自動運転の先に見えたもの。CES2019で見えた未来の車のカタチとは

カテゴリ:ワールド

  • 自動車メーカーの展示はARを利用した運転や空間作りのコンセプトが多い
  • 家電メーカーなど自動車メーカー以外からの展示も相当数あった
  • もはや自動運転車は自動車メーカーのものではなく、空間を楽しむものになる

今年も大盛況のうちに終了した、世界最大級の家電見本市『CES2019』。CES=Consumer Electronics Showという名の通り、アメリカ・ラスベガスに世界各国から最新の家電製品やテクノロジーが集合するイベントだ。主催者は今年、世界中から18万人以上が参加したと発表している。

車の自動運転化が進むと、車を所有する必要がなくなり、使いたいときにだけお金を払い利用する“サービス”(MaaS=Movilty as a Servise)になると言われている。TOYOTAの豊田章男社長が、MaaS専用の自動運転電気自動車『e-Palette』を発表したCES2018から1年が経った今年のCES。日本国内でも2020年に向けた自動運転実用化に先駆け、警察庁が自動運転レベル3(条件付き自動運転)の走行に向け、法整備を本格化させている。

CES2019では、自動運転のその先にある、未来の車の姿が見えた。

自動車メーカーが示した未来

CES会場の中心地・ラスベガスコンベンションセンター。自動車メーカーは北ホールでの展示となっていた。ここに展示をしていたのはHONDA・日産などの日本勢や、フォードやアウディなどで、各社未来の車の展示をしていた。

日産ブースの「Invisible-to-Visible」

日産が発表したのは、リアルとバーチャルの世界を融合することで、ドライバーが見えないものを可視化するという未来のコネクテッドカー技術『Invisible-to-Visible (I2V)』。

ARを使い、土砂降りの雨の中でもクリアな視界で運転ができたり、車内外のセンサーが収集した情報とクラウド上のデータを統合することで車の周囲の状況や、見えないカーブの先の情報をドライバーに提供するなどのコンセプトだ。
また、「充実したソーシャルライフ」のため、ARで見える家族や友人などの3Dアバターが、ドライブに同乗したり運転をサポートしたりするなど、自動運転時に車内で過ごす時間を、より快適で楽しいものにするという環境づくりも発表していた。

メルセデス・ベンツの「Vision URBANETIC」

『Vision URBANETIC』という自動運転のコンセプトカーを展示していたメルセデス・ベンツ。
車に取り付けられた複数のカメラやセンサーで、車両の周囲をモニターし、他の道路利用者に対して、車両の前面の大型ディスプレイを使って注意を呼びかけることができるという。

この車は、未来の都市課題を解決するというコンセプトで、上部を積み替え、最大12人が乗車できるシャトルバスにしたり、無人カーゴにすることができ、なおかつ自動運転車のため、日中は人の輸送をして、通行料が減った夜間に荷物を輸送する事ができるという、新しい車の形が提案されていた。

キアの「R.E.A.Dシステム」

自動車メーカーのブースとして異例と感じたのは、韓国のキアだった。『R.E.A.Dシステム』を使ったコンセプトカーなのだが、中にあるのは座席と大きなディスプレイ。車というよりも一つの部屋とも言える形だ。
このシステムは、マサチューセッツ工科大学と共同研究で生まれたもので、AIを使ってリアルタイムでドライバーの心理状態を分析して、照明や室温、映像などの車内環境を最適化していくという。
自動車が展示されていると思っていた筆者にとっては、コンセプトカーではあるものの運転席もなにもない“部屋”の展示は驚きだった。

自動車メーカー以外の自動運転車

Panasonic『SPACe_C』

一方で、自動車メーカー以外も様々な車に関する展示をしていた。

Panasonicが展示していた、自動運転機能を備えた電気自動車『SPACe_C』。
パワーユニットに乗車カーゴを載せた、上下分離できる車として昨年話題になったが、今回の展示では、『SPACe_C』の上部に野菜が入った冷蔵ケースを搭載し、「決まったルートを走るスーパーのようなもの」として発表していた。
担当者は「用途によって上部を付け替え、スーパーでも病院でも様々なものを考えていきたい」と話していて、自動運転技術の先のサービスのコンセプトを見せていた。

Boschのコンセプトカー「Shuttle Mobility」

Boschと聞くと電動工具を思い浮かべる人が多いと思うが、こちらもMaaS対応の自動運転車「Shuttle Mobility」を展示。この車両は周辺環境とシームレスに接続したドライバーレスの自動運転電動シャトルで、予約・シェアリングなどあらゆるモビリティサービスを包括的に開発しているという。
Boschが描く未来では、スマートフォンからシャトルを予約すると、要求された場所に最も近い車両を特定し、同様のルートで移動したい他の利用者を見つけ、安い運賃で人や物を運搬。この取組で市内の交通量を減少させ、環境への影響を低減させることができるとしている。
シャトルが要求された乗車地点に到着すると、利用者は再び自分のスマートフォンを使って本人確認を行い、予約した乗客は必ずシャトルに乗り込むことができるというのだ。
Boschは車だけでなく、その他周辺の全てのサービスの未来を示していた。

自動運転に必要なAI、カメラ、セキュリティの発表も

もちろんCES2019では、自動運転の先のコンセプトだけではなく、自動運転に関わる様々なものも展示されていた。

自動車部品大手のDENSOは、自動運転の世界でのセキュリティーに関して発表。自動運転化が進むと、車や周囲の情報はクラウドに送られることになるが、その情報を車上で改ざんされないように、ブロックチェーンを利用するという。
荒い運転やマナーを守る運転など、車の運転の仕方で任意保険の料金なども決められるようになる未来を見据え、運転データを改ざんさせないようにデータをブロックチェーン化。さらに車を売る際にも、走行距離や修理履歴などを改ざんできないため、リセールバリューも守られるという。ブースの担当者は「ブロックチェーンの車載を考えているのはDENSOだけではないか」と話していた。

様々なスタートアップ企業が注目されているイスラエルからは、2017年にIntelに買収されたMobileyeが大きなブースを構えていた。
「インテル入ってる」ではなく、「INTEL OUTSIDE」と映像に流していたMobileyeは、担当者が「自動運転が目的ではなく、人命を守ることが一番の目的」と強調したように、データ分析で交通事故を無くすことを目標としていて、12個のカメラを周囲に付けた完全自動運転車を展示していた。
この12個のカメラで、全ての周囲の状況を確認し、クラウド上に集められた生データで地図を作成し、それを車に戻していくことで、自動運転につなげるこの仕組み。既存の車につけられるものもあり、様々なデータを集めて安全な運転ができるようにするMobileyeは、フォルクスワーゲンがシステムの採用を決めたことがCES期間中に発表され話題となっていた。

NVIDIA DRIVE AutoPilot

他にもSONYがカメラの技術で培ったイメージセンサーを利用した自動運転の映像展示や、半導体メーカー・NVIDIAも状況認識機能とインテリジェントなコックピットを独自の方法で組み合わせた『NVIDIA DRIVE AutoPilot』搭載車の展示。

パイオニアも完全自動運転を想定した、車室内空間全体を活用した映像や音による情報提供や、それをリラックスした状態で操作できるデバイスなどを搭載した未来のコンセプト・コクピットを紹介し、家電メーカーのSamsungも自社の音声認識を利用し、安全機能を搭載したコンセプトカーを展示していた今回の『CES2019』。

AMAZONやGoogleも既存の車に、彼らの音声認識ソフト「Amazon Alexa」や「Google Assistant」を採用し、車の起動から行き先の指定、その他のコンテンツの提供をする車を展示しているのも印象的だった。

Amazonブースに展示された「AMAZON Alexa」搭載のAudi

自動運転車は、もはや自動車メーカーだけのものではない。
さらに自動運転車が現実となれば、これまでの自動車の概念は変わり、運転を楽しむものから空間を楽しむIoT機器に変わる。
また個人が所有するものから、スマートフォンなどを使用したシェアリングエコノミー化が進んでいく。

CES2019での各メーカーの展示は、そんな自動車の未来が近づいていることを予感させていた。

ワールド・テック・リポートの他の記事