“猫と一緒”の防災ブック 大事なのは「モノの準備より想像力」

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  • 愛猫を守るための防災情報をまとめた書籍が発売
  • 「備え」「災害発生時」「避難生活の送り方」の3部構成で対応法を紹介
  • 編集者が飼い主に1番知ってほしいこととは?

平成最後の年越しまであと少し。そんな2018年は福井県での豪雪に始まり、西日本豪雨や大阪北部地震、北海道胆振東部地震などと、日本中で大規模な災害が相次いで発生した年で、12日に発表された今年の漢字も「災」だった。

そして、何も被災したのは人間だけではない。“家族の一員”であるペットも災害に巻き込まれていた。
こうした中、愛猫を守るための防災情報をまとめた書籍「決定版 猫と一緒に生き残る防災BOOK」(日東書院)が、12月10日に発売された。

愛猫を守るには「モノより大事なのは想像力」

書籍は、まず「はじめに」として、「モノより大事なのは想像力」だと提言。
防災グッズなどを揃えることも大切だとしつつ、それよりも「外出時に災害に遭ったとき」「災害時に猫が家から逃げてしまったとき」などの場面を想像して、何ができるかを考えておくことが重要だというのだ。

そこで内容は、被災時のあらゆる状況を想定した「災害シミュレーション・チャート」と、その際の対応を「備え」「災害発生時」「避難生活の送り方」の3部に分けて構成。例えば「備え」の項目では、避難訓練を推奨。キャリーバッグに入れるまでが大変だったり、キャリーに入れて移動中に猫が怖がって騒いだりするなどの、想定外の気付きが分かるという。

災害シミュレーション・チャートで色々な対応法が分かる(画像:日東書院)

地震で「猫が驚いて家から逃げた」際の対応法も紹介

また、大阪北部地震や北海道胆振東部地震の発生時には、Twitter上に「猫が驚いて家から逃げた」という投稿が相次いだ。書籍ではこの対策にも言及している。

まずは「備え」として、押入れの一角など周りが囲われている場所に猫が落ち着けるスペースを作っておくこと。猫が怖い時に逃げ込むという場所が家の中にあれば、災害時に探す手間が省けるからだという。

そして万が一、室内飼いの猫が外に逃げてしまった場合についてのアドバイスも。

猫は外の慣れない場所に戸惑い、自宅近くに隠れていることが多いとし、室外機のそばなど家の周囲を隈なく探すことや、「猫が慣れているキャリーやケージを外に出しておくと中に入っていることもある」と、具体的に紹介している。

また東日本大震災の際に、保護された猫の飼い主が一人も見つからなかったデータを掲載。迷子札やマイクロチップなどの身元が分かるモノを装着していなかったことが要因の一つだとして、マイクロチップや迷子札などの装着を勧めた。

この他にも、書籍では「猫の応急処置の方法」や「避難所での世話」など様々なケースを想定した対応がまとめられている。

一体なぜ、このような書籍を作ったのか? 編集の富田園子さんと出版社の本田真穂さんに話を聞いた。

現在、課題となっているのが被災時の「ペット」の扱い

――なぜこのような書籍を企画した?

本田さん:
近年は東日本大震災や熊本地震などの大きな地震が発生し、また2018年だけでも豪雨や地震、台風と多くの災害に見舞われました。今後30 年以内に首都直下型の地震や南海トラフ地震も予想され、今や日本に安全な場所はないと思います。そして現在、課題となっているのが被災時の「ペット」の扱いです。

過去の災害では、避難所から受け入れを拒否されたり、同伴可能だったとしても、鳴き声やニオイ、アレルギーでトラブルが相次ぐなど、問題が浮き彫りになりました。そこで、防災への備えをはじめ、被災別の行動、ペットの同伴避難から避難所生活、そして生活の再建まで、あらゆるケースに対応し愛猫と共に災害から生き残るための“サバイバル術”を具体的にご紹介しようと企画しました。

 書籍という形にしたのは、災害時は携帯のバッテリーが切れたり、ネットにデマが流れるなど情報が錯綜したりするため信頼できる防災資料として、さらに被災時の携帯用として活用いただきたいとの思いからです。

また、老舗猫雑誌「猫びより」の編集部に在籍していることもあり、「これは私が猫のための防災本を作るしかない!」とも考えていました(笑)。

応急処置の一例(画像:日東書院)

――“はじめにで「モノより大事なのは想像力」と紹介した理由は?

富田さん:
現代では「防災といえばモノの備蓄」と思いがちで、それ以上のことになかなか考えが及びません。 モノ(備蓄品)は避難生活を送る際に必要なものです。ただこれよりも、避難生活以前の「発災時の危険」を乗り切るための対応を知っておく、どのようなときに避難すべきかの知恵を付けておくなどのノウハウが重要なのではないかと考えました。 

最悪、モノは支援品がくればなんとかなります。しかし、緊急時に対応する知恵やノウハウは、誰にも頼ることができません。 もちろんモノの備蓄も大切なのですが、想像力があればさらにモノもよりも具体的にいろいろなことを揃えることができます。そのような理由からあえて「モノより~」というキャッチフレーズで始めました。

――こだわった点や苦労した点は?

富田さん:
コンパクトな版形で、文字量が多くないデザインです。必要な情報をまとめるのに苦労しましたが、その分読みやすく作れたかなと感じています。

飼い主に一番知ってほしいこと

必要な備えは家によって異なる(画像:日東書院)

――書籍の中で飼い主に一番知ってほしいことは? 

本田さん:
「必要な備えは家によって異なる」ことです。住宅の形態や愛猫の飼育頭数、家族構成などは飼い主によって全て違います。残念ながら「これさえしておけばカンペキ」というマニュアルはないので、その人に合った備えや対策を考えなければなりません。

例えば会社勤めでひとり暮らしの家庭では、家に人がいない時間が長いでしょうから、不在時に災害が起きた場合の猫の安否確認の方法をしっかり考えておくべきです。多頭飼いの家庭では、猫全員をどうやって運ぶのかが課題です。

このようなケース別の備えをフローチャートで確認できるのも本書の特徴です。 また、避難生活を「避難所」だけでなく、どこで送るか様々なパターンを紹介しています。

例えば家の安全が確保できるのであれば、猫にとっても飼い主さんにとっても一番負担の少ない「在宅避難」が適切ですし、猫と同じ空間で過ごせ、ある程度のプライバシーが保てる「車避難」「テント避難」や、どうしてもお世話が難しい場合「猫をあずける」場所や方法なども提案しています。

その飼い主、その状況によってベストな選択をするために、本書でシミュレーションしていただきたいです。

富田さん:
「ペットや飼い主は災害弱者」でしょうか。赤ちゃんを守らなければならないお母さんより、ペットを守らなければならない飼い主さんのほうが災害時は大変かもしれませんので、そのつもりで備えをしてほしいと思います。

ペットや飼い主は災害弱者(画像:日東書院)

災害は突然起こる。そして愛猫を守れるのは飼い主だけだ。咄嗟の際に適切な対応が取れるよう、いま備えをしておくことが重要だろう。

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