珍しい“手乗り”ヤマセミ!? 野鳥がどうやって懐いたか聞いた

カテゴリ:暮らし

  • 華麗な“手乗り”を披露するヤマセミが話題!「鷹匠みたい」
  • でも、いつも乗ってくれるわけじゃない…警戒心が強く気まぐれ
  • 飼育員「名前はまだ無い。『ヤマセミ』と呼んでます」 

カワセミでもタカでもありません

みなさんは「ヤマセミ」という鳥をご存じだろうか?
鮮やかな水色の体が特徴のカワセミは聞いたことがあるが、ヤマセミは知らないという人が多いだろう。

しかし、名前が似ていることからも分かるように、ヤマセミはカワセミの仲間。
白黒のまだら模様と頭に長い冠羽を持ち、警戒心が強いため滅多に観察できないとして、バードウオッチャー憧れの鳥ともいわれる。

日本で唯一、飼育展示されている井の頭自然文化園(東京・武蔵野市)の公式ツイッターでは、ヤマセミの貴重な捕食シーンや羽を大きく広げた姿を見ることができるが、12月8日に公開されたある動画は、野鳥ファンのみならず多くのユーザーの注目を集めた。

画面左下には手袋をした飼育員の手が見えるが、一体なにが起きたのか? その目で確かめてみてほしい!



うまく来てくれると…「へい!!おまち!!!」

とのコメントとともにアップされた動画には、広げた手のひらを軽く握る飼育員…とそこへ「キャラッ キャラッ」と甲高い鳴き声が響く。
右側から勢いよく飛んできたヤマセミは、なんと手の上に見事着地!
「へい!! おまち!!!」とばかりに吸い寄せられるように手の中に納まった“手乗りヤマセミ”だ。

こんなにも人懐っこいものなのかと驚いたが、続けて投稿された動画では、「しかし、大抵はこんな感じのヤマセミです…」という飼育員のぼやきとともに、口笛で呼びかけてもチラリとこちらを見るだけのヤマセミ。
鳴き声で応えてはくれるが、手の上目がけて飛ぶどころか動こうとせず、最後にはそっぽを向かれてしまった。



この普段のそっけなさとのギャップもあって、約4秒の短い動画は多くのユーザーの心を掴み、7000を超える“いいね”を獲得。(12月11日現在)
「すごい!手乗りが上手にできてる」「鷹匠みたいでカッコイイ」「ツンデレだなぁ」といったコメントが寄せられた。

しかし、そもそもヤマセミとはどのような鳥なのか? タカのように手乗りをマスターするものなのか?
ヤマセミの習性や普段の様子について、井の頭自然文化園・飼育員の木船さんに話を伺った。

警戒心が強いヤマセミ「手乗りのきっかけは体重測定」

ーーヤマセミとカワセミの違いは?

どちらもブッポウソウ目カワセミ科に分類される鳥類で、清流の魚を狙い、水に飛び込んで長いくちばしを使って狩りをします。
ヤマセミはユーラシア大陸から日本にかけて広く分布し、山間の渓流付近に生息しています。
一方のカワセミは、主に川の下流や池といった開けた水辺に棲んでいます。
色鮮やかなカワセミに対して、ヤマセミは黒と白のまだら模様をしていて、これは山の中で光に紛れやすく、外敵から身を隠すためのカモフラージュだといわれています。
体の色もですが、大きさも異なります。ヤマセミの体長は約38 cmで、ハトと同じくらいあります。カワセミと比べると、倍くらいの大きさです。

羽根の模様がきれい

ーーこのヤマセミのプロフィールを教えてください。

幼鳥の時に巣穴から落ちたところを保護され、2006年に井の頭自然文化園にやって来ました。
ヤマセミを飼育しているところは他にないので、名前は付けておらず「ヤマセミ」と呼んでいます。
現在12歳のメスで、体重はエサを食べた前後で変化しますが、だいたい250gほどです。
エサは、フナなどの6~7cmの魚です。大きめの魚を与えると、木に何度も打ち付けて柔らかくしてから飲み込みます。


ーーいつから“手乗り”ができるように?

2年前の2016年からです。きっかけは、健康管理のために毎月行っている体重測定でした。
体重計にの乗せるにも警戒心が強いので網でつかまえていたのですが、それでは信頼関係がゼロになってしまいます。
そこで、ヤマセミとの触れ合いを大切に接し、体重計の上に止まり木を設置して誘導するようにしました。
次第に私にも慣れてきて、体重計にスムーズに乗ってくれるようになり、今では手のひらや膝の上にも乗るようになりました。

11月の体重測定。この時は226gだった。

指をついばむ遊びも「少し痛いけれど我慢」

ーーいつも手に乗ってくれるわけではない?

ヤマセミはとても気まぐれで、呼びかけに反応してくれないこともあれば、攻撃的になることもあります。
「野鳥は自らと同じ鳴き声がする方へ寄ってくる」と聞いたので、エサやりの際には鳴き声を真似て口笛を吹き、こっちにおいでと呼ぶのですが、なかなか手には乗ってくれません。
近寄ってくるところを手の上に誘導する、これを繰り返すと乗ってくれます。安定した“手乗り”は、まだまだこれからですね。

また、ヤマセミは賢くて、人を識別することにも優れています。
私が呼ぶと近寄ってきて、時には手乗りもしてくれますが、他の飼育員には威嚇するような様子を見せることもあり、対応の違いから知能が高いのだなと感じます。


ーー羽根を広げるポーズの意味は?

朝に展示部屋を訪れると、鳴き声を上げながら興奮気味に大きく羽根を広げます。
威嚇しているわけではないようで、飛びかかっては来ないので、彼女なりの朝の挨拶だと思っています。
ちなみに、羽根の中が茶色いのはメスの特徴で、オスは胸に茶色があります。



気まぐれなヤマセミの好きな遊びは、木船さんの指をついばむこと。
他の鳥類と比べて脚が貧弱なヤマセミは、狩猟やコミュニケーションの能力がくちばしに集中しているため、くちばしで手を突いて触れ合うことを楽しんでいるのだという。
「少々痛いのですが、良い運動にもなっていそうなので、我慢です」と革手袋をつけて一緒に遊んでいる。

普段は、展示部屋の上部にある梁に止まっていることが多いというが、エサやりの時間になると降りてくるので、その姿をじっくりと観察することができる。
取材した11日もご機嫌で魚を食べて、来園していた幼稚園児たちを楽しませていたそうだ。
間近でヤマセミを見たいという人は、エサやりを公開している毎週日曜日の13時過ぎを狙って会いに行ってみてはいかがだろうか。

下から見上げるとカッコイイ!
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