ミサイル迎撃の技術でスマートシティに。IoTでニーズ高まる“指揮統制システム”

カテゴリ:ビジネス

  • ミサイル迎撃システム「アイアンドーム」の技術を商用利用
  • 多様化する電力供給を効率的にコントロールできる
  • 「このIoT革命は、少なくとも向こう10年で最も大きな革命」

短期連載イスラエル・リポート第4回。これまで最先端テクノロジーとイスラエルならではの特徴を紹介してきた。

最終回となる今回は、イスラエル軍事技術で世界的にも有名なミサイル迎撃システム「アイアンドーム」の技術を商用展開し、多様化する電力の効率的な供給、いわゆるスマートシティの実現を目指すサービスをリポートしたい。

テルアビブのエムプレスト(mPrest)本社で、ナタン・バラク(Natan Barak)CEOに話を聞いた。

「指揮統制システム」を商用展開

短距離ミサイルの迎撃システム「アイアンドーム」は、前回のリポートにも登場したが、その指揮統制システム(コマンド・コントロール・システム)を開発するのがエムプレスト。

指揮統制システムとは、具体的にはどのようなものだろうか?

ナタン・バラク(Natan Barak)

「まずセンサーが空間に物体を検知したら、それが自国の航空機やドローンのような物か、それともミサイルなのかを判別します。その後、ミサイルの着地点を予測し、空中で迎撃すべきものであれば、迎撃ミサイルを発射する。ケース毎に対応策の選択肢は数百におよび、その制御は1秒以内というスピードで行われます。」

イスラエルは常に隣接地域による攻撃の脅威にさらされており、バラクにはスピードと柔軟性を持った指揮統制システムを、自身の海軍時代も含め20年以上開発・運用してきた実績がある。

そして、なんと私が滞在している間の11月12日に、まさにガザ地区から400発におよぶロケット弾が発射され、アイアンドームで迎撃された。

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エネルギーの多様化でニーズが高まる

エムプレストはこの軍事技術の商用利用に乗り出している。

「太陽光など再生可能エネルギーの選択肢が増え、電力の伝送経路はこれまで2,3通りだったのが、数百万通りに膨れ上がっている。その供給を最適化する仕組みが必要とされています。世界中の電力会社に我々のシステムを導入する機会がある。」

ニュージーランドの大手電力会社ベクターや、ニューヨーク州電力公社(NYPA)に導入され、今もヨーロッパの大手など続々と引き合いが続いている。

サービスイメージ

IoT革命の意味

バラクは自社のサービスを「システムのためのシステム」と呼ぶ。今こそまさに"指揮制御システム"が必要とされる時代の大転換期であると。

「IoTの意味とは、すべてが計測可能になったこと。そして計測したデータを転送することに、コストはかからない。

多くの産業はこの変化をベースに、効率的なサービスを提供できるようになった。電気代は劇的に下げられるし、自動運転や農業もIoTサービスになる。

このIoT革命は、少なくとも向こう10年で最も大きな革命だと、私は信じている。」

サービスイメージ

日本市場へのアプローチも開始した。日本は再生可能エネルギー導入を表明し、自動運転市場のポテンシャルも大きく、特別に力を入れる。

導入まで3ヶ月と手離れが良く、顧客側で柔軟な実装ができることも特徴。ノウハウが顧客側に渡ってしまうことを「クレイジーな考え方かもしれないが」と説明しながらも、その話しぶりには「世の中に必要なものだから使ってほしい」という思いも垣間見えた。

IoT時代に大きく発生するニーズを商機と捉え、極限まで洗練された軍事技術をベースにサービスを開発し、世の中を良くしたいと信じて突き進む、まさにイスラエルのDNAを感じる企業だった。

イスラエルの魅力とは...

さて、今回で最終回となるイスラエル・リポート。

一度イスラエルに行くと、中毒になるタイプの人がいるそうだが、まさに私はそうかもしれない。

最後に最も印象に残ったエピソード。

先に登場した、11月12日夜、400発のロケット弾。
その翌朝、取材は当初のスケジュール通りに行われ、定刻に車に乗る。

運転手さんの家はガザ地区に近く、昨晩はサイレンが鳴り、家族でシェルターに避難したという。

「40秒以内に避難できるよう日頃から訓練している。小学校1年生の娘は、ペットボトルの水だけを手に持って移動した。無事を確認して帰宅したが、結局このような日は皆、朝まで寝つけない。」

考えてみれば当然だった。やれやれ、、、さ、寝よ。とはならない。

運転手のRomanさんは、まったく感情的にならず、むしろ涼しい顔で説明してくれた。

運転手のRomanさん

われわれの日常を脅かすことが目的だからこそ、普段通りの一日を過ごそう。そんな、ある種の矜持。傍目からは見えない精神性が、イスラエルの人たちの中に静かに流れていた。
 

<これまでのイスラエル・レポート>

① 「もう一つの脳」を作る。イスラエルの天才技術者が開発中のすごいモノ

② 起業国家イスラエルを生んだ「ボーっと生きてんじゃねえよ!」の精神

③実は大チャンス! 2020年に日本が“サイバーセキュリティー大国”になるには?

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