“電力量計”で在宅判断してルート作成! 「不在配送」92%削減の宅配システムがすごいかも

カテゴリ:ビジネス

  • AIがスマートメーターの情報から在不在を判断し、宅配ルートを自動作成
  • 「AIが行うのでプライバシーは他の人から守られる」
  • スマートメーターのない家庭もご安心

宅配便の「再配達」が問題視されて久しいが、在宅時になかなか受け取れないという人も、まだ多いのではないだろうか?
国土交通省の発表によると、今年10月に「再配達」された宅配便は全体の約15.2%だったという。
同省では、2020年度には再配達を13%程度にすることを目標に掲げているが、去年から減った数字はわずか0.3%にとどまっており、残り2.2%を減らすのはなかなか難しいような気がする。

出典:国土交通省

再配達にかかる手間は、今や大きな社会問題になっている。
国交省が2015年に発表した「宅配の再配達の発生による社会的損失の試算について」によると、再配達に費やされる労働力は年間で実に9万人に匹敵。
再配達によるCO2排出量は、山手線の内側2.5個分と同じ広さのスギ林の年間CO2吸収量に相当するという。
一説には、再配達の社会的損失コストは数千億円にも及ぶとされている。

そんな再配達をこの世から一掃するかもしれない画期的なシステムが12月24日に発表された。
その名も、不在配送ゼロ化AIプロジェクト

在宅が予測される家を検知し、配送ルート作成

これは東京大学の研究室と東大発のAIベンチャー企業「日本データサイエンス研究所」などが参加するプロジェクト。
スマートメーターという電力量計のデータをAIが学習することで、配達時に在宅が予測される家から優先的に配送するルートを自動生成し、スマホなどに表示するという。

これまでの電力量計は月に1回、人間が検針していたが、東京電力によるとスマートメーターは30分ごとの電気使用量を計測し、通信機能によって電流値などをリアルタイムに把握することができるそうだ。

このシステムがうまくいけば、配達したが不在だったという空振りをかなり解消することができるのだ。
そして、AIとスマートメーターを活用する仕組みを使って2018年9月6日~10月27日に東京大学構内で配送試験を実施したところ、なんと98%の配送成功率を達成!
人間がルートを考えていたときと比べて、不在配送は92%削減でき、さらに移動距離も5%短縮したという。

スマートメーター 出典:東京電力パワーグリッド

このプロジェクトは今後、自治体での実証実験に取り組み、2022年度中の実用化を目指すという。
ただ、家庭の電力データを使うというプライバシーの問題もあるが、東京大学の越塚登教授はこう述べている。

「配達の順番を決めるというプライバシーに関わる処理は、人ではなくAIが行うので、プライバシーは他の人から守られます。これを発展させて考えると、人に知られたくないこと、プライバシーに関わることは、むしろ積極的にAIやロボット、機械に担ってもらうという新しいサービスコンセプトが、今後はあらゆる局面で重要だと考えています。」

このシステムが利用され始めたら国交省の目標もあっという間に達成できるのではないか?
自身も東京大学出身で、日本データサイエンス研究所の共同創業者でもある大杉慎平さんに、システムの仕組みや実用化までの課題ついて聞いてみた。

配送中でもリアルタイムにルートの最適化が可能

――配送試験はどのように行われた?

実験用の荷物を30点ほど用意し、時間やデータを変えて配送実験を繰り返しました。
実際には、都心部なら通常100~200の荷物を一度に配送しますが、作業や時間の制約や配慮などから数に制限を設けています。
本実験に加えてコンピューター・シミュレーションでの検証も行なっており、そちらでは100以上の荷物配送で検証し、不在配送削減率は今回の配送試験と変わらない結果が得られています。


――ルートの自動作成はどういうもの?

配送先住所をシステムに入力すると、住所情報と電力データから、配送ルートを生成します。
システム上は、配送中でもリアルタイムにルートの最適化・更新が可能です。
ただ実際の配送オペレーションを踏まえ、どこまで最適化して、スマホなどに表示するかは調整できるものになっています。
例えば、もし不在であっても「配送すること」が企業として必要なのであれば、そのようなルールをシステム内に設けられます。
また現在では「受け取りの可否を確認するサービス」もありますので、不在可能性がとても高く配送のチャンスがないようなところには、システムが自動的に確認メッセージを送付する、といった対応も考えられます。

地図左下の枠内は各配送先の在不在確率を表示しているという

――地図画像の左下にある四角い枠はどういうもの?

これは各配送先の在不在確率をリアルタイムに表示したものですが、システム上のもので、配送する人には見えません。
ちなみに青が濃いほど受け取り可能性が高く、ルート選定において優先されます。

間違って不在配送したらすぐ学習

――AIがないと在不在予測ができない?

AIがないと在不在の予測精度が著しく下がるでしょう。
これはルート最適化のためには、過去と今のデータをもとに、将来の在不在を予測しなければならないためです。
それに、今後さらに学習・改善していくこともできなくなってしまいます。


――AIは、やはりはじめ成功率が低く、学習によって精度が上がっていた?

今回の試験では、電力データと在不在データから、十分に学習したアルゴリズムを用いました
したがって最初から低いということはありませんでした。
今後、実際にサービスを導入する場合でも、学習済みのアルゴリズムだけでかなりの効率化が見込めます。
ただ、例えば居留守をつかうなど試験データとは違う振る舞いをするユーザーや、建物のタイプが増えますので、実際に配送をしながらデータを集積して精度が向上していくことになるでしょう。


――エアコンや食洗器などで電気をたくさん使うと、人がいなくても在宅と判断されるのでは?

そのようなことはありますが、過ちを学習して改善していけることがAIの特徴となので、個別の家庭の振る舞いから予測を最適化します。
仮に「不在なのにエアコンが動作していた家」を間違って在宅と判断して配送してしまったら、留守時にエアコンだけが動いている時の電力動態の特徴などの配送失敗データを使って学習・改善をします。

スマートメーターのない家もご安心

――スマートメーターと古いメーターが混在してもデメリットはないの?

スマートメーターの有無だけでなく、何らかの理由で本サービスを利用しない家庭と、する家庭が混在する可能性はあると思います。
そのような場合、不在配送を最大9割ほど削減する本サービスの導入率が例えば30%なら、90%×30%=27%なので全体の27%程度の不在配送が削減できる、ということになります。


――スマートメーターのない家はどうなる?

スマートメーターは、2020年までに東電管内全家庭、2024年には日本国内の全家庭に導入されることが決まっております。
したがって各家庭での導入完了を踏まえたサービスが提供できるかと思います。


――宅配ボックスや自動運転車の活用など他の不在配送対策と比べて、このプロジェクトの特徴は?

上述の通り、2024年にスマートメーターの日本国内全家庭での導入が決まっていますので、基本的には将来全ての家庭で享受できる便益となります。
ただ1点、スマートメーターのデータ利用についてはまだ法制度が完成していないため、これは克服されるべき課題と思います。
また宅配ボックスがあるところは本システム内で考慮・併用することが可能で、配達に自動運転車を用いれば消費エネルギーや排出CO2等の削減という点でも価値が生じると思います。


2022年に予定される、このプロジェクトの実現はもうすぐそこまできている。
スマートメーターのデータ利用が課題ということだが、再配達の社会問題を一気に解決するかもしれないこのシステムへの期待は大きい。

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