「草食化」は関係ない…若者の未婚・晩婚が増えるワケ

カテゴリ:暮らし

  • 約7割は「社会的お膳立てシステム」に救われていた
  • 「ハラスメント」を未然に防ぐため職場結婚も減少傾向
  • 景気をよくすれば結婚する若者も増えるはず?

「50歳まで一度も結婚したことがない人」の割合を示す生涯未婚率は、男性が23.37%、女性は14.06%という結果になり、過去最高となっている。男性の約4人に1人、女性の約7人に1人だ。

その一方で、「いずれは結婚したい」と考える未婚者(18~34歳)の割合は、男性85.7%、女性89.3%で、こちらは決して低い数字ではない。(2015年国立社会保障・人口問題研究所調査)

ただ、以前編集部でも「若者の恋愛経験の減少」をとりあげたが、「草食化」と揶揄されることが多い若者たちによって、“生涯未婚時代”はますます進んでいってしまうのだろうか?

そこで今回は、『超ソロ社会』著者である荒川和久さんに話を聞いた。

親世代は“お見合い”に救われていた

荒川和久さん

若者の結婚事情の話を聞く前に、親世代の結婚事情はどうだったのか。荒川さんは、「約7割は、結婚の社会的お膳立てシステムに救われていた」と話す。

「『恋愛強者3割の法則』というのがありまして、彼氏や彼女がいる率というのは男女ともほぼ3割です。しかし一方で、残りの7割は、恋愛下手で受け身です。それを救っていたのが、『社会的お膳立てシステム』ともいうべきお見合いや職場結婚です。だからこそ80年代まで日本は皆婚社会だったわけです」(荒川さん、以下同)

こうした社会的お膳立てシステムがあった時代とは異なり、今は恋愛結婚が主流になっている。恋愛強者ではない7割の人を救うシステムが機能しなくなってきているということだろうか?

「生涯未婚率が急増したのは1990年頃からです。お見合い結婚が恋愛結婚に追い抜かれたのは1965年頃。その頃に25歳だった適齢期の男女が、生涯未婚の判断基準となる50歳になったのが1990年です。

つまり、お見合い結婚比率が恋愛結婚比率を下回った第1世代は、そのまま生涯未婚率上昇の第1世代となったと言えるのです。お見合いと職場結婚とを合算して1960年代から現在に至る婚姻数の推移をみると、構成比は1960年代の7割から半分の31.9%にまで激減しています。当然全体婚姻数も減っていますので絶対数の減り幅は膨大です。

もっとも婚姻数が多かった1972年と直近の2015年とを比較すると、お見合いと職場結婚を合算した婚姻数のマイナス分は約46万組となり、婚姻総数のマイナス分とほぼ同等です。つまり婚姻数の減少はこれら2つの減少分と完全一致します」

また冒頭でも触れた「草食化」といったことも、関係ないと続ける。

「この世代の人たちは、今の若者が結婚しないことについて『草食化』や『意気地がない』なんて言いますが、関係ありません。さっき申し上げた通り、いつの時代も恋愛できるのは3割です。むしろ世間が恋愛ブームだった80年代に20代だった若者が、2015年に生涯未婚率過去最高記録を打ち立てた張本人でもあります。恋愛を謳歌したからといって結婚できたわけではありません」

職場で同僚をデートに誘うとセクハラリスクが…

社会的お膳立てシステムの重要な柱である「職場結婚」の減少要因についても、荒川さんは次のように分析する。

「当時は、企業が社内結婚を推奨していました。しかし、これも1992年に職場でのセクハラ裁判の結審などもあり、職場での恋愛がしづらい環境になっていきました」

最近では、「髪を切ったんだね」と言っただけでもセクハラと認識されてしまうこともあると聞く。

「『デートに誘う』ということ自体が、セクハラだと捉えられてしまうかもしれない時代。むしろそのリスクを回避するため、たとえば飲み会は男性社員だけで行うなどの『ハラミ会』(ハラスメントを未然に防ぐ会)なるものまで登場しています」

女性とお近づきになるどころか、反対に距離を置かざるをえない。これでは、職場での恋愛や結婚が減少するのも納得だ。

景気がよくなれば未婚化も解決!?

ここまで、お見合いや職場結婚など、「社会的お膳立てシステム」について話を聞いてきたが、荒川さんは「結婚は経済」とも話す。

「親世代の人たちは、社会的お膳立てシステムのほか、終身雇用など経済の安定の面でも恵まれていました。特に、高度経済成長期の男性は定年までずっと右肩上がりで給料が上がっていくと信じていたはずです。だからこそ、35年ローンで家を建てることに何の不安もなかった。約束された未来の安定があったからこそ、若くしてみんな安心して結婚できたわけです。それが今は、未来の安定どころか、日々の生活に窮する人たちも多い」

年収が300万円未満の割合が圧倒的に多いとされる今、結婚や子ども云々の前に、食欲などの生理的欲求を満たすだけでも一苦労。さらに、婚活パーティーなどでは年収制限があるなど、特に結婚を望む独身男性にとってはイバラの道だ。景気がよくなることで給料も上がり、ひとつでも将来不安が消えるのは大きな一歩だろう。

最後に荒川さんはこう話す。「だからといって、社会が悪いとか自分が悪いとか考えると、かえって負のスパイラルに陥ります。社会や自分を変えようとするのではなく、大事なのは適応力。今、目の前にある仕事や趣味に没頭したり、人とつながり、自分の中の新しい自分を生み出していくこと。そうすれば自然と自分を認められるようになるし、自己肯定できるようにもなる。誰かを好きになるためには、まず自分を好きになりましょう。それが結果として、恋愛や結婚というプロセスにつながっていくと思います」


取材・文=明日陽樹/考務店
取材協力=荒川和久

荒川和久
主に20~50代の独身生活者の消費行動などを研究する「博報堂ソロもんLABO(ラボ)」リーダー。著書に「超ソロ社会『独身大国・日本』の衝撃」(PHP新書)、「結婚しない男たち 増え続ける未婚男性『ソロ男』のリアル」(ディスカヴァー携書)など。

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