガスに世界各国から最新の家電製品やテクノロジーが集合するイベントだ。主催者は今年、世界中から18万人以上が参加したと発表している。

そんな中、多くの家電メーカーは必ずといっていいほどスマートホームのブースを出し、そこにはGoogle AssistantとAmazon Echoの2つの文字が見えていた。

“What happens in Vegas stays in Vegas.”

“What happens in Vegas, stays in Vegas.”

これはラスベガス観光局が使っていたスローガンだ。直訳すると「ラスベガスで起こることは、ラスベガスに残る」で、意訳すると「あなたがラスベガスでやったことは、ラスベガスの外に漏れることはない」=「ラスベガスでは思いっきり羽目を外して遊んで」という意味だ。つまり、日本語では、「旅の恥はかき捨て」という慣用句に言い換えられるだろう。映画『ハングオーバー』を見たことがある人は、結婚式前に男だけの旅行でハチャメチャをする4人を思い返してみるとどんな感じかわかるだろう。

英語圏ではよく知られている“What happens in Vegas, stays in Vegas.”だが、Appleはこれをもじった看板広告を上記写真の様にGoogleブースから見えるところに大きく示していた。

What happens on your iPhone, stays on your iPhone.

「あなたのiPhoneで起きることは、あなたのiPhoneで完結する」と訳せばいいだろうか。つまり、GoogleやAmazonが起こしてしまっている個人情報の漏洩問題や、一般データ保護規則(GDPR)で罰金を命じられたGoogleなどを揶揄するような広告なのだ。
AppleはHP上に「Appleは、プライバシーは基本的人権であると信じています」と、ユーザーのプライバシーを大切にしていることをアピールしている。

あなたのApple製デバイスには、数多くのあなたの個人情報、つまり非公開のままにする権利があなたにある情報が入っています。
(…中略…)
すべてのApple製品は最初から、そのような個人情報を保護できるように設計されています。そして、何を誰と共有するかを決める選択権はあなたにお渡しします。
(Apple HPより)

上記のようにHP上でiPhoneのプライバシーに対する姿勢を記しているAppleが、GoogleやAmazonなどのクラウド上で全てが処理されるようなシステムを批判するのは、iPhoneの優位性を示すためだけではなく、音声アシスタント競争で差をつけられている同社の危機感もあるのではないだろか。

実際、Appleとは違い、サードパーティに対しても音声アシスタント機能を公開するオープンなシステムのGoogle AssistantとAmazon Echoに関しては、今年のCES2019では、両社の音声アシスタントを搭載した大量の商品が、様々なサードパーティから発表されていた。

Google、Amazonが描く未来は?

2018年のCESでは、シェアを伸ばし続けるAmazon Alexaに対抗するためか、Google Assistantを使用する際の掛け声「Hey Google」で、街中をラッピングしていたというGoogle。
今年も、CESのメイン会場であるラスベガス・コンベンションセンターの正面入口の向かいに、大きなブースを建てていたほか、ラスベガスを走るモノレールを「Hey Google」でラッピングし、ラスベガスの中心部でも広告を出すなど、注目を集めていた。

カプセルトイのような仕組みで、Google Assistantを体験するとGoogleの製品や記念グッズなどがあたるブースでは、確認しただけでも120分待ちができるなど、大人気。

ブースの内側では、「Friends of The Google Assistant」という言葉の通り、壁一面にGoogleの音声アシスタントが搭載された自社製品やサードパーティ商品が並べられていた。テレビやスマートフォン、電球はもちろん、電子レンジ、炊飯器、カーナビ、コーヒーメーカー、ヘッドホン、インターホン、 お掃除ロボット、EV自動車の充電スタンドまでが並ぶ。Google Assistantを利用して家電全てを管理し、スマートホーム化できる未来は遠くないことを予感させる展示となっていた。

さらにGoogle Assistantが使える自動車用の「Android Auto」が内蔵された車も展示し、音声アシスタントを利用したカーナビの設定や、音楽などのコンテンツを多くの人が楽しみながら体験していた。Googleが車載OSまでをも狙っている(AppleはCarPlayで対抗)ことが見て取れた。

Fordも自社ブースとは別にコンベンションセンターの外側に自動車を展示、ここには「Hey Google, ask FordPass to star my car」と書かれた看板があった。自社のFordPassというアプリとGoogle Assistantを使い、車のエンジンをかけられるという。本格的な自動運転が始まれば、声で車のエンジンをかけ、行き先を指定して向かい、エンジンを切る、そんな未来が間近に迫っている。

AmazonもGoogleと同様に巨大な展示スペースで、ブースの入口近くにAmazon Alexaが搭載されたAudiの電気自動車『e-tron』を展示。音声で地図や音楽のコンテンツをスマートフォン無しに使用でき、こちらもやはり車載OSを狙っている姿勢が見て取れた。

もちろんAmazonブースでもAmazon Alexaが搭載された様々なスマート家電が展示され、Googleと争うスマートホーム市場がいかに大きなものになっているかがわかるような展示だ。

驚いたのはAmazon Alexaを搭載したヘルメットだ。Amazon Alexaで行き先を指定し、AR技術を使い、ヘルメットのシールドに映像を映して、ナビをさせるスマートヘルメットは、目線を変えずに安全なドライブを可能にするという。

オーブン、洗濯機、掃除機、空気清浄機など、本当に何から何まで音声認識が載せられていて、全ての家電がコネクトされた未来はそう遠くないと感じた。

Appleはどう戦っていくのだろうか

そもそも音声アシスタント機能が搭載されたデバイスを、最初に大々的に発表したのは2011年のAppleのSiriだった。しかし2014年に発表されたAmazon Alexaと、2016年に発表されたGoogle Assistantに、現時点で大きく遅れをとってしまったことは否めない。

今後GoogleとAmazonの音声アシスタント戦争にAppleが入り込み、三つ巴の戦いに持ち込むことはできるのだろうか。世界のスマートフォン市場におけるiPhoneユーザーの比率は21.98%(2018年12月時点・StatCounter調べ)と、約5人に1人は利用している計算だ。この利用者を活用しようと、AppleTVといったハードウエアから利益を得るビジネスモデルを捨てて進めたのが、「テレビは隠す?それとも見せる?CESで見えた世界の最新テレビ事情」でも書いた、SONYやSamsungのテレビへのiTunes参入だろう。

スマートスピーカーに限って言えば、AppleはSiriを搭載したHomePodを2018年初頭に発売している。アメリカでのスマートスピーカー市場は、Amazon70%、Google25%、Apple5%(2018年9月時点・CIRP調べ)と徐々にではあるが存在感を出し始めている。

Appleは、Google・Amazonの音声アシスタント二大巨頭に対抗できるのか。
冒頭に書いたプライバシーへの問題とともに、この視点にも注目していきたい。

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