SM-3ブロックⅡA迎撃ミサイル+AN/TPY-2 Xバンド・レーダーの成功が、日本にもたらすこと

カテゴリ:ワールド

  • 日米共同開発SM-3ブロックⅡA迎撃ミサイルの試験成功
  • EOR(遠隔交戦能力)による迎撃成功とは
  • AN/TPY-2 Xバンド・レーダーの遠隔交戦能力

SM-3ブロックⅡAによる迎撃試験成功の意味

アメリカのミサイル防衛局は、12月11日、日米共同開発の弾道ミサイル迎撃ミサイル、SM-3ブロックⅡAの中距離弾道ミサイル標的に対する迎撃試験に成功したと発表した。

12月11日のSM-3ブロックIIA迎撃試験

発表によると、ハワイの地上配備型迎撃システム=イージス・アショア試験施設の南西を飛行していたC-17輸送機から、投下した中距離弾道ミサイル標的に点火。

C-17輸送機から投下されたIRBM標的

空中発射したこの標的を、地上、空中、それに宇宙のセンサーや太平洋全域の米弾道ミサイル防衛の指揮・統制機構であるC2BMCでリンクして、イージス・アショアから、日米共同開発のSM-3ブロックⅡA迎撃ミサイルを発射。
イージス・アショアのレーダーではなく、遠隔交戦能力を使って、SM-3ブロックⅡA迎撃ミサイルを誘導、迎撃に成功したという。

この成功は、日本の安全保障という観点からは、複数の要素があるとみるべきだろう。
ハワイにあるC2BMCとは、太平洋全域のアメリカ軍の弾道ミサイル防衛用の様々なセンサーと様々迎撃システムと連接して、どの迎撃システムを使用して、どの弾道ミサイルの迎撃を行うか、集中して管制を行うか仕組だ。

C2BMC

ひとつは、日米共同開発のSM-3ブロックⅡAが、射程3000㎞~5500㎞の中距離弾道ミサイル標的の迎撃に成功したということ。これは、北朝鮮の火星12、ムスダン、それに中国のDF-26等にあたる。

次に、日本がこれから導入を進めるイージス・アショアからの迎撃に成功したということ。

イージス・アショア

遠隔交戦能力(EOR)とは…

そして、遠隔交戦能力(EOR)を使っての迎撃だったということ。これは、ミサイルを発射したイージス・アショアのレーダーではなく、他のセンサーが捕捉・追尾した標的のデータを使って、SM-3ブロックⅡA迎撃ミサイルを発射、誘導したことを意味する。

遠隔交戦能力を日本にあてはめれば、日本海側のイージス艦やイージスアショアが、連射される弾道ミサイルをSM-3ブロック1A、同ブロック1B、同ブロックⅡA迎撃ミサイルで迎撃し、迎撃ミサイルを撃ち尽くした。それでも、まだ、敵の弾道ミサイルの連射は続いている。
太平洋側にいる日米のイージス艦には、SM-3迎撃ミサイルは、まだ、残っているが、日本列島の尾根が邪魔をして、太平洋側のイージス艦では弾道ミサイルの捕捉が遅れ、迎撃のタイミングを逸することになりかねない。
しかし、太平洋側のイージス艦では捕捉しにくい弾道ミサイルを日本海側のイージス艦やイージス・アショアのレーダーが捕捉。そのデータで、太平洋側のイージス艦から迎撃ミサイルを発射、誘導すれば、迎撃できるかもしれない。これが、遠隔交戦能力を日本の防衛に当てはめた場合だ。

資料:SM-3ブロックIIA

AN/TPY-2 Xバンドレーダーの能力は…

今回の試験で、驚かされたのは、この遠隔交戦能力をSM-3ブロックⅡA迎撃ミサイルに対して、発揮したのが、イージス艦やイージス・アショアではなく、米陸軍のAN/TPY-2 Xバンド・レーダーであったこと。

AN/TPY-2 Xバンド・レーダーは、韓国にも配備されたことで話題となったTHAAD迎撃システム用に開発されたレーダーだ。日本でも、弾道ミサイルの監視・追尾用として、アメリカ陸軍が、青森県・車力分屯基地と、京都府・経ヶ岬分屯基地の2か所に配備されている。

AN/TPY-2 Xバンド・レーダー

AN/TPY-2レーダーは、ふたつの使い道があり、ひとつは、フォワードベースモードといい、多数の弾道ミサイルの同時捕捉・追尾を行い、そのデータを前述の弾道ミサイル防衛の米指揮統制機構である、ハワイのC2BMCの送付すること。日本では、このモードで配備されており、AN/TPY-2レーダーが捕捉した弾道ミサイルの飛翔データは、ハワイのC2BMCで処理したうえで、ほぼ、リアルタイムで、在日米軍を通じ、防衛省にも送付されてくるという。

もうひとつは、ターミナルモードといい、THAAD迎撃システムのレーダーとして、標的の弾道ミサイルを捕捉・追尾の上、THAAD迎撃ミサイルの誘導を行う。韓国に配備されたTHAADシステムにも、AN/TPY-2レーダー1基が、標的捕捉、迎撃ミサイル誘導用に使用するため、恐らくは、ターミナルモードで、運用されてている。

韓国に配備されたTHAAD

今回の迎撃試験は、AN/TPY-2レーダーをどんなモードで使用したかは不明だが、AN/TPY-2レーダーが、太平洋に展開するイージス艦搭載のSM-3ブロックⅡA迎撃ミサイルの遠隔交戦能力を発揮できたということは、イージス・アショアや日本海側のイージス艦以外にも、太平洋側イージス艦に遠隔交戦能力を発揮できるアセットがあることを意味する。これは抗耐性という観点からも、無視できない点だろう。

THAADとAN/TPY-2レーダー

日本防衛とAN/TPY-2レーダー

ところで、米陸軍は、神奈川県・相模原補給廠に第38防空砲兵旅団司令部の移駐を今年10月に開始した。

この部隊は、日本国内にある米陸軍の地上配備型迎撃システム、PAC-3の部隊や上記のAN/TPY-2レーダーの他に、将来は、グアムのTHAAD迎撃システムも配下にいれることが明らかにされている。

グアムのTHAAD

日本国内にある二か所のAN/TPY-2レーダーは、グアム防衛に絡むことが予想されそうだが、これら日本国内の2基の米陸軍AN/TPY-2レーダーの遠隔交戦能力が、日本防衛を重視し、太平洋側イージス艦に搭載されるSM-3迎撃ミサイルの管制にその能力を発揮するのか。それとも、グアム、ハワイ防衛に力点が置かれるのか。日米は、どのような防御システムを構築することになるのか。
日本の政治の力量が問われることになるかもしれない。

(執筆:フジテレビ解説委員 能勢伸之)

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