米陸軍RC-12Xガードレイル電子偵察機飛来の意味

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  • “空飛ぶ聞き耳”RC-12Xの横田飛来
  • 南北「板門店宣言軍事分野履行合意書」
  • 英仏も対北朝鮮制裁「瀬取り監視」参加へ

“空飛ぶ聞き耳”RC-12X増援?

1月6日、米空軍・横田基地に双発のプロペラ機が着陸した。キングエア200という民間機がベースだが、機体上下にさまざまな形状、大きさのアンテナや突起が突き出している。左右主翼端の大きな構造体もアンテナだろう。

米陸軍RC-12Xガードレイル電子偵察機(撮影:SPAR65さん)

航空軍事評論家の石川潤一氏によると機体後部左右の、何かのマークのように見える黒っぽい「●」も、「移動体通信や小型無線機などで使われている周波数帯Pバンドの通信傍受用アンテナだ」という。
これは、米陸軍のRC-12Xガードレイルという電子偵察機だが、特に通信傍受が、その任務で徹底的に敵の通信を受信・記録するのだという。

いうなれば、“空飛ぶ聞き耳”。この画像を撮影、フジテレビのインターネット番組「能勢伸之の週刊安全保障」に提供したSPAR65さんによると、横田基地にいたのは数時間で、どこかに飛び立っていったという。

RC-12X@嘉手納基地 (撮影:久場悟さん)

そして1月9日には、沖縄・嘉手納基地にもRC-12Xが姿を見せた。日本国内の基地には配備されていないRC-12Xだが、石川潤一氏によると、RC-12Xは米本土の基地に配備されているほか、韓国の平沢基地にも少数が配備されているが、横田基地に姿を見せたのは、米本土の基地所属のRC-12Xだという。

南北合意で「軍事境界線飛行禁止区域」…韓国偵察機の活動に影響は?

なぜ、韓国・平沢基地所属ではなく、米本土の基地所属のRC-12Xが日本国内に姿を見せたのか。断定はできないが、米軍は朝鮮半島情勢を中心に極東の情報収集態勢の強化を図っている可能性がある。

板門店宣言軍事分野履行合意書

なぜなら韓国と北朝鮮は、昨年9月に結ばれた「板門店宣言軍事分野履行合意書」に基づいて、「2018年11月1日より、軍事境界線飛行禁止区域を設定することにした」からである。 それによれば、「(ヘリコプターのような回転翼機ではない)固定翼航空機は軍事境界線から図のような東部地域は、40km幅、西部地域は20km幅を適用し、飛行禁止区域を設定する。

また、「空中敵対行為中断区域」として「(固定翼、回転翼、無人機、気球のBuffer zone設定)回転翼航空機(ヘリコプター)は軍事境界線から10kmに、ドローンは東部地域15km・西部地域10kmに、気球は25kmが飛行禁止となる」となっていたので、韓国軍の偵察機は、行動に制限を受けることになる。

韓国空軍RC-800電子偵察機(提供:ナカムラさん)

韓国空軍は、RC-800という電子偵察機を保有・運用している。この飛行禁止区域や空中敵対行為中断区域の設定で、韓国軍の情報収集能力には影響はなかったのだろうか。そうだとするならば、米軍が情報収集態勢の強化に動いたとしても不思議ではないだろう。

その一環として、米本土から増援するRC-12Xを韓国に展開する途上、給油や乗員の休憩のため、横田基地に立ち寄り、いざという場合に備え、韓国内外の米軍基地に慣熟飛行することもありうるだろう。

38North“ウラン濃縮の可能性”

1月9日、米国の北朝鮮専門研究機関「38North」は、2018年12月19日に撮影された、北朝鮮の寧辺核施設の衛星画像を分析した。
それによると、かつてウランから核兵器の材料になるプルトニウムを生産するのに使用された5メガワットの原子炉建屋や、実験用軽水炉などの建屋の屋根はほとんど雪で覆われ、また、どちらの原子炉の建物からも温水放出または蒸気放出は識別できなかった。

つまり、原子炉を運転している形跡は確認できなかったということだろう。しかし、ウラン濃縮施設であるガス遠心分離機が存在するとみられる建物の屋根には雪がなかった
このため、内部の遠心分離機にウランが供給されているかどうかは不明としながらも、遠心分離機の運転可能性があると分析していたのである。このことは、今後の米朝首脳会談の可能性が取りざたされる中、無視できないことであるだろう。

英・仏海軍が北朝鮮瀬取り監視参加

さらに10日、ロンドンで行われた日英首脳会談で、北朝鮮のいわゆる「瀬取り」対策として、英海軍がデューク級フリゲート「モントローゼ」を日本に派遣して、警戒監視活動にあたることが決まったほか、11日にフランスで行われた日仏外務・防衛閣僚会合でも、フランスが北朝鮮の「瀬取り」監視に協力するため、今年前半に洋上哨戒機1機と軍艦1隻を派遣することで合意した。

英海軍デューク級フリゲート「モントローゼ」

これは、北朝鮮の核・ミサイル開発を抑止するため、国連の安全保障理事会常任理事国5か国のうち、米英仏の3か国が、日本を拠点に北朝鮮の制裁破りを監視することになる。安保理常任理事国は、いわば合法的な戦略核兵器保有国だ。
それだけ米英仏三か国は、北朝鮮の核開発・ミサイル開発への関心が高いということだろう。

北朝鮮が、開発・試射を実施した火星15型ICBMは、米本土のみならず英仏を含む欧州も射程範囲だ。発射試験こそ、昨年実施されていないが、保有を止めたとの情報もなく、米国のみではなく英・仏にとっても気がかりな存在であるはずだ。

仏空母「シャルル・ド・ゴール」展開

仏海軍の空母シャルル・ド・ゴール

さらに、日仏2プラス2では、仏海軍の空母シャルル・ド・ゴールと海上自衛隊が、春にインド洋で共同訓練を行うことになった。
そして岩屋防衛相は、「空母シャルル・ド・ゴールがインド洋並びにこの地域に派遣されることを踏まえて、どのような協力関係・共同演習等が可能か、これからしっかり当局間で検討を加速してまいりたい」として、仏軍空母の展開・自衛隊との協力拡大に期待を滲ませた。
米軍のみならず、仏軍にも極東で睨みを利かせてほしい、ということだろうか。

米朝首脳会談とRC-12X電子偵察機の活動

閑話休題、トランプ大統領が金正恩委員長との2回目の米朝首脳会談に、どのような姿勢で臨むか不明だが、米朝首脳会談が実施されるならトランプ大統領は、北朝鮮の核開発・生産状況、ミサイル等の配備・生産状況について、詳細に掌握していなければならないはずだ。これは、日本の安全保障のみならず、英・仏にとっても関心事項だろう。

RC-12Xガードレイルの日本飛来は、米軍が極東で進めているかもしれない情報収集態勢強化の、氷山の一角ということかもしれない。

【動画】「能勢伸之の週刊安全保障」(1月12日配信)を見る 

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