幸せは遺伝する。「世界最高の子育て」をするために知るべきこと 

「世界最高の子育て」著者・ボーク重子さんにインタビュー

  • 日本人の母を持つ高校生が「全米最優秀女子高生」で優勝
  • 幸せな子どもに育てたかったら、まずは親が自分を幸せにすること
  • 子育てで1番大切なのは「子どもをあるがまま認めること」

複数のアメリカのメディアで、日本人の母を持つ女子高生が話題になったのをご存じだろうか?

女子高生の名前はボーク・スカイさん。彼女は全米の女子高校生が知性や才能、リーダーシップを競う大学奨学金コンクール「全米最優秀女子高生」で優勝したことから一躍注目の的となった。

このコンクールでアジア系の学生が優勝したのは、過去60年の歴史でたった3回だけだ。

一体、なぜスカイさんは優勝できたのか?スカイさんの母親で、『世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)の著者・ボーク重子さんに、“子育ての秘訣”を聞いた。

ボーク重子さん

不思議なことに、インタビューを始める前から、ボークさんの明るくてポジティブな人柄を感じた。

子どもが自由に考えられる環境を作る

福島県出身のボークさん。結婚を機にアメリカに移住し、娘・スカイさんを出産した。

日本の教育を受けて育ったボークさんは、当初、アメリカの教育とのギャップに驚いたそうだ。

「日本では、学校=勉強。九九を呪文のように唱えたり、宿題も出ます。『今からこれをやりなさい』と、言われたことをやる。言われたようにやる=いい子。そういうものだと思って娘の幼稚園に行ったら、全然違ったんです」

確かに日本の学校では、先生が言った通りのことをやることが多い。それに慣れた大人は、先輩や上司が決めたことに意見もせず、従うことが当たり前になっていくわけだ。

一方、アメリカで最も重要視されているのは学力ではなく、子どもたちが世界で生きていく上で必要とされる力(知力・コミュニケーション力・特技・体力・自己表現力)なのだという。

アメリカでは子どもに対してどのように接しているのだろうか?

「アメリカでは子どもに『やりなさい』『こうしなさい』と言うのではなく、『私はこうしたけど、あなたはどうしたい?』と聞くのが普通です。先生や大人が絶対ではなく、子どもが自由に考えられる環境が作られています」

日本では意見をすると「反抗」「口ごたえ」と言われるが、アメリカでは意見することが評価に繋がるという。

これをきっかけに、ボークさんは家庭でも「一方通行の教育はやめよう」と決意したそうだ。具体的にどんなことを実践したのだろうか?

「うちではあんまりアドバイスっていうことをしませんでした。親がアドバイスをすると、子どもの『自由に考える力』が育たないと思うんです。あとは、『ダメ』と言うのはやめて、『どうしたい?』と聞くようにしました。

でも、どうしてもダメな時もあります。そんな時は、ダメな理由をしっかり説明します。子どもを子ども扱いせず、きちんとした1人の個性ある人間として扱います。きちんと説明すれば子どもだってわかるんです。でも、言わなければわからないのは大人でも同じだと思います」

ボークさん自身は日本の教育に慣れていたため、最初の2、3年は意識的に気をつけていたそうだ。

20分間の空想で心をポジティブにする

アメリカでは、学校の宿題がないことに違和感を覚え、先生に尋ねたこともあった。

すると、先生からは「子どもは子どもらしく遊んで、自分の好きなことを見つけていく。それが子どもの仕事です。でも、そんなに宿題が欲しいのであれば、20分間空想をさせてあげてください」と返ってきたという。

20分間の空想?日本人の私たちは疑問に思うかもしれない。ボークさん自身も、理由がわからないままスカイさんに20分間の空想の時間を与えた。

「実は、ボーっと考えるのって、いいことしか考えないんですよ。自分は地獄に落ちるなんて空想してる子どもはいないんです。空想してるうちに笑顔になる。心がポジティブになるって、すごく素敵ですよね。空想している時は、空も飛べるし、限界がない。想像力が豊かになる。そういう力が自然に伸ばせるんです」

さらに、20分という時間にも理由があるようだ。

「子どもは空想しているうちに飽きちゃうんですけど、この飽きるっていうのも大事。娘の場合は、飽きたら部屋にいろんなものを持ち込んで、バレエをやり始めました。こうやって、自分の好きなことをみつける時間にもなるわけです」

子どもにやらせる前に、親がやる

「日本の学校が『勉強』だとしたら、アメリカの学校は『パッション』なんです」

パッション=好きなこと。著書の中でもその重要性を強調しているが、なぜ、それほどパッションが大事なのか?

「子どもっていうのは、好きなことのためには頑張ります。好きだからこそやり遂げられ、道徳心や強い心が身につきます。これがなかったら、ただの点数が取れるロボットしか育ちません」

しかし、最初から自分で“好きなこと”を見つけられる子どもはいない。見つけられるようにサポートするのが親の役目だという。

「“好きなこと”も年齢とともに移り変わります。娘のパッションはずっとバレエでした。ですが、大人になるにつれ、バレエというパッションがなくなったらどうしようと不安になっている姿も見ました」

我が子が落ち込んでいる時も、ボークさんは信じて見守っていたという。

「ずっと好きなことをやってきた子っていうのは、必ず何かしらのパッションを見つける手立てを知っているんです。だから、きっとこの子は自分の生きる道が変わったとしても、それに準じる道を見つけて、自分らしく生きていけるんだろうなって思ったんです。パッションは、全ての入り口になっているんです」

パッションの大切さは理解できたが、好きなことだけをやれば良いわけではない。家庭での決まりごとやルールなど、子どもにやって欲しいことがある時はどのようにすれば良いのだろうか?

ボークさんの家庭で行っていたのは、「今日の成功ノート」と「夕食時の対話」。もちろんこれも強制するのではなく、子どもが自ら実行できるようにしていた。

「いいなと思ったら、まず私がやるんです。『今日はママこんないいことがあったの~』って言いながら書いて、さりげなく娘のノートも置いておくんです(笑)夕食の時間は、『今日はこんなにいいことがあったんだ』と、私が喋る。それから、『スカイちゃんは今日どんなことがあったの?誰にありがとうって思ったの?』って聞いていました。

親がやってることって、子どもは真似するんです。逆を言えば、親がやらなきゃ子どもはやらないんです。子どもにやらせたかったら、まずは親が徹底してやりましょう。やりなさいと言うだけでは、子どもはやらないと思います」

親の幸せは子に“遺伝”する

「不幸せな親に育てられている子どもは不幸せに育つと言う研究データがあるんです」と、ボークさんは続けた。

その研究結果は、「幸せな子どもに育てたかったら、まずは親が自分を幸せにするように」と締めくくられているそうだ。

ボークさんは自分を幸せにするためにどんなことをしていたのだろうか?

「毎朝6時半~7時半まで自分の時間を作っていました。その時間は空想をして、大好きなケーキを食べています(笑)」

ボークさんの家庭は共働きをしているため、子どもが起きる前に自分の時間を作って自由に過ごしてるそうだ。

旦那さんとの子育ての連携についても聞いてみた。

「共働きなので、2人で協力しています。娘は学校が終わったあと、バレエをしに行きます。そのお迎えに行かなかった方が夕飯を作ります。だから、夕飯を作りたくない時は『今日は私が迎えに行く』と連絡をしていました(笑)」

なるほど。分担と言っても、やりたくない時もあるだろう。そういう時は役割分担をチェンジすれば良いのだ。

とは言え、共働きの家庭が増えていく現代、なかなか自分の時間を持てない親もいるだろう。ボークさんも、最初から自分の時間があったわけではない。

どうやって自分の時間を増やせばいいかを尋ねると、「自分からやる子」に育ってもらえばいいという答えが返ってきた。その方法は、どの家庭でも実践できることだった。

「料理」は子どもの実行機能を育てるのに最適

「自分からやる子に育てたかったら、料理を一緒にやってみてください。ご飯は毎日食べるもの。毎日やっていればどんな子どもだってできるようになるんです」

ハーバードでは、子どもの実行機能(自分からやる子)を育てるのは社会の責任と言われるほど、重要視されているそうだ。その実行機能の全てが入っているのが「料理」だと言う。

①献立を考える②冷蔵庫の中を確認して、足りないものを考える③買い物に行く時間と作る時間を決める④買い物に行く⑤料理をする⑥片付ける

時間や予算も限られている中で、計画を立てて実行する。もちろん、やり方がわからなければできないが、ここで注意すべきは、教えるのではなく、手本を見せながら言葉で伝えること。

また、料理の最中に次のように呟いてみる。

「ママは疲れてるから、本当はやりたくないの。でもママがやらないとみんなご飯食べられないでしょ?」

すると、子どもは、ママがやらないと食べられないんだ、やらなきゃいけないんだと気付き、責任感や自制心も育まれる。このように、日々の何気ない会話でも子どもの考える力は育っていくそうだ。

過保護な親はもったいない!

ここまで読んで、アメリカだからできるんじゃないの?と思う人もいるかもしれない。しかし、私たちが暮らす日本に、アメリカにはない素晴らしさがあった。

ボークさんは日本の素晴らしさを伝えるため、スカイさんが中学2年生の時に1年間日本で暮らしていた。その時、「日本の暮らしは、どう?」と尋ねると、面白い返事が返ってきたという。

「日本ってすごい自由!」

この言葉にボークさんは驚いたそう。自由の国アメリカで暮らしていたのに、日本が自由?

アメリカは車がなければどこへ行くのも不便で、危険なことも多いため13歳までは保護者がいないと行動できない決まりもある。精神的な自由はあっても、肉体的自由は日本に劣るという。

「アメリカに比べて日本は安全なので、子どもが何かしたいと思ったら自分で行動できる自由があるんですね。だから、主体性を伸ばすにはアメリカよりも日本の方が理想的な環境なんだなって思いました。

日本に住んでいると考えもしなかったけど、実は日本はそう言う意味でとても恵まれていると思います。日本には、アメリカにない素晴らしさがあるので、もし、親御さんが過保護になっていたら勿体無いです!」

日本だけで生活をしていると、日本の良いところを見失いがちだ。

こんな人に育てられたい。ボークさんと話していると、大人の私でもそう思ってしまうほど、素敵な母親だった。

最後に、1つ質問をしてみた。

ーー子育てで一番大切なことは何だと思いますか?

子どもをあるがまま認めることですね。その子の存在自体を認めてあげる。それを一番大事にしてきました。

他人と比較するのではなく、その子の基準を見つけて見守る。子どもにとって、1番の安心できる場所が“家族”になりますように。

【プロフィール】 
ボーク重子(ぼーくしげこ)/起業家。ロンドンの大学院で現代美術史の修士号を取得後、南仏で出会った夫との結婚を機に1998年ワシントンDCに移住。2004年ワシントンDC初のアジア現代アート専門ギャラリーをオープン。2年後には米副大統領夫人、美術館や有名コレクターなどVIPが顧客のトップギャラリーに。2006年アートを通じての社会貢献を評価され、ワシントニアン誌によってオバマ大統領(当時上院議員)やワシントンポスト紙副社長らとともに「ワシントンの美しい25人」に選ばれる。現在は、アートコンサルティング業とともに、ライフコーチとして全米、日本各地で子育てやキャリア構築、ワークライフバランスについて講演、ワークショップを展開中。