寿司屋から“トロ”が消える! クロマグロが幻の魚になる日

カテゴリ:地域

  • 今年は大間のマグロの漁獲量が去年の3分の1に減少
  • 最高級のマグロは、脂がのったサンマと旨味のある肝を内蔵したスルメイカを餌に育つ
  • なぜ今年は、クロマグロが消えたのか・・・

サンマとスルメイカを餌にするマグロ

大間のクロマグロが記録的な不漁だ。今年の漁獲量は、昨年の3分の1程度にまで落ち込んでいる。漁師たちにとっては死活問題である。

また、全国の寿司店は、忘年会から新年会にかけての書き入れ時に、ネタとして定番のトロも赤身も品不足になり、値段も高騰しているのだ。 

日本の沿岸で獲れるクロマグロは、主に東シナ海の南西諸島の海域で生まれる。マグロは、太平洋側の黒潮と日本海側の対馬海流に乗り、餌を追い掛け大きく育ちながら北上し、津軽海峡で交差する。そのため、津軽海峡の大間沖の海域はマグロの好漁場となっている。

大間の周辺には、例年10月から11月になると脂がのったサンマの群れが回遊する。さらに旨みのある肝を内蔵したスルメイカもやってくる。12月頃、このサンマやスルメイカを餌にしたマグロは、脂、旨みともに身に着け、最高級のマグロに仕上がる。この時が漁の最盛期である。

価格高騰の時期を見計らっていたのに

近年、乱獲が祟りマグロの資源量が減少している。このままでは、絶滅の恐れがあることから、2015年より年間の漁獲高を規制している。そのため、大間の漁師たちは年末から正月にかけ価格が高騰する時期を見計らい漁獲量を温存していた。しかし、12月に入り、満を持した漁師たちが船を出すと、マグロが姿を消してしまっていたのだ。漁獲量の割り当てを残したまま、漁期の終わりが近づき、漁師の苛立ち、焦りは、極限に達している。

この数年、沿岸部の水温が低下しないため、津軽海峡にやってくるサンマの量が少ない。また、スルメイカも北海道沖日本海の海水温が安定しないため、産卵数が少なく不漁となっている。津軽海峡にクロマグロの餌となるサンマもスルメイカもいないのである。

マグロは餌を求めて、大間の沖から去って行ってしまったようだ。漁師たちは、船を出してもマグロの姿を見ることができないのだ。時速80キロで走るマグロは、三陸のはるか沖まで餌を追いかけて行ってしまったのだろう。

クロマグロが“幻の魚”へ

今年1月5日に行われた築地の初セリでは、大間産の405キロのクロマグロが3645万円、キロ単価9万円の高値で競り落とされた。

このまま不漁が続くと、来年早々、豊洲市場で初めて行われる初セリでは、1本あたり1億円のクロマグロが現われるかもしれない。

このままでは、クロマグロは幻の魚になってしまう。今年のクロマグロの不漁は、資源量の減少の上に、沿岸域の海水温の上昇が餌の魚類の減少につながったことが原因のようである。今後、クロマグロのみならず、餌となるサンマやイカの資源の保護にきめ細やかに取り組むとともに、それぞれの群れの移動状況を科学的に分析する必要があるだろう。

(執筆:海洋経済学者 山田吉彦)