差別の原因は過去のトラウマ!?韓国が日本の水産物を嫌がるワケ

韓国が福島、宮城など計8県の水産物を全面輸入禁止にする背景とは

カテゴリ:ワールド

  • 根拠なき水産物の輸入禁止措置 WTO「不当な差別」
  • 過去の政権は“食の安全”ろうそくデモで退陣寸前に…
  • 世界では規制解除の流れ 韓国政府は「冷静な判断」を

空前の「日本食ブーム」 その影で…

いま韓国・ソウルは空前の日本食ブームだ。ソウルの繁華街を歩けば、驚くほど至るところに日本語の看板が目につく。寿司、ラーメン、どんぶり…種類はさまざま。試しに店に入ってみるとメニューには日本語もある。味も良い。韓国メディアによるとソウル市内の日本食店の店舗数は約4700軒(17年統計)。5年前と比較すると4割も急増したという。

日本通の韓国人の知り合いに聞いてみても「昔はとても日本食とは言えない店も多かったが、ここ数年でかなり質が高くなった」と話す。日本人として誇らしいものだ。しかし東北出身の私にとっては悲しい現実もある。昔は韓国の日本食店で振舞われていた福島産や宮城産などの水産物を、今は味わうことはできないからだ。

根拠なき水産物輸入禁止 WTO「不当な差別」

東京電力福島第1原発事故を理由に韓国が計8県(青森、岩手、福島、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉)の全ての水産物の輸入を禁止したのは13年9月にさかのぼる。
日本政府は「科学的根拠がない」と反論。15年6月に世界貿易機関(WTO)の協定に基づき日韓で二国間協議を開催したが、韓国側に輸入禁止撤廃の動きはなく、同年8月にWTOへの提訴に踏み切った。

WTO紛争処理小委員会が約2年半の検討を重ねて、18年2月に公表した報告書では、韓国政府の輸入禁止に対して「恣意(しい)的で不当な差別」「必要以上に貿易制限的」と厳しい判断を下した。

当然といえるWTOの判断

日本の放射性物質の検査は国際原子力機関(IAEA)が「高い正確性と能力を有している」と評価するほど厳格なものだ。水産庁によると、原発事故以降、福島県産の水産物で食品中の放射性物質が国の定める基準値(1キロあたり100ベクレル)を超える割合は減少し続け、海産種では15年4月以降、基準値を超えたことはない。福島県以外も同様で14年9月以降、海産種で基準値を超えたことはないのだ。(18年10月時点)

これらの状況を受け、世界では規制解除の流れが進んでいる。農林水産省によると福島原発事故後、一時、54カ国・地域で輸入規制が行われたが、時とともに安全性が確認されたことを受けて解除が進み、現在は25の国と地域まで減少した(18年11月30日時点)。

しかし韓国側は「放射能に汚染された食品が私たちの食卓に上がることがないよう安全性確保に全力をつくす」としてWTO上級委員会に即座に上訴した。

「放射能に汚染された」という闇雲に風評被害を助長させる言葉まで使って、過剰に反応するのはなぜだろうか。

「食の安全」に敏感な世論 韓国政府が抱えるトラウマも?

ある外交関係者は次のように話す。
「韓国政府の人間も数値上、安全なことは分かっている。ただ過去のトラウマがあるんだ」

過去のトラウマとは08年の「韓国ろうそくデモ」だ。BSE(牛海綿状脳症)問題で輸入を停止していたアメリカ産牛肉について当時の李明博大統領が輸入の再開を決定したことに端を発したデモだった。食の安全に関わる科学的根拠に基づかない情報がみるみるうちに拡散し、韓国国民を恐怖と不安に駆り立てた。結果としてのべ100万人がろうそくを手に、約3カ月間抗議を続けた。

当初は輸入再開そのものに抗議するものであったが、時が経つにつれ政権批判に移り変わり、最終的には李明博政権の退陣を要求するまでに事態は拡大した。それを裏付けるように就任後、最も高い時で52%あった李明博大統領の支持率は21%まで落ち込んだ。(調査会社韓国ギャラップ調べ)

奇しくも文在寅大統領は自らを「ろうそく革命から生まれた大統領」と称する。ろうそく革命から生まれた大統領がろうそくデモによって退陣させられたら冗談でも笑えない。ここまで過剰に反応する現政権の脳裏には、食の安全を巡り苦境に立たされた当時の政権の姿が亡霊のように焼き付いているのだろうか。

東日本大震災から8年 沿岸部の復興は水産業が「柱」

この問題の一番の被害者は漁業関係者であることを忘れてはいけない。東日本大震災の被災地・宮城県では震災前、県内産の養殖ホヤの「約7割」を韓国に輸出していた。しかし輸入禁止が始まったことで大量のホヤが行き場を失ってしまった。結局、国内の消費だけでは供給過剰の状態が続き、17年は約7000トンものホヤが廃棄処分された。

東京電力によって生産者への補償はなされているが、将来的なことを考えれば大きな販路を失った影響は計り知れない。復興に向かい懸命に努力する被災地にとって甚大な打撃であることは言うまでもないだろう。

現在、生産者たちは世界各国にあるコリアタウンへの輸出などを通して新たな販路拡大に取り組んでいるという。韓国政府は苦境に立たされている漁業者たちにも目を向ける必要がある。

日韓歴史問題とは別個 冷静な判断を

いわゆる徴用工らを巡る韓国最高裁の判決や慰安婦財団の一方的な解散表明、韓国の国会議員による竹島上陸。さらには自衛隊哨戒機が韓国軍の艦艇からレーダー照射を受けた問題…。現在、日韓は極度に関係を悪化させる問題がドミノ倒しのように起きている。

しかしこの問題は解決の糸口を導き出すのが難しい歴史問題とは別だ。韓国政府には世論に動かされるのではなく、検証されたデータに基づいた冷静な判断が求められている。WTO上級委員会の判断は19年には公表される予定だ。その行方が注目される。

(執筆:FNNソウル支局 川村尚徳)