知らないと損をするかも…!誰も教えてくれない「給与明細の見方」

カテゴリ:暮らし

  • 残業手当は給与明細から計算できる
  • 各種保険料は心地よい暮らしを維持するために必要不可欠 
  • 給与天引きで所得税を納めることで確定申告をせずに済んでいる

10月の内定式を終え、学生気分で迎える年末年始はこれが最後。

来年度からは新社会人として、新たなステージを迎えることになる。そんな新社会人予備軍のみなさん。給与明細の見方を知っていますか?

この給与明細が案外クセモノ。基本給の合計からさまざまな控除項目が引かれ、手取り額はびっくりするくらい低くなっていたりする。思わず、「なんでこんなに引かれてんの?」と会社に疑いの目を向けたくなる人もいるかもしれない。

でも、そこで騒ぐのはちょっと待って。まずは給与明細の見方を身に着けて、その正誤を判断しよう。じゃないと、とんだ赤っ恥をかく羽目になる。

今回、新社会人予備軍や、実はあまり理解していなかった若手社員のみなさんのために一肌脱いでくれたのは、税理士の永沼智子さん。給与明細の基礎知識を丁寧に教えてくれた。

“手当”の有無は会社によって異なる

税理士・永沼智子さん

給与明細を開いたとき、真っ先に誰もがチェックするのが「支給」という項目だろう。ここには“基本給”“◯◯手当”という項目が並ぶ。

「基本給というのは、会社と雇用契約を結んだ際に定められた最低保障金額のことです。“手当”というのは、“役付手当”というように役職に対して支払われるものや、好成績を収めた営業職の人に支払われる“インセンティブ”と呼ばれるものが該当します。ただし、この“手当”は必ずしも貰えるものではなく、会社によってさまざま。もちろん、一切つかないところもあります」(永沼先生、以下同)

“手当”がつくかどうかは会社によって異なるが、いずれの場合も雇用契約書に明記されているそう。まずはそれをチェックしておこう。

「ただし、“残業手当”に関しては別です。所定労働時間を超えて勤務をした場合は、会社側に支払う義務が生じます。残業をしているのにも関わらず“残業手当”がついていないケースは、“みなし残業”など特殊な契約形態を除き、違法と言えるでしょう」

この“残業手当”は算出可能。計算式は以下の通りだ。

(基本給+家族手当及び通勤手当を除く各種手当)÷所定労働時間×1.25×残業時間=残業手当

残業が多かった翌月の給与明細を受け取ったら、まずは“残業手当”の有無を確認し、数字に疑問が生じた場合は、上記の計算式で正しい金額が支給されているかをチェックしておこう。

“健康保険料”は医療制度を成立させるためのもの

さて、続いて気になるのは「控除」の項目。

ここにはさまざまな“保険料”や“◯◯税”といった品目が並び、それらが基本給や手当の合計額から引かれている。

これ、本当に必要なの?

「引かれてしまっている事実を目の当たりにするとショックかもしれませんが、どれも必要なものなんです。まずは“健康保険料”。これは俗にいう医療費のことですね。病院で診察をしてもらったとき、会社員の方は医療費を3割しか負担していないんです。残りの7割は国が負担している。その制度が成立しているのは、みなさんが“健康保険料”を毎月支払っているからなんです」

ふむふむ。そう考えると、“健康保険料”は引いてもらって構いません!という気持ちになる。

「続いて、“厚生年金保険”は、いわゆる年金のことです。私たちは老後、年金を貰います。その支給額は国民年金に厚生年金を上乗せした金額になります。そして、厚生年金の支給額は支払ってきた期間や金額によって変わってきます。

また“雇用保険料”というのは、失業保険や職業訓練給付金、育児休業給付金、介護休職時の手当などに使われるお金です。いずれも新社会人からすると関係ないと考えがちですが、将来的に必要になる可能性が高い保険料と言えます」

その他、40歳以上になると“介護保険料”も引かれるようになる。これは文字通り、介護サービスを運用するためのお金であり、高齢化が叫ばれる昨今においては必要不可欠な保険料だ。

「これらの“社会保険料”は、会社側が半額を負担してくれているんです。そう考えると、非常にありがたい制度であることが理解できるかと思います」

確定申告をしない代わりに“所得税”が引かれている

また、「控除」の項目には“所得税”と“住民税”という品目もある。

“所得税”は、所得の金額に応じて変動する税金です。195万円以下の場合は5%、330万円以下の場合は10%…と税率が変わっていきます。給与から“所得税”が引かれることを“源泉徴収制度”と言います。

これは会社員が確定申告をする手間を省くための制度。個人事業主であれば、年度末に必ず確定申告をする必要があります。それを会社員にもさせてしまうと、税務署がパンクしてしまう。そのため、会社員からは毎月“所得税”を徴収する制度が採用されるようになったんです」

“所得税”を収めることで、確定申告をしなくて済む。

フリーライターをしている筆者からすれば、なんて羨ましい話なのだろう…。

「そして“住民税”についてですが、これは2年目以降から引かれていく税金です。その金額は、総支給額から生命保険などの支払いを控除した金額に対し10%と一律になっています。

この“住民税”は、非常に大切な税金。都市の整備や、福祉、教育、警察や消防などの治安を維持するための機関に使われています。私たちが安心して暮らすための税金なんですよ」

なるほど。当然のことながら、意味もなく引かれているものはないということ。

ちなみに、今回の解説を踏まえた給与明細の考え方は以下の通り。

【支給】
・基本給
・◯◯手当(会社によって有無が異なる)
・残業手当(所定労働時間を超過した場合は原則としてつけられる)
・その他(通勤費や遅刻早退控除など、会社によって有無が異なる)

【控除】
・健康保険料(医療を受けるための保険料)
・厚生年金保険(将来、年金を貰うための保険料)
・雇用保険料(失業手当や職業訓練給付金をまかなうための保険料)
・介護保険料(介護サービスをまかなうための保険料)
・所得税(確定申告の代わりに納める税金)
・住民税(心地よい暮らしを送るために都市を運営するための税金)
・その他(財形貯蓄や旅行積立金など、会社によって有無が異なる)

【支給】-【控除】=手取り!

これらが給与明細に関する基礎知識。

頭に入れておけば、明細の項目を見て混乱する、なんて事態も避けられるはずだ。

取材・文=五十嵐大
取材協力=永沼智子