北の動きに警戒せよ!倍増する漂流船を徹底的に調査し、海の安全保障に危機感を持て

カテゴリ:ワールド

  • 我が国の海上保安体制に危機感を持て
  • 北朝鮮の核放棄は懐疑的、監視の目を緩めるな
  • 増え続ける北朝鮮漂流船の徹底的な調査が必要

日本の海洋安全保障に激震

2001年12月 海上保安庁巡視船が北朝鮮の工作船を追跡

2001年12月22日、日本の海洋安全保障に激震が走る事件が起きた。北朝鮮の工作船が我が国管轄海域に侵入し、海上保安庁巡視船との激しい銃撃戦の末、自爆沈没したのだ。

そして、銃撃戦となり、のちに自爆沈没 

現在の日本と北朝鮮の関係は、当時の状況と酷似している。工作船が重武装をしていたことから、我が国の海上保安体制は、大きな変革が必要となった。沿岸警備のため戦うことを現実のものとして準備するようになったのだ。

和平を装い、水面下で凶悪な行動にでる北朝鮮

2000年6月 韓国の金大中大統領と北朝鮮の金正日氏が会談

2000年6月、韓国の金大中大統領と北朝鮮の最高指導者である金正日氏が会談を行い、韓国は南北統一に向けた和平が動き出したと浮かれていた。この会談が評価され金大中大統領には、ノーベル平和賞が与えられている。しかし、北朝鮮は、和平を装いながら、水面化では攻撃的な動きを準備していたのだ。

翌2001年12月22日、不審船が奄美大島沖の我が国の排他的経済水域内に侵入しているところを米軍から防衛相経由で情報を得た海上保安庁により確認された。この不審船は、中国漁船になりすましていたが、北朝鮮の工作船であった。この工作船は、海上保安庁の巡視船による停船命令を無視し逃走。その後、巡視船と銃撃戦を行い自爆沈没したのである。

乗船していたのは、10人を超える北朝鮮の軍人であり、船内からは地対空砲、ロケットランチャーなど重武装兵器、上陸用の舟艇、潜水具などを備え、まるで上陸作戦を敢行するような様相であった。また、船内に残された携帯電話の通信記録から、日本の反社会的組織と結びつき覚せい剤の密輸をしていたことも判明している。この頃、北朝鮮の不審船が日本近海で頻繁に目撃されていたことから、北朝鮮からの覚せい剤の密輸が横行していたようだ。

北朝鮮は、和平の動きの陰で凶悪な行動をしていたのである。南北関係も蜜月は短く、二年後には、以前にもまして険悪な関係になっている。

北朝鮮の不穏な動きに警戒せよ

2018年、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の間で、第三回南北首脳会談が開かれた。韓国には、南北和平に向けた動きと歓迎する風潮があるが、北朝鮮の日本に対する不穏な動きは警戒すべき水準にある。また、米国も北朝鮮の核放棄には懐疑的であり、監視の目は緩めていない。

日本海における北朝鮮漁船密漁漁船団の動きが一段と激しくなっている。そのため、海上保安庁と水産庁は、協力し排他的経済水域内への侵入に警戒を強めている。今年、海保の巡視船と水産庁の漁業取締船が、警告を発した件数は、延べ約7000隻。この内2600隻ほどに対し放水し日本の海域から退去させている。

北の船がEEZ内に侵入したことを想定して行われた海上保安庁の訓練

今年の北朝鮮密漁船団は、日本海中央部の大和堆周辺から、北海道沖の武蔵堆あたりまで広範囲に侵入している。ロシアの管轄海域を通過して侵入する漁船も多い。また、海上保安庁の放水銃による排除策に対応するため、放水に耐えられる100トンクラスの鋼鉄船を前面に立てて侵入している。凶悪化し海上保安庁が投石を受けた件数は、20件を超えている。また、民間漁船の被害も出ている。日本海中央部にある大和堆に出漁した山形県のイカ漁船は、1000隻近い北朝鮮漁船団に遭遇し、投石されたことを報告している。石川県の漁船団は、2000隻近い北朝鮮漁船に漁場を占領され、大和堆でのイカ漁をあきらめたと言う。函館の漁師も北海道沖の漁場を占領され、思うような漁が出来ていない。

日本海に出漁している北朝鮮のイカ釣り漁船

北朝鮮ではイカ漁が好景気で、利益目的のため多くの漁民が日本海に出漁しているとする解説者もいるが、漁業や船舶運航について検証すると、もっと深い理由が北朝鮮漁船による日本海域の進出には隠されているようだ。

500kmから1000kmも離れた漁場に漁船が出漁するためには、大量の燃料油が必要となる。今年、日本の海域に出没した北朝鮮漁船が使用した燃料油は、3万トンから5万トンにのぼると想定される。北朝鮮は、国連安全保障理事会の決議による経済制裁から石油が枯渇しているため、政府の指示による出漁でなければ不可能である。また、北朝鮮船のほとんどが冷蔵施設を持っていないため、洋上で乾燥させ持ち帰っている。干してあるイカの数からすると一隻あたり1000匹も獲っていないようだ。採算度外視の出漁なのである。

日本に漂着することを目的とした計画的侵入

日本の沿岸に漂着した船

また、今年、日本の沿岸に漂流、漂着した北朝鮮漁船と思われる船は、200隻を超えている。昨年の2倍、一昨年の3倍以上になる。漂着した漁船だけでも140隻ほどにのぼる。しかし、荒波を受け遭難したとすると、1000人以上が遭難したこととなるが、漂着船に生存者は無く、また、遺体が発見されるケースが極めて少ない。船に乗っていたはずの人間が消えているのだ。また、漂着した船の多くは、出漁前からエンジンが取り外されていたものが多い。青森県に漂着した漁船は、エンジンルームが居住空間に改装されていた。そもそも海上保安庁、水産庁の厳しい警戒態勢を200隻もの漁船が潜り抜けて来たのは、日本に漂着すること自体を目的とした計画的な侵入であると考えられる。漂着船により北朝鮮からの侵入者がいる可能性が高い。また、覚せい剤の密輸も疑われる。

140隻を超える漂着船の処理は、日本の税金で賄われる。すべて処理するには、5千万円以上が必要だろう。船が漂着した地方自治体は、対処する予算も無く放置している船も多い。日本海沿岸に暮らす人々の不安や経済的な負担が募り始めている。拉致被害や覚せい剤の蔓延などの被害が起きてからでは遅いのだ。

日本は同じ過ちを繰り返すな

まず、北朝鮮漂流船の徹底的な検証を行わなければならない。さらに早期発見体制を構築する必要がある。

南北融和による朝鮮半島の平和は望むところであるが、過去の経験から、北朝鮮が和平に向けた素振りをしているからこそ、警戒を怠ってはいけないのだ。さらに、日本海における中国漁船団の動き、ロシアの北朝鮮対応の軟化も見過ごしてはならない。

日本海における北朝鮮漁船の動きを単なる漁業として問題から目を逸らそうとする動きがあるが、拉致被害が頻発した時も北朝鮮の不審船が出没していた時期も、問題を矮小化しようとする力が働いていた。その結果、多くの人の人生が奪われ、日本に覚せい剤が蔓延してしまった。同じ過ちを繰り返してはならないのだ。

この冬の日本海における安全保障の状況からは、目を離してはいけないのだ。

(執筆:海洋経済学者 山田吉彦)

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