立場を見事に投影…政治家の「2018年の漢字」まとめ 「首相の漢字」の知られざる舞台裏

カテゴリ:国内

  • 首相が「転」を選ぶまでの過程は… 
  • 与党幹部は存在感アピール、野党は政権批判の漢字に 
  • お騒がせ2大臣は性格もチラリ 

今年の漢字は「災」だったが「政界の漢字」は?

2018年の世相を表す「今年の漢字」。清水寺の貫主が揮毫した一字は、相次いだ自然災害を象徴する「」だった。この「今年の漢字」発表に合わせ、政界でも各政治家に今年の漢字についての質問が記者団から飛んだ。その政治の世界での「今年の漢字」から2018年を振り返る。

今年の漢字は「災」(12月12日 京都市・清水寺)

安倍首相=「転」の知られざる舞台裏

まずは恒例となっている首相の選んだ漢字。安倍首相が選んだ自身の今年の漢字は「」だった。「転ぶ」が想起される、政治家にとって縁起が悪く、不安定な政権なら各方面から揶揄されかねない漢字なのだが、「起承転結」の「転」の意味だということで、長期政権ならではの自信も伺える。

「今年の漢字」について答える安倍首相(12月12日)

安倍首相はさらに「転」とした理由について、平昌五輪のフィギュアスケートで羽生結弦選手が4回『転』で金メダルを獲得したこと、将棋の藤井聡太七段やテニスの大坂なおみ選手が活躍するなど「新しい世代への『転』換を予感させる」ことをあげた。

そして、国際情勢においても、史上初の米朝首脳会談が行われたことや、安倍首相自らもロシアのプーチン大統領と頻繁に首脳会談を行ったことを挙げ、「『転』機が訪れてきたと感じる1年でもあった」と振り返った。

そのうえで、「未来を好『転』させるかどうかは、私たち自身にかかっている」と強調したうえで、天皇陛下の退位と皇太子さまの即位が行われることやG20サミットの議長国であることなどを念頭に「来年、日本は大きな『転』換点を迎えるが、良い年にしていきたい」と決意を語った。

このように数分間の発言を通じ、スポーツから国際情勢に至るまで広く1年を振り返る中で5回も「転」の字を織り込んだ安倍首相。災害時を除き、首相が会見のためにわざわざ執務室から記者団の前に降りてくるのは珍しく、首相官邸として「今年の漢字」を重視していると言えるのかもしれない。

実は首相に近い政府関係者によると、「今年の漢字」は首相周辺が数案を選定し、首相に提示して決定される。まるで元号のような気合の入った選定プロセスだ。
首相の「今年の漢字」は、第2次安倍政権以降、「」(13年)、「」(14年)、「」(15年)、「」(16年)、「」(17年)と前向きな意味を持つ1文字が続いており、「」「(朝鮮問題)」などと本家の「今年の漢字」がネガティブな意味合いを持つこともある一方、国民に希望を与え、政権の実績を強調したい思いがあるだろう。

菅官房長官は「成」

安倍政権の要である菅官房長官が挙げたのは「」。
この1年間で70年ぶりの働き方改革や改正漁業法などが「立」したことに触れ、「様々な改革を『成』し遂げることができた」と、政権中枢らしく安倍内閣の成果と実績を強調した。

菅官房長官

西村官房副長官は「糧」

安倍首相側近の西村官房副長官が選んだのは「かて」と読む「」の字だった。今年1年を振り返る上で、安倍外交が世界各国と信頼関係を築いていることに触れ、「日露平和条約交渉、日米交渉、日中交渉、さらには拉致問題解決に向けた肥やしの1年だった」と評価し、副長官として今年の『糧』を活かして来年も安倍首相を支えたいとの決意を述べた。豪雨災害をめぐり対応の不手際が指摘されたこともあったが、それも「糧」に将来のトップを目指す…という気持ちが込められていたかは定かではない。

西村官房副長官

与党幹部は「改」「基」などで存在感アピール

自民党の岸田政調会長は「」を選んだ。「今年後半は政調改革に取り組んだ。前半は働き方改革が大きな議論となった。そして来年は元号が変わる改元ということが予定をされている」として、「改革」「改める」の改にしたという。自民党総裁選への出馬を断念する見返りに得たともいえる政調会長ポストの続投。それだけに自らがてがけた改革の実績をアピールしたい気持ちもにじんだのかもしれない。

自民党・岸田政調会長

公明党の山口代表は「基」を選んだ。今年は災害が多く、国土や国民生活の基礎を揺さぶられ、国際的には対立、分断をあおるような、国際秩序の基本が揺さぶられる年だったからだという。その上で「教育負担の軽減とか、消費税率の引き上げに伴う制度とか、今後の重要な課題に対する基礎的な仕込みを今年行うことができた」と与党の一角として政権に押し込んだ政策をアピールして見せた。

公明党・山口代表

野党からは「偽」「破」とネガティブ漢字が…

立憲民主党の福山幹事長と長妻代表代行がそろって選んだのが「」の文字だった。
福山氏は、財務省の文書改ざん問題や外国人技能実習制度の調査集計の誤りなどを批判し、今年1年は「フェイク(『偽』)の国会だった」と嘆いた。そのうえで福山氏は、来年は「事実と真実を日本の政治に取り戻していく戦いをしていきたい」との決意を語った。

立憲民主党・福山幹事長

また長妻氏は、安倍政権が「『人の為(人+為=偽)』と言いながら真逆の政策を続けてきた」との理由を掲げた。

立憲民主党・長妻代表代行

共産党の小池書記局長は「」を選んだ。安倍政権について「破れかぶれで強行するという政治になっている。いよいよ安倍政治の破たん、行き詰まりが明らかになった1年だったと思う」と述べるなど、共産党いつもながらの政権批判を繰り広げた。

共産党・小池書記局長

“お騒がせ大臣”の2人は気持ちをストレートに?「堪」「会」

そして10月の第4次安倍改造内閣発足で初入閣して以来、世間を賑わせてきた2人の閣僚。

まずは「政治とカネ」の問題で野党から追及を受けた片山地方創生相だが、手書きで披露した今年の漢字は、「」(たえる)という国会で窮地に立たされた自身を象徴する漢字だった。それでも「忍耐」の「耐」ではなく、「持ちこたえる」というプラスの意味を持つ「堪」であることを強調するなど、負けん気の強さの片鱗をのぞかせた片山大臣。理由として、経済指標がもち『堪』えていることや、入閣後に自らが「一生懸命『堪』えて頑張っている」ことを理由に挙げたうえで、「来年に向けて様々な展開に『堪』えるような政策を作りたい」と強調した。

片山地方創生相

不安定な答弁で閣僚としての資質が問われた桜田五輪相が選んだのは「」だった。東京五輪大会の『会』、さらに大臣就任以降の人々との「出『会』い」を理由に挙げたところに、当選7回で悲願の初入閣を果たした喜びが垣間見える。

桜田五輪相

このように、各政治家の選んだ「今年の漢字」には、その政治家の様々な思いや立場が投影されていた。誰の選んだ漢字に共感するかは国民それぞれだが、来年が、できるだけポジティブな漢字の並ぶような、よい年であってほしい。

(フジテレビ政治部 首相官邸担当 山田勇)

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