ブツブツした膿みが、手のひら・足裏に…「歯の病巣」や「タバコ」が原因かも!

カテゴリ:暮らし

  • 実は日本人に多い皮膚病 
  • “歯”など、意外なものが要因に 
  • 新たな治療の選択肢が! 

数週間のサイクルで再発を繰り返す

病名がほとんど知られていないために、治療が遅れてしまい、患者さんが長く苦しんでしまう…そんな厄介な病があります。「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」はその代表的な疾患のひとつです。

その症状は――.。いつの間にか出来ていた、手のひらや足の裏に出来たブツブツ。手のひらの水ぶくれが気になって、他人の前で手を出せない、痛くて手作業がツラい…。しかも、何か所にも出来ている…。足の裏にあるから水虫なのか? でも、ウミが出てくるし、何だろう…?

一般にはほとんど認知されていない上に、正しい治療法の普及も遅れてきたため、長く症状に苦しむ患者さんもいる、皮膚の疾患です。

「掌蹠膿疱症」は、手のひらや足の裏にウミが溜まった水ぶくれ(膿疱)が、次々と繰り返し出現し、かゆみや痛みを伴うことが多い皮膚疾患です。手のひらや土踏まず、かかとなどに膿疱が生じ、しばらくすると茶色っぽいかさぶたになり、皮といっしょにむけて落ちますが、2~4週間のサイクルで再発を繰り返すうちに、全体に赤みも伴ってきます。初めて「掌蹠膿疱症」を患った患者さんは、水虫が悪化したと勘違いして受診することもあります。膝や肘などに赤みができたり(掌蹠外皮疹)、爪が変形することもあります。

女性に多く、重症のケースも!

ひどくなると、手のひらや足の裏全体の皮膚が赤みを帯び、うす皮がむけたり、ヒビ割れて、痛みを伴います。膿疱が多発した足では、まるでガラスの砂の上を歩くようだといいます。手のひらにたくさんの膿疱があるときなど、買い物でお金を出すときや、握手をする時に躊躇したり、料理や洗い物といった家事が出来なくてつらい…など、患者さんの生活の質が下がってしまいます。

また、患者さんの約10~30%に、胸骨と鎖骨、肋骨や背骨などの骨に炎症が起こり、痛みが生じます。重症になった患者さんの中には、皮膚や関節の症状のため、思い通りに動くことが難しいと言うケースもあります。

男性よりも、女性に2~3倍ほど多く発症するといわれており、40歳代から50歳代に多く認められています。日本における罹病率は0.12%で、患者数は約13万人と報告されています。実はこれは、欧米における罹病率0.01~0.05%の数倍、日本人に多い皮膚病なのです。

“歯”が原因?!

「掌蹠膿疱症」の原因として、以前より様々な要因が指摘されてきました。それがようやく、何が重要なのか、どのように関わっているのか、研究が進められるようになりました。

「掌蹠膿疱症」の約80%の人が喫煙者です。喫煙で悪化がみられることから、重要な要因と考えられています。また、歯科領域における無症状の病巣や扁桃炎、副鼻腔炎(蓄膿症)など、鼻やのどのあたりの細菌をとりまく、過剰な免疫反応がとても重要です。「皮膚病なのに、歯が関係するの?」と意外に感じるかもしれません。

取るに足らないような病巣が、体の離れた部位に別の病気をもたらす現象を「病巣感染(びょうそうかんせん)」といいます。「掌蹠膿疱症」は、この病巣感染がみられる代表的な疾患なのです。このメカニズムの解明の遅れが、「掌蹠膿疱症」の治療法が遅れてきた最大の原因かもしれません。

歯の病巣も扁桃も、ふだんは全くの無症状なので、ふつうなら治療の必要がないものばかりです。しかも、歯の根元の膿み(根尖病巣)や歯周炎もごくありふれた状態です。しかし問題は、この潜在性感染に対する過剰な免疫反応だと考えられています。「自分には虫歯はない」と言う患者さんでも、歯科でのレントゲン検査等によって歯の根元に膿みを閉じ込めていたり、歯垢をためた4mm以上の歯周ポケットなど、病巣が見つかることがあります。

歯科金属はどのくらい関係するの?

歯科金属が原因だという意見もよく聞きます。
ところが、皮膚や骨の症状が重症になった患者さんのなかには、歯科金属をすべて取り除いても治らなかったという方が数多くみられます。

なぜ混乱しているのでしょうか。そして、歯科金属はどのくらい関係するのでしょうか。

1つには、金属パッチテストで陽性となると、それがすぐに掌蹠膿疱症の原因だと思いこまれてしまうことがあります。検査はあくまで検査。血液検査で卵や牛乳が陽性に反応しても全員にアレルギー症状が出る訳ではないのと一緒です。もう1つは、歯科金属を除去した際に歯の治療も行うことも多く、金属除去によってよくなったのか、ついでに行った病巣治療でよくなったのか、区別がつかないことも多いということがあります。

これを明らかにするために、金属を取り除かずに病巣のみを治療する、あるいは病巣治療を行ったのかを明確にして集計すると、歯科金属アレルギーが関係していた「掌蹠膿疱症」は意外と少ないことがわかってきました。逆に、明らかな病巣を残していると、骨や関節の炎症に発展するリスクも指摘されています。

皮膚科の治療と根本治療の両方が大切

無症状である病巣を突き止めるのは容易ではありませんが、耳鼻科や歯科の医師の協力や理解が拡がりつつあります。また、頑固な便秘や下痢など腸内フローラと免疫の関係、糖尿病などの関連も指摘されています。

禁煙と、これらの対策を行いながら、皮膚科的な治療を行うことで、治ることが多いのです。塗り薬には活性化ビタミンD3外用薬やステロイド外用薬がありますが、何を塗るかだけではなく、塗り方がとても重要です。皮膚科の塗り薬は、決してすり込まないこと。めくれかけた皮は取り除かないこと。これらが刺激になり、症状を悪化させます。

痛くて歩けない時は、亜鉛華軟膏をリント布にのばして貼るのが効果的です。これで治らない場合は、紫外線を照射する光線療法やビタミン剤などの内服・注射といった治療も行われます。

しかし、これでも効果不十分な症例や難治例があるのです。原因が何も見つからない例もあります。これまでは、そうしたケースはなかなか症状が改善せず、患者さんにとって心身の大きな負担になっていました。ところが最近、朗報がありました!

11月に「掌蹠膿疱症」治療薬として、日本初の生物学的製剤『トレムフィア』が承認されたのです。生物学的製剤とは、化学式をもつような医薬品ではなく、炎症にかかわる特定の物質のみをブロックする抗体(タンパク質)をバイオテクノロジーで作りだした治療薬。
『トレムフィア』は、「乾癬」や「掌蹠膿疱症」の病態形成に関与する因子を、選択的に阻害する注射薬です。既存治療では効果不十分な患者さんに、新たな治療の選択肢が生まれました。

ヒトには感染しない!

皮膚病で皆さんが気になるのは、ヒトにうつるのかどうか。「掌蹠膿疱症」のウミの中には、細菌はいません。したがって、他の人に感染しません。手足から体のほかの部位に感染することもありません。いわゆる遺伝子病ではありませんので、お子さんへの遺伝を心配する必要もありません。

治癒には7年ほどかかると言われてきましたが、原因を取り除くことができれば1~2年で治る例が約80%にのぼります。しかし、なかなか病名がわからず、治療が遅れるケースもあります。症状が似た別の疾患もありますので、正しい診断が治癒への第一歩。

手のひらや足裏の水疱に不安を感じたら、早目に皮膚科を受診して下さい。

聖母病院 皮膚科部長
小林 里実

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