南海トラフ地震のメカニズム解明なるか!? 世界で初めて巨大地震発生帯にアプローチする「ちきゅう」を独占取材

カテゴリ:国内

  • 人類史上初めて巨大地震発生帯にアプローチする「ちきゅう」を日本のテレビ局で初取材
  • 24時間体制で1時間におよそ2メートルのスピードで岩石を掘削
  • 南海トラフ巨大地震の発生確率は今後30年で70%~80% 死者32万人以上など甚大な被害が想定される

12月のはじめ、フジテレビ年末報道特別番組「平成最後の年末に真相を見たSP(12月16日午後4時放送)」の取材班は、人類史上初の重大なミッションを遂行している地球深部探査船「ちきゅう」への乗船取材を日本のテレビ局で初めて許された。

ヘリで30分・・・海上に横たわる「ちきゅう」

三重県志摩市のヘリポートを飛び立って約30分、眼下に藍色の海に悠然と浮かぶ白い大きな船の姿が現れた。
紀伊半島から約75キロの海上に、微動だにしない様子で横たわる全長210mの船体は陽光に照らされ誇り高く輝いていた。

科学掘削船「ちきゅう」

「ちきゅう」は、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が所有する科学掘削船で、船の真下の海底深くには、南海トラフ巨大地震を引き起こす地震発生帯が広がっている。
そこは、プレート同士が圧力や熱などによって強くくっついる「固着域」と呼ばれていて、100年から150年ほどの周期で一気に剥がれ破壊されると、大規模な地震と大津波を発生させると考えられている。

しかし当然ながら本当はどうなっているのかを見た人は誰もいない。

そこで「ちきゅう」に課せられたミッションは、人類史上初めてその固着域、つまり巨大地震発生帯まで直接アプローチするというものだ。

海側のプレートの沈み込みによってプレート境界付近の陸側の岩盤には徐々にひずみが溜まっているため、この付近の岩石を掘削して採取し分析することで、岩盤がどれほどの大きさのひずみに耐えられるかなどを調査し、南海トラフ巨大地震のメカニズムに迫ろうとしていて研究成果に期待が高まっている。

2007年からJAMSTECと東京大学などの研究グループは、この場所ですでに海底3000メートル付近までは掘削を行っていて、今回は南海トラフ地震発生帯掘削計画の集大成として、プレート境界の地震発生帯とみられる海底約5200メートルにある固着域へ向け、崩れやすい岩盤をケーシングという囲いで覆い固めながら掘り進む非常に難しいミッションに挑戦している。

初潜入・・・24時間稼働の壮大なミッション

プロジェクトマネージャーの案内で、超深部掘削を可能にする世界最高峰のライザー掘削機など掘削に関わるエリアの取材を行った。

迷路のような船内を通り抜けると、そこには重機からの轟音が響き、オイルのようなにおいが漂う巨大な工場のような空間が広がっていた。

このシステムは、研究のために掘削した岩石など採掘物をひとつ残らず回収するため、海底と「ちきゅう」をパイプでつないだままになっている。
そのため、万が一海底からガスなどがパイプを通って船上に噴出した場合に備え、取材班も専用の作業つなぎに安全靴、ヘルメットにゴーグルを着用しなければ撮影は許されない。

掘削中の作業員の所作には全く無駄がなく、失敗の許されない緊張感が伝わってくる。

取材中の掘削作業は難所に差し掛かっているようで、慎重に1時間におよそ2メートルずつゆっくりと掘り進めていた。
40メートルほどのドリルパイプを継ぎ足しながら24時間2交代制での掘削作業は、作戦変更やトラブル、先端のドリルの交換以外は止まることはないそうだ。

普段見ることのできないエリアや掘削中のドリルパイプの回転を見ながら、この船の下で、海の中も含めると5キロ以上もパイプがつながっていて、そのパイプの先端のドリルが岩盤を削っていることを想像すると、このミッションの壮大さと難しさを実感できた。

岩盤を削り、摩耗したドリルの先端

また船の中には最新機器を備えた研究のための大きなラボも完備していて、様々な国から来た研究者が海底から上がってくる岩石の破片をすぐに調査研究し、これまでの学説、自分たちの推測が間違っていないことを確認しながら、新たな発見がないか目を輝かせていた。

“死者32万人” 南海トラフ地震の確率は30年で70~80%

南海トラフ巨大地震の発生確率は今後30年で70%~80%とされ、地震が起きれば死者32万人以上など甚大な被害が想定されている。

「巨大地震発生のメカニズムの解明が、多くの命を救う防災につながると信じている」と海外からの研究者は熱く語っていて、研究への情熱とともに使命感を感じることができた。

順調に掘削作業が進めば1月下旬か2月上旬に、海底約5200メートルの巨大地震発生帯に到達する予定だ。
掘削船「ちきゅう」から海底へと伸びたドリルと、巨大地震のメカニズム解明のための研究者たちの思いは、ゆっくりと確実に、南海トラフの地震発生帯に近づいている。

(執筆:フジテレビ社会部防災担当 長坂哲夫)