“100万円お年玉”ZOZO前澤社長になりすました「偽ツイート」は違法か?弁護士に聞いた

カテゴリ:国内

  • ZOZO前澤社長の偽アカウントが複数登場
  • 便乗してリツイートを呼び掛け、問題になっている
  • “偽ツイート”は名誉棄損罪等に問われる可能性がある

ZOZO前澤社長の偽アカウントが複数登場

ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する、ZOZOの前澤友作社長が1月5日にTwitterに投稿した「100万円を100人にプレゼントする」という企画のツイートが、リツイート数の世界記録355万件を更新し、7日午後11時59分、リツイート数は554万回を超えた。

そして8日、当選者100人が選ばれ、喜びの声をあげるなど大変な話題となった一方で、Twitterの運用ルールに引っ掛かるのではないかという一部の指摘に対して、Twitter Japanが否定する騒動があったほか、前澤社長になりすました“偽アカウント”が複数登場し、前澤社長がTwitter上で注意喚起するなど問題にもなった。

たとえば、ある偽アカウントは、前澤社長のTwitterでのアイコンや画像をそのまま利用し、1月6日に以下のように投稿。

「現在とても多くのRTにつき、本垢だけでは1/7までに全てのフォロワーの把握が難しいので、こちらのサブ垢で急遽対処することになりました。この垢をフォローとRTしてください!把握のためにすいませんがお願いします」

このようにリツイートを呼び掛け、5万6000件のリツイートを獲得したものの、その後、アカウント自体が削除された。

実害は報告されていないが、こうした著名人になりすました、偽アカウントによる“偽ツイート”は法的に問題ないのか?

「となりの法律事務所」の沖崎遼弁護士に見解を聞いた。

なりすまし行為自体は違法ではない

――前澤社長になりすました偽アカウントによる“偽ツイート”は法的に問題ない?

今回問題となっている“偽ツイート”はフォローとリツイートを求めるだけの内容であることから違法性を帯びるものではなく、法的な問題はないと考えられます。

そもそも、“偽ツイート”は前澤社長になりすまして行われた行為ではありますが、なりすまし行為がされただけでは違法性は認められません。

もっとも、偽物のアカウントには前澤社長の写真等も使用されておりましたので、「肖像権」の侵害が別途、問題とはなり得るでしょう。

また、前澤社長を名乗って、ツイッターを開設した行為自体が、自分の氏名を独占的排他的に使用することができる権利である「氏名権」の侵害と捉えられる可能性があります(東京高判平成14年9月12日判決、東京地判平成6年10月28日判決参照)。

――偽ツイートには 「100名様に100万円を現金でプレゼント」とは書いていない。この場合、お金を払わなくても罪にならない?
 
結論から言うと、お金を払わなくても罪にはならないと考えられます。

今回はあくまで、前澤社長とは別の人格がツイッターアカウントを開設しているため、前澤社長本人のツイート「100名様に100万円を現金でプレゼント」とは無関係といえます。   

また、今回の場合、フォローやリツイートを求めているだけであり、金銭的な損害が一切発生しない事案なので、その点からも罪になることはないと判断できます。

名誉棄損罪等に問われる可能性がある

――偽ツイートをした人をどうすれば罪に問うことができる?
  
“偽ツイート”(なりすまし行為)によって成立しうる犯罪としては、主に名誉毀損罪(刑法230条1項)と偽計業務妨害罪(刑法233条)が考えられます。

“偽ツイート”の内容自体が第三者に認識されることによって、前澤社長の社会的な評価が低下すると判断できる場合には、名誉侵害等の違法性を帯び、名誉毀損罪に問われます。

また、“偽ツイート”によって前澤社長のイメージの悪化を招き、その結果として業務が妨害されるおそれがあるような場合には偽計業務妨害罪に問われます。

今回の件とは少し話が離れてしまいますが、フォローバックなどをすることによって、DM等の手段で詐欺目的のフィッシングや、個人情報の取得、アフィリエイトサイトへの誘導をする手口に利用されることがあります。

前澤社長本人と信じさせることによって、「社会的な価値がある有名人(前澤社長)と直接繋がってやり取りをすることができる」という高揚感でだまされてしまうケースもあり得るでしょう。

そうすると、金銭等を支払ってしまったり、何らかの商品を購入させられたりするケースが出てきますので、その場合には詐欺罪等に問われる可能性が出てきます。


――そもそも、偽ツイートをした人には何のメリットがあるのでしょう?
  
前澤社長への個人的な嫌がらせを目的としていると考えれば、今回の“偽ツイート”による騒動がニュースにまでなって、前澤社長が対応に迫られたこと自体がメリットだといえるでしょう。

詐欺的な目的をもって“偽ツイート”をしていたのであれば、フォローバックなどをすることによって、DM等の手段で詐欺的なフィッシングや、個人情報の取得、アフィリエイトサイトへの誘導をしやすくできるというメリットは考えられます。

ただ、“偽ツイート”の目的は不明な場合が多く、今回も単純に世間の注目を浴びたいというだけのいたずらとして行われただけということも考えられます。

現に、ニュースになってすぐに偽物のツイートはアカウントごと消去されています。

――また今回、なりすましの他に「私も○○万円を○○人にプレゼントする」という便乗ツイートも散見されている。こうしたツイートをして、結果としてお金を払わない行為は法的に問題ない?

結論として、法的に問題はないといえます。民事上・刑事上から考えてみます。

民事上の法的な責任としては贈与契約(民法549条)が成立するのかがポイントになります。

贈与者は特定人に贈与することまではツイートいないので、受贈者つまり贈与を受ける者も不特定多数になっておりますので、リプライやリツイートしただけで贈与契約が成立すると判断することは難しいでしょう。
したがって、民事上の法的な問題はないと思われます。

刑事上の法的な責任としては、詐欺罪(刑法246条)が成立するのかがポイントになります。
もっとも、リツイートを求めるだけでは財産的な損害が発生するとはいえないので、詐欺罪は成立しません。

傍論にはなりますが、事業者がツイートをした場合、ケースによっては景品等表示法の問題が発生する可能性はあります。

ZOZO前澤社長の偽アカウントが複数登場した、今回の騒動。
話を伺った弁護士によると、偽アカウントによる偽ツイートは名誉毀損罪や偽計業務妨害罪に問われる可能性があり、金銭的な損害が生じた場合には詐欺罪に問われる可能性もあるようだ。

沖崎遼
となりの法律事務所 パートナー弁護士 
北海道大学法学部卒。2012年弁護士登録(65期)。第二東京弁護士会所属。
民事全般から企業法務まで幅広く手がける。