「ファーウェイ」問題と、米国防権限法の関係

カテゴリ:ワールド

  • 米国防権限法2019 第899節の「禁止事項」
  • 米国防権限法に「ファーウェイ」「ZTE」
  • 中国政府に関連すると米国防長官に判断された企業が生産した通信機器は…

日本政府、事実上の「ファーウェイ」「ZTE」排除

日本政府は、12月10日に開いたサイバーセキュリティ対策推進会議で、各省庁で使用する情報通信機器について、「悪意ある機能が組み込まれた機器を調達しない」ことなどを確認した。
これは中国の通信機器大手、「ファーウェイ」社と「ZTE」社を念頭に置いた方針で、事実上、2社を排除することになる。

この「ファーウェイ」の件では、カナダでファーウェイのCFO=最高財務責任者の孟晩舟容疑者が、対イラン制裁違反容疑で、今月1日に米国の要求で逮捕されたのち、保釈金を積んで保釈されたが、その後、中国で二人のカナダ人の身柄が拘束された。

拘束されたマイケル・スパバ氏(右)

拘束されたカナダ人の一人は元外交官で、もう一人は北朝鮮との文化交流を行い金委員長と交流があるマイケル・スパバ氏だという。
この件は、14日に開かれた米国とカナダの2+2でも取り上げられ、その後の記者会見で、ポンぺオ米国務長官は「2人のカナダ市民の不当な拘禁は容認できない。中国は、2人のカナダ国民の拘禁を終わらせるべきである」と述べるとともに、質問を受ける形で「法的プロセスは継続する」と述べ、カナダ人の拘束とは関係させない姿勢を示唆した。

米FBI「ファーウェイ問題」で議会証言

プリースタップ課長補佐

米政府は、なぜ、中国の大手通信機器メーカーに厳しい目を向けるのか。12日、FBI=米連邦捜査局のカウンターインテリジェンス部(防諜部門)のプリースタップ課長補佐が米上院で、以下のように証言した。

プリースタップ課長補佐:
中国政府は、米政府と価値観を共有していない。そして、ここ数年の間に中国が制定してきたサイバーセキュリティの法律は、中国(当局)が通信データやサイバー企業のユーザーデータにアクセスできるようにしている。
ファーウェイ社が、世界的に拡大しつつあり、その企業が所有するデータを中国政府が利用できるようにするということを理解する必要がある。それが非常に懸念される。

現場部門の声として、重い言葉だ。

では米国は、「ファーウェイ社」をどのようにしたいのだろうか。これに関係してくるのが、米国の国防予算の法律だ。
米国の国防予算は毎年、法律案として米政府から議会に提出される。議会では、上院と下院でそれぞれ、政府への“注文”が付けられ、上下両院で、その注文を整理・調整したうえで採決。大統領が署名し、「法律」として成立する。

一般論だが、国防権限法に盛り込まれた米議会の“注文”は法律の一部として、かなりの強制力をもつ。今年の8月13日にトランプ大統領が署名したのが、2019会計年度の米国防予算を示した「国防権限法2019」だ。

「テレコミュニケーション機器・サービス」の禁止事項

国防権限法2019

表紙含め788頁から成る“法律”だが、その第889節は「特定のテレコミュニケーション及びビデオ監視サービスまたは機器に関する禁止」と題されている。

そして米政府機関に対し今回、禁止事項として、特定の会社の通信機器、通信・監視関連機器、サービスを利用している機器、システム、サービスの購入・利用や、これらを利用している企業との契約・取引を禁止、などとなっている。

政府調達禁止となった企業は

第899節では「対象の機器・サービス」として、「ファーウェイ・テクノロジー社、またはZTE社(または、これらの子会社・関連会社)で生産されたテレコミュニケーション機器。そして、「Hytera Communications Corporation、Hangzhou Hikvision Digital Technology Company、またはDahua Technology Company(または、これら企業の子会社または関連会社)によって製造されたビデオ監視および電気通信機器や、こうした機器によって行われるテレコミュニケーション、またはビデオ監視サービス」等となっている。

米官庁取引企業以外にも影響が広がる可能性

つまり、これらの会社の製品を米政府官庁は、購入しても使ってもダメとなっているので、米政府官庁と取引のある、あるいはこれから取引しようとする企業は、これら名指しされた企業の製品を購入したり、サービスを受けられなくなる。

また、米官庁と取引がある、あるいはこれから取引しようとしている企業は、自社の取引先企業に、上記の企業の機器やサービスを使用していないか、神経を尖らせることになるだろう。
すると、これらの取引先企業も、自社の取引先に神経を尖らせることになるはずだ。こうして、上記の第899節で名指しされた企業は米政府機関だけでなく、民間企業との取引も、かなり制約されるはずだ。

国防権限法で名指しされた「対象である外国政府」

そして、排除・禁止対象となるのは、上記の名指しされた企業の製品・サービスだけではない。
「対象である外国政府が所有または管理、さもなくば関連していると、国防長官が国家情報長官またはFBI=連邦調査局長官と協議の上、合理的に判断した企業によって生産または提供された、電気通信またはビデオ監視機器、またはサービス」となっている。

つまり、上記の名指しされた企業以外にも今後、“ある外国政府”によって、所有・管理されているとみなされれば、排除・禁止対象となる企業が増える可能性があるのだろう。
しかも、それを決めるのは、米政府の経済官庁でも外交当局もなく、国防長官と国家情報長官、それにFBI長官であって、安全保障上の問題として扱われているのだ。

では、「対象である外国政府」とは、どこの国の政府なのか。第899節は、「中華人民共和国」と名指ししていた。米中の経済戦争は、貿易赤字など、表面化している事象だけでなく、安全保障というもっと根深いところにも、その問題の本質があるのかもしれない。


【動画】「能勢伸之の週刊安全保障」(12月15日配信)

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