「アルコールが抜ける時間」4割が知らなかった!医師が教えるやってはいけない二日酔い対策

カテゴリ:テクノロジー

  • 飲酒から運転までしっかり時間を空けていないという実態も
  • アルコールが抜けるまでの時間の目安の算出法
  • 飲みすぎてしまうランキングのトップは「忘年会・新年会」

年の瀬が迫るとお酒を飲む機会が増えるものだが、思い返してみると今年は秋ごろからアルコールにまつわるトラブルが続発している。

9月には元「モーニング娘。」の吉澤ひとみさん(33)が飲酒運転で赤信号の交差点に進入し、男女2人に軽傷を負わせて逃走する事件を起こした。
10月には、日本航空パイロットが、乗務直前に規定値の9倍以上のアルコールを検出されてイギリス警察に逮捕され、これ以降、他の航空会社のパイロットによる飲酒トラブルが相次いだ。

皆さんも飲酒した翌朝に車を運転するケースがあると思うが、こんな興味深いデータが発表された。
健康総合企業のタニタの調査で、実は「アルコールが抜けるまでにかかる時間」を4割以上の人が知らないという結果が明らかになった。

タニタ調べ

お酒を飲む習慣がある全国の20~69歳の社用車ドライバーとマイカー通勤者の計800人と、社員が社用車を運転することがある企業の役員・経営者200人を対象に調査。今年11月9日~14日にインターネットでリサーチを行い、12月6日に「飲酒運転に関する意識調査2018」として公表された。

発表された資料には、アルコールが抜けるまでの時間について、こう書かれている。
「体格や体質、体調などによって異なりますが、体重が65kgの人の場合、お酒を2合飲むとアルコールが抜けるまで6~7時間程度、3合飲むと9~10時間程度かかるといわれています。」

しかし、4割以上の人が知らないと答えている通り、飲酒から運転までしっかり時間を空けているかというと、調査の結果、6~7時間が必要とされる「2合」飲む人の多くは十分な時間を空けているが、9~10時間が必要な「3合以上」飲む人の17.6%は「8時間くらい」と答えているなど飲酒と運転の間隔が少々短いようだ。

タニタ調べ

翌日車を運転するのに、どういう時に飲みすぎてしまうのか聞いたところ、社用車ドライバーは「会社の忘年会・新年」が最も多く、「友人・知人との飲み会」と「会社の歓送迎会」が続いた。
逆にマイカー通勤者では、「友人・知人との飲み会」が最も多く「会社の忘年会・新年会」は第2位。
また第3位は「会社の歓送迎会」に加えて「イライラすることがあったときの晩酌」がランクインした。

タニタ調べ

これからの忘年会・新年会シーズンを前に、アルコールが抜ける時間はどうやって計算すればいいのだろうか?そして、二日酔いを解消するにはどうしたらいいのか?
アルコール依存症の専門医療機関のある、千葉県の医療法人梨香会 秋元病院、副院長の小松由布子医師に伺った。

男性は、女性よりもアルコールの分解が早い

――アルコールが抜けるまでの時間は、どのように算出するの?

アルコールを摂取したあと、時間を追って血中濃度を調べることで、アルコールの分解速度が分かります。
1時間のアルコール分解速度は、成人男性では6g〜13g(実測)、成人女性では3.5g〜10.5g(実測)程度です。
性別の他にも、年齢、体格、分解酵素の能力差、体調、状況によってもアルコールの代謝は変動しますので、個人の分解速度を正確に割り出すのは難しく、あくまでも目安となります。


――資料では体重65kgの人のアルコールが抜けるまでの時間が書かれているが、他の体重の人はどうなるのか?

アルコールは90%が肝臓で代謝され、肝臓の大きさは除脂肪体重(体から脂肪を除いた体重)に比例します。
体重が重い人ほど肝臓が大きい傾向にあり、分解速度が早くなるといえます。

あくまでも目安ですが、『体重(kg)×0.1=1時間に分解できるアルコール(g)』とされています。
これをもとに計算すると、65kgの人であれば、『65×0.1=6.5』なので、1時間に分解できるアルコールは6.5gとなります。
日本酒2合とはアルコール40gのことですから、お酒2合を代謝するには『40÷6.5=6.15時間』となります。


――日本酒1合を他のお酒に換算すると?

度数14%の日本酒1合を、アルコールの量に換算すると20g程度です。
アルコール20gを各種アルコール飲料に換算すると、ビール500ml(度数5%)、ウイスキー60ml(度数43%)、焼酎0.6合=110ml(度数25%)、缶チューハイ350ml(度数7%)、ワイン180ml(度数14%)です。

アルコール度数によって量が変わりますので、自分で計算できるようにするとよいでしょう。
『アルコール含有量(g)=お酒の量(㎖)×お酒の度数(%)×0.8(アルコール比重)』です。
例えば、ビール350ml、度数5%のものであれば、『350ml×0.05×0.8=14』なので、アルコール含有量は14gとなります。


――アルコールを分解する能力は、そんなに人によって違うのか?

アルコールの分解能力については以下のことが分かっています。
・男性は、女性より分解が早い(補足:女性は体格の違い以外にも、女性ホルモンによる影響があり、男性に比べてアルコールの分解速度が遅い)
・中年は、未成年者・高齢者よりも分解が早い
・体が大きい人は、体が小さい人より分解が早い
・食後の方が、空腹時より分解が早い
・顔が赤くならない人は、顔が赤くなる人より分解が早い
・起きている時の方が、睡眠時より分解が早い

アルコールが抜けたか自分でチェックする方法は?

――アルコールに強い人は、本当に早くお酒が抜けるのか?

これについてはアルコールの代謝について理解が必要です。
口から入ったアルコールは胃から20%、小腸から80%が吸収され、その90%が肝臓で処理されます。
アルコールは肝臓内でのADH1B(アルコール脱水素酵素)により分解され、有害なアセトアルデヒドになります。
アセトアルデヒドは、肝臓内のALDH2(アルデヒド脱水素酵素)により、無害な酢酸へと分解されます。
酢酸は血液により全身へめぐり、水と二酸化炭素に分解され、汗や尿、呼気中に排出されます。

アセトアルデヒドは極めて毒性が強く、顔面や体の紅潮、頭痛、吐き気、頻脈などの不快な症状を引き起こし、発癌性も高い物質です。
アセトアルデヒドを分解するALDH2という酵素は、日本人の約36%は生まれつきその活性が低く、また7%の人は不活性(下戸)であり働きが全くありません。

このタイプの人達は少量のお酒を飲んでもアセトアルデヒドが貯まり不快な反応が起きやすく、「お酒に弱い」タイプとなります。
残る58%の人はALDH2活性型なので、アセトアルデヒドの代謝が早く不快な反応が少ないため、「お酒に強い」タイプとなります。

ちなみにこの「お酒に弱い」という性質は日本人や中国人などモンゴロイドに特有のものです。
また同様にアルコールをアセトアルデヒドに分解するADH1Bも遺伝的性質があり、大きく分けて「代謝の早い」タイプと「代謝の遅い」タイプがあります。
つまり、アルコールが無害な酢酸へ分解されるまでの代謝の早さは、ADH1B とALDH2との組み合わせで決まっています。

ここで『アルコールに強い人が早く抜けるのか』についてお答えします。
先ほどお話ししたようにALDH2活性型を持つ「お酒に強い」タイプが日本人の58%を占め、このうち「代謝の早いADH1B」の組み合わせを持つ人は54%、残る4%は「代謝の遅いADH1B」との組み合わせです。
前者はアルコール・アセトアルデヒドともに代謝が早く、抜けやすいタイプといえます。
しかし、後者はアルコールの代謝が遅いためなかなか抜けません。
因みにこのタイプはアルコールの酔いを長い時間感じることができ、更に不快なアセトアルデヒドの影響を感じにくいため、アルコール依存症に非常になりやすいです。


――アルコールが抜けたか自分でチェックする方法は?

家庭用のアルコール検知器を利用すると客観的な指標となるので良いと思います。


医師が教える二日酔い対策

――二日酔いを解消する方法は?

夜間に飲酒したあくる朝、喉の渇き、めまい、頭痛、吐き気など不快な症状が出現します。これが二日酔いです。
アルコールには利尿作用があるので体内は脱水傾向となり、喉の渇き、めまいや頭痛を引き起こします。
また、自身のアセトアルデヒドの代謝能力(ALDH2)を超えた量の飲酒をすることで、翌朝アセトアルデヒドが体に残り、頭痛や吐き気を引き起こします。
更にアルコール性胃炎も併発していることが多く、胃炎による悪心が二日酔いの症状を悪化させます。

二日酔いとなってしまった場合、まず一番に大切なことは水分補給です。アルコールの利尿作用によって体内は水分不足となっています。
また、アルコールの分解には大量の糖分を必要とします。塩分や糖分が含まれ吸収が優れたスポーツドリンクも取り入れると良いでしょう。
しかしスポーツドリンクは飲みすぎると糖分が過剰になる可能性があるので注意してください。胃炎を併発しているときは冷たいものは刺激になるので常温のものが良いでしょう。

またアセトアルデヒドの分解を促進するためには肝機能を向上させることが大切です。
肝臓の負担を和らげる「タウリン」、アルコール分解に必要な「タンパク質」、アルコールを飲むと消費されてしまう「ビタミンB1」を積極的にとるようにしましょう。
これらの栄養素がとれていると翌朝のだるさも軽減してくれます。
昔から二日酔いにはシジミの味噌汁が良いといわれますが、シジミはビタミンB群が豊富で、良質なたんぱく質を含んでおり理にかなっています。
また、味噌の原料である大豆はタンパク質・ビタミンB1を多く含んでいます。
二日酔いの予防という点でも、枝豆、豆腐料理はおつまみに最適です。
他にも、魚介類や豚肉にはたんぱくやビタミンが豊富に含まれており、貝類、イカ、タコにはタウリンが沢山含まれますので、おつまみに積極的に摂っていただきたいです。

昨今二日酔いによいといわれる健康食品やサプリメントがありますが、科学的根拠があるかどうかは必ずしも十分ではなく、歴史的な食品として摂取する程度の量よりもはるかに濃度の高いものを、多量に長期連用する場合は健康被害の可能性もあります。
健康食品やサプリメントを使用する場合は用法用量を守り、特に通院中の方は摂取について主治医に相談するといいでしょう。


――逆に、やらないほうがいい二日酔い対策は?

「お風呂やサウナに入ると酔いが早く覚める」という方もいますが、これは大きな間違いです。
アルコールは90%が肝臓で分解され、10%はそのまま汗や尿とともに排出されますが、この割合は入浴やスポーツをしても変わりません。
むしろ、汗をかいて血中アルコール濃度は高くなり、また血液が全身に拡散し肝臓に血液が集められなくなるため、アルコールの代謝速度が遅くなってしまいます。
お酒を飲んだら、酔いが覚めるのを待つか、または、翌朝入浴するようにしましょう。


――そもそも二日酔いにならないためには?


二日酔いを起こさないようにするためには予防が一番です。
まずは酒量については『適度な飲酒』を知ることが大切です。
厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21」によると、「節度ある適度な飲酒」は1日平均純アルコールにして約20g程度であるとされています。
女性や高齢者はその1/2~1/3の量が望ましく、少量の飲酒で顔面紅潮を来す等アルコール代謝能力の低い人(=ALDH2の活性が低い人)も少ない量が適当です。
尚、成人男性は40g以上、成人女性は20g以上の飲酒をすると「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」となりますので、合わせて覚えていただきたいと思います。

空腹時に飲酒するとアルコール胃炎が起きやすくなりますので、お酒を飲む前には何か食べるようにしましょう。
胃腸の粘膜を保護する効果があるのは、オリーブオイルやチーズなど脂肪分の多いものが良いです。
またペースを落とすためにも、食べながら飲むことが大切です。
更に、傍らに水を用意してお酒の合間に時々飲んでください。
これを「和らぎ水」「チェイサー」と呼んだりもしますが、水で一呼吸置くことで飲みすぎや悪酔いを防ぎ、またアルコールによる脱水を予防できます。

最後に繰り返しますが、何より「節度ある適度な飲酒」を心がけることが大切です。
周りの雰囲気に流されず、自分のペースで飲みましょう。


翌朝車を運転することが分かっている場合は飲みすぎないことが一番だが、飲酒から運転までの時間をしっかり空けることも大事。これからの忘年会・新年会シーズンは特に注意が必要だ。

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