トルコアイスみたい!? 不思議な形の“雪の正体”を専門家に聞いた

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  • チーズ・餅・水飴にも見える!?
  • 知られざる雪の性質「粘弾性」が変形に関係していた
  • 専門家「儚い現象」…発生条件は?

“あの食べ物” にしか見えない

暖冬といわれる今年、北海道では132年ぶりに11月上旬まで初雪が観測されず、記録的な遅さとなった。
11月14日に旭川市などでようやく初雪が観測されてからは、冷え込みが強まり大雪への警戒が続いている。

そんな北海道の空知地方に位置する岩見沢市で12月12日、なんとも不思議な形をした雪が発見された。
「おいしそうな雪」とツイッターを賑わせた、その姿がこちら!

塀の上で突如、大きなカーブを描く雪。
道路にせり出す勢いで塀の側面に沿って積もり、地面の雪に接することなく宙に浮いている。なめらかな曲線は、まるで生きているようでもある。

この自然が生み出した造形美に、多くのユーザーが「すごい…本当に雪なの?」「アートだ、美しい!」と驚きと感嘆の声を上げた。
さらに、「トルコアイス!? 」というコメントとともに、うねる雪に口髭のおじさんがヘラで持ち上げた伸びるアイスをコラージュした画像が投稿されると、不思議な形の雪をさまざまな物に例える人が続出。

リボン、ゴム、ねじれた布(マフラー、タオル、布団)という意見もあったが、多くの人は食べ物を連想したようで、アイスクリームの他にも極太うどん、チーズ、餅、生クリーム、水飴、溶けたマシュマロやホワイトチョコなどが挙げられ、コメント欄は大喜利状態となった。

12月20日時点で8万9,000を超える“いいね”を集めたおいしそうな雪があったのは、岩見沢市立総合病院と天理教夕張大教会の間の道路。
投稿者のyamazaki(@8da0b6)さんによると、12日の13時頃、大学への登校途中に発見したという。

全長約2mほどに渡って塀から垂れ下がった雪に思わず足を止め、写真をツイッターに投稿。
雪国ではよく見られる光景だという意見も寄せられたが、yamazakiさんは「このような現象は初めて確認しました」と驚いたという。
その日の夜に同じ道を通ると、ねじれた部分が落ちて不思議な形の雪は無くなっていたそうだ。

「雪紐」ではないかとの指摘も見られたが、この不思議な雪の形は一体どんな現象なのか?
北見工業大学地球環境工学科の亀田貴雄教授に話を聞いた。

雪には“粘弾性”がある「水飴のように回転して変形」

ーーこの現象は何ですか?

指摘されているように、降り積もった雪がずれて垂れ下がり、飾り紐のように見える「雪紐」でよいと思います。
雪紐は長くまがりくねった形状の積雪で、太い形状と細い形状があります。
2014年に北海道新聞の読者から写真提供を受けて積雪の造形美についての調査を行い、その一つとして雪紐を調べたことがあるのですが、太くうねった形状は樹木や橋の欄干に見られ、細い形状は電柱に張り付いたものや自動車のナンバープレートに垂れ下がったものが観察されました。

直井和子、亀井貴雄 他:日本雪氷学会『雪氷』「身近に見られる積雪の造形美の生成条件の解明-北海道新聞読者からの写真を用いた解析」より(撮影者:冨田光雄 2012年1月 旭川市にて)

ーーなぜ雪がねじれるの?

今回の雪紐は、調査で報告した「鉄棒の上に冠雪した雪が蛇のようにうねっている例」(上の写真)とほぼ同じですね。
当初は塀の上にまっすぐ堆積した雪があったのですが、雪は粘弾性的な性質(水飴のようなねばっとした性質)を持っているので、一部が下に落ちようとした時にその周囲を引きずりながら落ちて形成されたと考えられます。
つまり、落ちようとした積雪の周囲の積雪も水飴のようにゆっくりと回転して変形したということです。


ーーつまり「天然のトルコアイス」と言える?

私はトルコアイスがどのようなものか知らなかったのですが、検索してみて「なるほど」と思いました(笑)
粘弾性的性質のために雪が伸びて変形した姿を「トルコアイスのようだ」というのは、正しい表現だと思います。

「儚い現象」の雪紐…発生条件は?

ぐにゃりと曲がった雪(12日13時頃撮影)
カーブ部分だけがすっぽりと姿を消していた(12日夜 撮影)

ーー雪国ではよく見られる現象?

調査では、北海道内で5例の雪紐の写真が寄せられましたが、雪紐の報告例はあまり多くはありません。
雪の降る地方では発生していると思いますが、よく見るため不思議だと思わない人が多いのか、気温や風などの気象条件にもよりますが、半日から長くても2~3日しか観察できない儚い現象のため、人の目に留まらないのかもしれません。
正確な数字はわかりませんが、2012年1月に旭川市で撮影された鉄棒の例は、今回の約2mよりも大きな雪紐だったと思います。


ーー「雪紐」が発生する条件は?

調査で推定した雪紐の生成条件は、気温が−17.7〜2.2℃、平均風速は0.3〜2.3m/s、最大瞬間風速は1.1〜4.1m/sでした。


調査で用いたデータと同様に、気象庁のホームページで公開されている10分間隔のアメダスデータを確認したところ、12日13時の岩見沢市の気温は-3.4℃、平均風速は5.5m/s、最大瞬間風速は8.7m/sだった。
気温は調査での推定条件の範囲内だが、風速は調査よりも強かったようだ。
亀田教授によると、「5つの観察事例での結果なので、この範囲内でしか雪紐は発生しないというわけではない」ということだ。


ーー崩落による危険性はある?

12日夜には雪紐は崩れ、塀の上の積雪の一部だけが落ちています。
暖かい日中、雪が解けて塀との境界に水が集まり、塀との付着力が弱くなったところへ風が吹いたために、1ヵ所だけが下に落ちたのではないかと想像されます。
気温とともに雪の変形スピードが上昇したのだとすれば、粘性が追いつけずに切れてしまったのかもしれません。
雪紐は他の積雪に比べて特別硬くも柔らかくもなく、今回は塀の上に積雪していて深さもないので、落ちてきても安全面での問題はないでしょう。

左から「雪まりも」(2011年1月 札幌市手稲区、撮影:東海林明雄)、「雪だま」(2012年1月 石狩市、撮影:田辺正信)、「雪まくり」(2012年4月 小樽市、撮影:水野真紀子)

今シーズンの積雪はこれからも続く。雪が降った翌日には、木の枝や家の塀、柵などに注目して歩くのも楽しいだろう。
雪紐の他にも、積雪の造形美には雪まりも、雪だま、雪まくり、などがあるというので、あなたもユニークな形の美しい雪に出会えるかもしれない。