前半は参院選、後半は憲法改正に大乱の芽 ダブル選挙説くすぶる2019年の政局展望

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  • 参院選は自民苦戦予測も野党分裂が下支えか
  • 憲法改正は掛け声と裏腹に上半期低調?後半の加速は? 
  • 衆参ダブル選は?可能性低くとも政局を左右か

2019年政局の焦点は参院選と憲法改正

平成の世が終わり新たな時代が始まる2019年。この1年は政治の世界にとっても極めて大事な1年となりそうだ。何より天皇陛下の退位と新天皇の即位、そして新元号の発表という一連の行事をつつがなく行うことは政府の大きな責任となる。

そして政局に目を向ければ、4月の統一地方選挙を経ての、7月の参院選が最大の焦点となり、憲法改正の行方も大きな注目だ。今年前半の政局は、ほとんどが参院選に向けて、あるいは参院選から逆算しての動きになると見られる。そして、その参院選の結果によって、憲法改正をめぐる議論がどのように展開されていくのかが見えてくる。

この参院選と憲法改正という2つの軸を中心に、外交や10月に予定される消費税の増税を絡めて、2019年の政局の行方を展望したい。

安倍自民党は6年前の大勝再現は困難か

今年の参議院選挙は7月4日公示、21日投開票の日程で行われることが有力になっている。この参院選の勝敗に関する焦点は次の3つだ。

・安倍自民党は6年前の議席をどの程度維持できるか
・野党間の選挙協力・連携はできるのか
・「改憲勢力」は3分の2の議席を確保できるか

参院選は3年ごとに半数の議席が改選される。そのため今回改選される議席は6年前の2013年の参院選の結果がベースだ。では6年前の参院選とはどのようなものだったか。

参院選で与党が大勝(2013年7月)

それは第2次安倍政権発足から半年の時点で、アベノミクスによる景気回復が進む一方、旧民主党政権への国民の不信感が色濃く残る中で行われた。結果は、改選121議席中、自民党が65議席と単独で過半数を制し、公明党と合わせて83議席と与党で3分の2を占める安倍政権与党の大勝となった。

では、今回の情勢はどうだろうか。2013年の参院選の1か月前(6月)の世論調査では、安倍内閣の支持率は60.7%あり、不支持は24.3%だった。
一方、FNNの去年12月の世論調査では、安倍内閣の支持率は43.7%と2013年6月より15ポイントも低く、不支持率は43.4%と、2013年の2倍近くに達している。

また、2016年の前回参院選を振り返ると、自民党が55議席、民進党が32議席を獲得し、与党勝利ながらも民進党が一定の健闘を見せた。この時の投票1カ月前の世論調査を見てみると、安倍内閣の支持率は49.4%、不支持は38.1%で、3年前と比べても安倍自民党が苦しい状況なのがわかる。

単純比較すると、政権与党にとっては、6年前のような大勝は望めず、3年前の議席数もおぼつかないという数字で、それ故に6年前からの議席減少をいかに最小におさえるかという守りの選挙となる。

野党結集は実現するのか?

一方で、安倍政権にとって、参院選での苦戦はあっても大敗まではないだろうという一定の安心感も漂っている。実はFNN世論調査でも自民党の支持率は、2013年6月は39.2%、2018年12月は37.8%で、現状と大勝した6年前との差は小さい。

その最大の要因は、野党が、分裂の影響で政権批判の受け皿になりきれていない点だその最大の要因は、野党の分裂だ。民進党の分裂により、立憲民主党と国民民主党に分かれた野党勢力だが、お互いの感情のしこりは根深く、安倍政権に対抗するエネルギーにも悪影響を与えていると言える。

立憲民主党・枝野代表、国民民主党・玉木代表

まずは、通常国会でどれだけ存在感を示し、結束力を見せられるかがポイントで、立憲民主党幹部は次のように語っている。

「(通常国会は)予算でも盛り上がると思うし、何か(政権の)問題は出てくる。あとは参院選までどうやって盛り上がらせることができるかだ」

その上で参院選では、32ある定数1の選挙区「1人区」の勝敗が、全体の勝敗に直結するだけに、安倍政権に対峙するなら野党の協力による候補者一本化は必須の条件だ。ところが、立憲・国民両党の間で一本化に向けた調整は現時点で遅々として進まず、野党票の分散を左右する共産党との関係についても、立憲・国民両党の温度差は埋まらないままだ。

支持率の上では、FNNの12月の世論調査での政党支持率は立憲民主が12.0%と、1.1%の国民民主に大差をつけていて、こうした数字を背景に立憲民主は候補者調整の面でも強気の姿勢を貫いている。
一方で、旧民主党最大の支持団体だった労組「連合」内には、国民民主党の方と関係が深い労組が多く、立憲民主党に冷ややかな視線が送られている。

連合は立憲民主、国民民主両党と政策協定を締結(2018年11月30日)

こうした複雑な状況で野党側は、立憲民主・国民民主・共産・連合といった勢力がどんな関係性をとった場合に、無党派層を巻き込んだ大きなうねりを起こし、巨大与党を脅かせるかという点から逆算する戦略がポイントとなる。バラバラはダメ、一方で理念なき選挙協力は野合との批判を招くという中で、野党首脳の大胆にして緻密な決断が試されることになる。

消費税・北方領土…参院選への諸刃の剣

現状で与野党が置かれている参院選に向けた状況は以上の通りだが、あと半年間の政治動向によって、いくらでも選挙情勢が変わる余地があるのは言うまでもない。

まずは、経済だ。米中貿易戦争に景気が左右される中、通常国会では、日本経済の先行きや、10月に予定される消費税率の10%への引き上げに向けた政府の経済対策についての論戦が交わされる見通しだ。
去年の自民党総裁選で石破元幹事長が地方で一定の票を集めたように、安倍首相の経済政策に対する地方の不満は、参院選の波乱要素の1つだ。

そして、安倍政権が、あわよくば参院選前のアピール材料にしたいと考えているのが外交だ。参院選の直前にはG20サミットが大阪で開かれる。安倍首相はここで世界の首脳を相手に、会議の議長としての「外交の安倍」の存在感を発揮したい考えだ。

G20サミット(2018年11月30日 アルゼンチン)

さらに、このG20サミットにあわせて行われる見通しの日露首脳会談は、さらに大きな注目を浴びる可能性がある。
北方領土の返還に向けて、安倍首相は去年11月のプーチン大統領との会談で、歯舞・色丹2島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結交渉を加速させることで合意した。政府としては、択捉、国後を含めた4島返還を求める立場から、まず歯舞・色丹の2島の返還を実現し、残り2島は継続協議もしくは自由往来や経済面などでの成果を得て決着とする「2島+α」に事実上転換した形だ。

日露首脳会談(2018年11月14日 シンガポール)

そして安倍首相はこのG20の際の日露首脳会談で、2島の返還に関する一定の成果を挙げたい考えだ。これが、2島の返還がどの程度確約されるものか、残り2島についてどんな成果を勝ち取れるものなのかによって、国民世論の受け止めはまったく変わるだろう。安倍首相にとっては諸刃の剣のこの会談も、参院選の結果を左右するものとなる。

慎重論根強い中で憲法改正は加速するのか?

そして、参院選に向けた憲法改正論議、参院選を受けた憲法改正の進み方は、今年の大きな注目点だ。安倍首相は去年12月の記者会見で、憲法改正について次のように述べた。

「2020年を新しい憲法が施行される年にしたいと申し上げましたが、いまもその気持ちには変わりはありません。与党・野党といった政治的な立場を超えて、できるだけ幅広い合意が得られることを期待しています。その後のスケジュールは、国会しだいでありまして、予断を持つことはできないと考えています」

安倍首相の記者会見(2018年12月10日)

2020年の新憲法施行を本当に実現するならば、改憲案の周知期間や国民投票の準備の時間を考慮すると、今年の通常国会中に改憲案を提示して一定の議論を行い、年内の発議への道筋をつける必要があるだろう。
実際、自民党関係者は、通常国会の見通しについて次のように語っている。

「(通常国会は大きな法案はない。憲法をメインにしたいからね。だから大きいの(法案)は全部臨時国会でやったんだよ」

しかし、国民世論が決して盛り上がっていない中、自民党内には憲法改正に冷ややかな声もあり、まして連立パートナーの公明党は、憲法改正の議論には前向きなものの、安倍首相の目指す9条の改正には極めて慎重だ。そのため憲法改正への動きを強めすぎると、参院選に向けて与党内からの反発が強まるというジレンマを抱えている。参院選までは憲法改正への動きは、ノロノロ運転となる可能性が高い。

ただし参院選が終わって、憲法改正に積極的な勢力が3分の2を維持している状況であれば年内に改憲への動きが加速する可能性はある。また、3分の2をぎりぎり割るような状況になった場合は、野党内の憲法改正に積極的な勢力を巻き込んだ政界再編が起きることも考えられる。

国立公文書館所蔵

くすぶるダブル選挙説は政局にどう影響?

そして最後に触れておかないといけないのが、安倍首相が参院選に合わせて衆院を解散してダブル選挙に打って出る可能性だ。安倍首相は野党時代の2012年、憲法改正とダブル選挙について、次のように述べたことがある。

「国民の手に憲法を取り戻すために(中略)衆参ダブル選挙をやって、大きな命題で選挙をやって、“どーん”と突破したいなと思いますね」

この時は、憲法改正の国会発議について定めた96条の改正に関する発言だったが、安倍首相の頭の中に、憲法改正を進めるための手段としての、ダブル選挙というのがあるのは確かだ。さらに、参院選直前の日露首脳会談で北方領土返還に道筋をつけられた場合、それを追い風に、日露交渉に関する信を問うとしてダブル選挙に打って出るという戦略が、安倍首相の頭によぎることもあるだろう。

また、参院選の自民党大苦戦が予想される状況になった時に、安倍首相があえて衆院選をぶつけ、ダブル選挙を「政権を選択する選挙」の形にして、「本当に今の野党に政権を任せるんですか」と訴え、起死回生を図るというパターンも十分ありうる。

現状では、連立のパートナーである公明党も慎重姿勢であり、しかも大敗するリスクもあるダブル選挙に安倍首相が打って出る可能性は高くはないだろう。しかし、どんなに可能性が小さくとも、今年前半は、このダブル選の可能性を頭の片隅に置いた、あるいはカードに使った政権運営や与野党の駆け引きが繰り広げられることになる。

その中で、私たち国民も、安倍首相の政権運営への評価、そして「新時代の日本の舵取りを担う政治的パワー」をどの勢力に預けるのがふさわしいのか、冷静な判断が問われることになる。

(フジテレビ政治部デスク 高田圭太)

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