ふるさと納税のウラ側① 過熱する自治体の“広告合戦” 税金はどこへ?10%超がサイト業者へ

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  • ふるさと納税の自治体間の激しい“寄付金”獲得合戦
  • 返礼率が30%に抑えられる中、各自治体がポータルサイト上で“広告”合戦に
  • 寄付金の10%以上が地元ではなく業者に流れている。

“ふるさと納税”の寄付が町予算の1割超え

この年末も、各市町村の熾烈な獲得競争がピークを迎えている“ふるさと納税”。過熱するその裏で、我々が自治体に寄付していたと思っていた金額の実に10%以上がポータルサイトなどの仲介業者に「手数料」などとして支払われていたことがわかった。

愛知県幸田町、この町のお礼の品の目玉は「エアウィーヴ」。“一流アスリートも愛用”との触れ込みで大人気の寝具で、町内に工場がある。

幸田町 山本秀幸 総務課長:
総額16億6700万円の寄付を全国からいただいています。こちらのマットレスパッドと枕が全国的に人気がありまして、約98%がエアウィーヴの返礼品の要望があります。

このエアウィーヴを武器に集めたのが愛知県内でナンバーワン、16億円のふるさと納税。
実に、幸田町の予算の1割を大きく上回るお金が、人口4万人の町に寄付として集まった。
ところが今年の春からは、寄付のペースが3割ほど落ち込んでしまった。原因は他の自治体にもエアウィーヴの工場があり、同じ返礼品、同じ寄付金額で扱うようになったからだ。

ポータルサイトを増やして寄付額がV字回復

ふるさと納税を集めるのに欠かせないのが、インターネットの「ポータルサイト」。各市町村の「お礼の品」を見比べ、クレジットカードで決済できる便利さは、まるで通販サイトのようだ。老舗の「ふるさとチョイス」、通販でおなじみ「楽天」や、ソフトバンク系の「さとふる」などその数はいまや10を超える。

幸田町は、「楽天」(2016年~)と「ふるさとチョイス」(2017年~)の2つを利用していたが、2018年から新たに5つのサイトと契約。おかげで落ち込んだ寄付がV字回復した。

しかし、そのサービスはもちろん、「タダ」ではない。幸田町の担当者が見せてくれたのは、ある月の楽天からの請求書。請求額は475万円。幸田町によるとサイトとの契約は、寄付の金額に応じて10%程度の手数料を支払う形が多く、2017年度は2社あわせ、1億7千万円あまりを支払った。これはサイトを通して受けた寄付額の11.1%に当たる。そして市町村がポータルサイトに支払うのは「手数料」だけではない。

「存続のため仕方なく…」広告合戦という“消耗戦” 

昔から、みりんなどの醸造が盛んな愛知県碧南市は、うなぎのかば焼きを「お礼の品」としてプッシュしている。幸田町に次いで、ふるさと納税県内2位。この寄付額を保つために、ある方法がとられていた。それはポータルサイトの会員に送られるふるさと納税の案内メールだ。このメールには、たくさんある市町村のなかから、6つだけがピックアップされていて碧南市も大きく紹介されている。
会員に対し、一部の市や町への寄付を特別に呼びかけるメールマガジンで、実は、市町村がお金を出して「枠」を買っている「広告」だ。

これは、東海地方の別の市町村から入手したポータルサイトから広告枠売り込みのメール。碧南市が利用したようなメールマガジンの広告枠は大きさによって15万円や5万円で販売されているのがわかる。しばしば申し込みが殺到し、広告枠は抽選になるという。

ふるさと納税のポータルサイトを開くとまず目に飛び込む市町村の名前も、別途、数十万円支払って掲載されているケースが多いという。

市町村のPR競争も、まさに「金しだい」の状況。碧南市の担当者は、この状況をどう思っているのだろうか?

碧南市経営企画課 加藤和彦 課長補佐:
(広告の費用は)ちょっと増やしていかないといけないのかなと思っている。昔は、8割還元とか、返礼率合戦がありましたが、それが(今は)3割に抑えられた、逆にPR費というのはおそらく上がっていく傾向にあるのかなと思っています。

愛知県内寄付額1位の幸田町も、こうした広告枠を活用している。

幸田町 山本秀幸 総務課長:
(広告の効果は)大きいですね、とくに12月ですと、1週間単位の(広告)企画のようですけど寄付の申し込みも金額が跳ね上がります。自治体間の競争を煽るという形になってしまうかもしれないですが、制度的にうまく利用させていただかないと、自治体として存続できないということで致し方なく、広告に申込みをしています。 

元々は、自分の住むまちに納めるはずの「税金」を好きな市町村に寄付できる「ふるさと納税」。
最近は、この「税金」が、豪華すぎる「お礼の品」に姿を変えていると問題になったが、同じように市町村の手元に残らない高額な「手数料」や「広告料」には、これまで目が向けられていなかった。

東海3県の全自治体を調査 元は“税金” 約19億6千万円がサイトへ 

東海テレビはこの「手数料」に注目して、11月、東海3県の125すべての市町村に対してアンケートを実施した。2017年度、ポータルサイトを利用したと答えたのは107市町村。2つ以上のサイトを利用した市町村は48あった。ポータルサイト経由の寄付が全体の93%、およそ179億円と、その影響力は絶大だが、このうち19億6千万円が手数料などとして支払われた。これは、サイト経由の寄付の11%、市町村に直接振り込まれた金額など含めた全体で見ても10.2%に上る。この割合を全国のふるさと納税の総額、3653億円にそのまま当てはめれば、約370億円がサイト側に流れた計算になる。

自治体によって分かれる賛否

アンケートの記述のなかには、この「手数料」への不満の声も…。

「サイトが乱立し、手数料も高騰してきている」(三重県多気町)
「10数%の手数料はさすがに高い。もう少し安くならないか」(岐阜県池田町)
「返礼品と違って地元には一円もお金が落ちない」(岐阜県七宗町) 

一方で、ポータルサイトの効果を評価する意見も寄せられました。

「高額と言わざるを得ないが、必要不可欠となってしまっている」(愛知県田原市)
「行政ではPRまで力入れる体力がない。費用さえ負担すれば代わりに行ってもらえるのはメリット」
(愛知県常滑市)

今回の取材でわかった「手数料」の実態に、専門家は…

慶應義塾大 土居丈朗教授(財政学):
1割も手数料で取られているのは、私も知らなかったわけですけど、非常に重要な発見です。もともと公益性があるということで、寄付で優遇すると言ってるわけですから業者が適正な水準で手数料をとっているのか、そこで暴利をむさぼっていないかというのは問われるはずですね。

慶應大学の土居教授は、ふるさと納税は、自治体にあてた“とくに公益性が高い寄付”として、税の仕組み上、優遇されているものだと指摘。その寄付の1割以上が市町村に届かず、業者に利益をもたらす状況には疑問があるという。事務の実費くらい手数料として取るのはいいが、しっかり公益に資する形で手数料を取っているということは、業者も説明を求められるべきだと語る。

ふるさと納税運営側の考えは?

一方、ポータルサイトを運営する各社は、現状をどう見ているのか?

ふるさとチョイス広報 宗形深氏:
われわれのところで料金が高いという話は把握できていませんが、自治体の方が(プランを)選べるようになっているので、もしそれが高いということであれば、基本のプランにしていただくこともできると思います。

「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクは、広告機能などを省いた「基本プラン」を月々数千円で提供していて、市町村が自由に選択できると強調する。

楽天 ふるさと納税事業G 田村裕二氏:
ふるさと納税は、自治体が稼ぐ力をつけるというのが本質的な目的だと思っていますので、そのあたりは私たちは得意分野なのでサポートさせていただけたらと思います。

楽天は、「契約が急速に増えていて、市町村に支持されていると認識している」、としている。
「さとふる」は取材に対し、書面で「各社の手数料に対してコメントする立場にないため回答を差し控えます。ポータルサイトが過度な競争をあおっているとは思っておりません」と回答した。

東海テレビでは12月18(火)~20日(木)「ニュースOne」16:49~19:00 の番組内で
“税金はどこへ?過熱するふるさと納税のウラ側”を特集します。(放送は東海エリアのみ)

18日(火)は「ふるさと納税で納めた税金が“特定”企業にキックバック?」
“ふるさと納税”が制度の趣旨から逸脱したともいえる実態をお伝えします。
ある企業が社員の寄付をとりまとめて、特定のポータルサイト経由でふるさと納税を行うと、寄付額の%がサイトから企業側にキックバックされている実態が判明。運営会社を直撃した。
放送内容はプライムオンラインでも後日公開されます。

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