【中国トンデモ事件簿】「サボりを許さない」中国の学校で制服にチップを取り付け生徒を監視

カテゴリ:ワールド

  • 小中学校がチップを内蔵した制服を導入
  • 教育現場で導入が進む監視システム 
  • 中国では、監視されるのは当たり前

“居場所を把握できる制服”でずる休みを防ぐ?

中国・貴州省の小中学校で、チップを内蔵し、居場所を把握できる機能を備えた制服が導入され波紋が広がっている。中国メディアによると、この“スマート制服”は、肩の部分に個人データを記録したチップがつけられている。生徒が、何時何分何秒に登下校したか記録され、教師や保護者のスマホにデータが送られる。20秒の映像も記録される。

また、許可なく学校の外に出るとアラームが鳴るほか、学校に顔認証システムが設置され、制服を別の生徒と交換するとアラームが鳴るという。ある学校では、既に生徒800人が着用し、教師はアプリで生徒の登校状況を確認している。教師は「出席をとる必要もない。誰が休みで何人出席しているかすぐに分かる」と話す。制服は水洗いも可能で、生徒の体調管理をしたり居眠りするとアラームが鳴ったり、校内でのキャッシュレス支払い機能もあるという。

安全?プライバシー侵害?チップ内蔵制服(ウエイボより)

校長は、導入により出席率が大幅に上がったとする一方、「下校後に生徒の追跡はしない。生徒が行方不明になったり、サボったりした場合に使用する」と、学校内での管理に留めるとしている。また、ある教師は、「使い始めたばかりで、使い方を研究している」と説明する。

学校は刑務所か?!広がる波紋

常に居場所を把握出来るシステムに波紋が広がる。ネット上では「とても良い」「真面目な学生に影響はない。サボる学生に問題があるだけ」と支持する声がある一方、「登校することは刑務所に入ることなのか?」「常に監視するなんて、子供はおもちゃじゃない」「人権もプライバシーもない、奴隷制の復活だ」など、批判の声が相次ぐ。

中には、「ビッグブラザーがあなたを見ている」と、国民を過度に監視する未来の政府を描いたジョージ・オーウェルの小説「1984」を引き合いに出す声もある。

チップ内蔵制服で生徒の行動把握が可能に(ウエイボより)

専門家は中国メディアの取材に、「保護者に情報収集の目的を説明することが必要だ」と、プライバシー侵害への懸念を指摘する。一方で、ある教師は「子供は18歳になるまで監督が必要だ。スマート制服によって、子供を管理し良い習慣を養うことが出来る」とも話す。

スマート制服は、既に貴州省などの10以上の学校に導入されていて、今後、使われる機能が増えたり、導入する学校が増えてゆく可能性がある。

AIカメラで居眠りも監視~生徒は戸惑い

居眠りしたらすぐバレる~監視カメラが見守る中の授業(ウエイボより)

賛否両論ある学校での最先端技術の導入は、これまでもあった。

去年5月、浙江省杭州市の高校で、教室にAI搭載のカメラが設置された、と中国メディアが報じた。顔認証機能で生徒の様子を監視するシステムだという。スマートキャンパス、という名前のシステムは、起立、読書、挙手、書く、居眠りなどの様子を記録し、生徒が授業に集中しているかを確認する。生徒の様々な表情から感情も分析する。

学校側は「生徒の学習状況が分析出来、教師が受け入れられているかも分かる。生徒に勉強を促すためのものです」と説明している。ただ、専門家は「プライバシーの問題はもちろん、子供が演技をする性格になってしまう」と心理面の悪影響を指摘する。生徒からは「居眠り出来なくなるから良いかも」との声の一方、「勉強の助けにならない」「ずっと見られているのは気分が悪いよ」と反発の声もあった。ネット上でも「刑務所か?」「職員室と校長室にも設置しろ」などと批判が起きた。

様々な感情から生徒の状況を分析(ウエイボより)

監視が当たり前、の社会で育つ

教室の監視カメラについて、ネット上では、「これは映画ではない。まず教室に、そして、いずれ全ての家庭に…恐ろしい」という声があった。様々な機能を使い監視を強める可能性は否定できないだろう。ただ、中国はすでに監視カメラ大国で、教室の監視カメラは珍しい事ではない。幼稚園で子供に暴力をふるう教師の映像が報道されることはしょっちゅうあり、虐待の摘発や、一定の抑止効果になっている現状はある。またこれまでも、教室の様子をネット中継し、保護者をはじめ誰でも見ることが出来るシステムが人気になった。子供の状況を把握できて安全管理に役立つと考えるのか、人権侵害と考えるのか? 議論が起きている。

チップ付き制服にせよ教室の監視カメラにせよ、学校側には、「生徒たちがきちんと行動するようになる」という期待や狙いがあるが、専門家の指摘にあるように、“自分の行動を常に監視されている”と感じながら過ごすことが、生徒にとって良い事なのか。「悪いから悪いことはしない」ではなく、「カメラで見られているから、きちんとする」という思考にならないか? 何より、監視される環境で育つ生徒達が、監視されることに慣れ、疑問を持たなくなるのでは、と心配になる。そういえば中国にいる自分自身も、監視カメラに見られ、監視されたインターネットやSNSを使いながらの生活に、すっかり馴染んでいる。気分は良くないが、この流れが変わることは当面ないだろう。

(執筆:FNN上海支局 城戸隆宏)

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