日本初!“赤ちゃん先生”が“女子少年院”を訪ねたら…【広島発】

妊娠・中絶を経験した少女たちが学ぶ“命”の重み

カテゴリ:国内

  • 赤ちゃんと触れ合い、子育ての大変さや命の尊さを学ぶ「赤ちゃん先生」プロジェクト 
  • 普段は、教育機関などで子供たちに行う授業、日本で初めて女子少年院で行われた
  • 妊娠・中絶の経験を持つ少女たちの目に「赤ちゃん先生」はどう映ったか?

“命”の重みを体感する

育児体験などを通して赤ちゃんと触れ合うことで「命の大切さ」を実感してもらおうと活動しているお母さんたちがいる。神戸市に本拠地を置くNPO法人「ママハタ」が全国各地で行う「赤ちゃん先生」プロジェクトだ。

広島県竹原市の中学校にやってきたのは1歳から2歳の赤ちゃん先生4人とそのお母さんたち。

母親「これがお出かけグッズ一式…」
ベビーカーを押したり、抱っこ紐で赤ちゃんを抱っこしてみたり、着替えさせてみたり、絵本を読み聞かせてみたり…と育児には欠かせないことを中学生たちが実際に体験する。赤ちゃんと触れ合い、お母さんの話を聞くなど4回の授業を通して「育児の大変さ」や「命の重み」を感じてもらおうと7年前から広島県内でも活動が始まった。

赤ちゃん先生の活動に関して、主催するママの働き方応援隊 広島東校の高田代表はこう語る

ママの働き方応援隊広島東校・高田裕美代表:
大人が一生懸命になって相手を変えるとか、よい反応を引き出すのは難しいと思うが、赤ちゃん先生だと一瞬でできてしまう。赤ちゃんが何かを考えてやっているわけでは決して無いんですけど…」

妊娠・中絶の経験を持つ女子少年院の少女たち

そんな「赤ちゃん先生」が女子少年院に招かれた。全国でも初めての取り組みだ。
東広島市の貴船原少女苑。現在、16歳から20歳までの少女13人が矯正教育を受けている。傷害や覚せい剤の使用、売春の斡旋など犯した罪は様々。そして、妊娠や中絶を経験した少女が少なくない。
そんな、少女たちが3回にわたって「赤ちゃん先生」から命の尊さを学ぶ。

貴船原少女苑・法務教官:
直接、赤ちゃんと触れ合って抱っこしてもらって、命の重さを感じてもらって、自分の命の大切さとか、他の人の命の大切さとかを感じてもらえるきっかけになれば…

この日のテーマは「育児体験」。

普段はなかなか触れることのない赤ちゃん。その感触に、少女たちの表情も自然と緩む。お母さんが席を外し、少しの間、お世話をすることになった。しかし、赤ちゃん先生、お母さんがいなくなるとぐずり始めた

少女は「大丈夫、大丈夫」「ママやで」

お母さんの存在の大きさを知らされる。
赤ちゃんの服を着替えさせるのも一苦労…なかなか思うようにはいかない。

その後も、母親と少女たちでこのようなやり取りが交わされた。

母親:
ぐずって着ないときもあるけど時間が来たら着させないといけないから…

少女:
(赤ちゃんを抱っこしながら)「お母さんに愛されて…」聞こえてないかな

母親:
よく、聞いてないように見えて、話を聞いてるんじゃないかなと思うときがある

少女:
そうなんですか…

赤ちゃんたちと触れ合った後、少女たちは、どのように感じたのだろうか?

少女:
すごく可愛かったけど、泣いたりしたときにどうしたらいいか、分からなくなったりとかもして、結構、大変だなと思いました。自分もわがままだったんだろうなと思ったし、今もわがままだけど、育ててくれたことにもうちょっと感謝しようと思いました。

授業のあとには毎回、少女たちは感想文を書くことになっている。

少女たちが書いた感想文:
私も赤ちゃんの頃はささいなことで泣き喚いていただろうし、それをお母さんが手遊び、絵本、抱っこと色々な方法であやしてくれていたのだろうと思います。私にも赤ちゃんの時期があり、今も大切に思ってくれていることを忘れないでいたいです。自分も可愛がられていたんだろうなと思うと親に会いたくなりました


一方で、子育てに自信がなくなったという少女もいる

少女たちが書いた感想文:
自分が産んだときに本当にちゃんと可愛がってあげられるか心配だし、絶対に子どもを不幸にしたくないから産まないほうがいいって思ってしまいます。

同じ授業を受けても、感じ方は、それぞれ異なっていた。それが「赤ちゃん先生」の魅力だという。

ママの働き方応援隊広島東校・高田裕美代表:
あらゆる感情を赤ちゃんを通じてあの場で体感、体験してもらう…
その先どうするか、というのは本人次第。それが赤ちゃん先生の面白いところではないかなと思います

最終回となる3回目の授業のテーマは「お母さんたちの選択」。
一見、子どもを授かり幸せそうに見える母親たちにも、ここに至るまで様々な悩みや苦しみを乗り超えてきたことを少女たちと語り合う。

不妊に悩んだ経験を持つ母親:
結婚してお母さんになれるものだと思っていましたが、簡単にはなれませんでした。
不妊に悩んだ末、やっと赤ちゃんを授かりました。

望まぬ妊娠で、流産経験のある母親:
流産したときはとっても不安で、正直、ちょっとホッとした時もあった。でも悲しくてすごい罪悪感で私が否定的に捉えていたから、お腹に来た赤ちゃんは流れていってしまったのかなって思いました

摂食障害の経験を持つ母親:
摂食障害になったのは中3の時なんだけど、振り返れば親同士がいつも喧嘩して怒鳴りあって、という環境の中で自分の安心できる場所がなかったり…

結婚し、出産し、少女たちの目には、幸せそうに映っていたお母さんたちも過去には色んな経験をし、その時々に様々な選択をして、今があります。そんな、母親たちとの交流を経て、女子少年院の少女たちは…

少女:
見た目からは全然大変そうに思わなかって普通に幸せ、順調そうに見えてたけど、色んな経験があって、自分も生きていくことに対して頑張ろうと背中押されました。

3回の授業を通して変わったもの

3回の「赤ちゃん先生」の授業を通して少女たちは何を学んだのか?
最後の授業を終えた後の感想文には、彼女たちの心の変化が表れていた。

少女が書いた感想文:
私は中学生の時に中絶してしまってずっと後悔と罪悪感を持っています。
周りの反対を押し切ってでも産めばよかったと思いました。
実際育てていくのは簡単ではないけれど、命を大切にすることは自分にとっても赤ちゃんにとってもよいことだと思います

少女が書いた感想文:
私にも辛い過去があります。
しかし、いつまでも『こんな過去があるけん、私は幸せになれん』と思わず、『こんな過去があったけん、今があるんか』と、思えるようになりたいです。
どのお母さんも強くてかっこいいなと思いました。

授業の最後に、主催者の母親講師は、少女たちに、このようなメッセージを送った。

ママの働き方応援隊・吉村さん:
皆さんはすごい力で生まれてきたこと、そして、周りのたくさんの誰かに見守られ、支えられ、お世話をしてもらって大きくなったことを思い出してください。みんな、大事な奇跡の命です

たった3回の授業だが「赤ちゃん先生」から学ぶことは決して少なくない。

ママの働き方応援隊広島東校・高田裕美代表:
赤ちゃんを介して少女たちも自己開示をする、それを通じて、ママたちも自己開示をする、というこの空間を生み出すのは赤ちゃんならではないかなと思っていますし、これこそ「赤ちゃん先生ではないかな」と私自身も改めて気づかせてもらった開催でした


小さな赤ちゃん。けれど、赤ちゃんのもつ力は計り知れないものがある。

(テレビ新広島)

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