幼児教育無償化 国vs地方バトル第2章 自治体間で格差発生?

カテゴリ:国内

  • 無償化の財源めぐり政府が妥協案提示
  • 負担に差?財政に余裕ある団体は不利?
  • 自治体によって無償化対象が異なる事態も?

幼児教育・保育無償化 バトルの経緯

安倍政権の看板政策の1つで、去年の衆院選の公約として高らかに掲げられた「幼児教育・保育の実質無償化」。しかし来年10月のスタートまで1年を切った今、その費用負担をめぐって政府と地方自治体との間で深刻な対立が起こっていることは、先にお伝えした。

【関連記事】「論外だ!」幼児教育無償化費用で国vs地方(11月26日)

政府は、消費税率の引き上げに伴う増収分が地方にも還元されることを踏まえ、一定割合を地方も負担することを求めているが、地方側は「聞いていない!」「そもそも国の政策だ!」などと反発。政府は事態の打開を目指し、11月21日に担当4大臣(宮腰少子化相、石田総務相、柴山文科相、根本厚労相)と全国市長会など地方3団体との協議を行ったが、議論は平行線をたどった。今回はその続報をお伝えする。

政府が提示した妥協案は…

対立がこのまま続いていては、来年の無償化実施に大きな影響が出るとして、政府は先月末、地方の主張に“折れる”形で、新たな案を再提示した。

全国町村会に向かう宮越少子化相(11月29日)

上の写真は11月29日、新たな提案を説明するため、全国町村会に自ら出向いた宮腰少子化相の姿をFNNのカメラが独自に捉えたものだ。

会談を終えた宮越少子化相(11月29日)

こちらは、終了後に町村会関係者らから見送られる宮腰少子化相。1週間前には真っ向から対立していたとは思えない、穏やかな雰囲気がうかがえる。

政府の妥協案は、前回提示した「初年度分に限り、無償化に必要な経費と事務費の全額を国が負担する」のに加え、「翌年度分も国が全額負担する」「たに無償化の対象となる認可外保育施設などは5年間(2023年度まで)国が全額負担する」というものだ。

さらに、この認可外保育施設などについては、国の費用負担を2分の1に引き上げ(当初提案は3分の1)、都道府県と市町村の負担をそれぞれ4分の1に引き下げる(当初提案は3分の1)ことを提案した。

加えて、無償化実施の2年後に制度の在り方について見直しを行うという「見直し検討規定」を設けるほか、認可外保育施設の質の確保などの課題について国と地方で協議する場を年内に設置することを呼び掛けた。

妥協案でどう変わった?

政府の当初案と新たな妥協案の比較をまとめると、以下のようになる。

あわせて、現在は無償化の対象となるベビーシッターについて指導監督基準が存在しないが、根本厚労相は「ベビーシッターについては基準の創設も含め、無償化の施行に向けて検討していきたい」と述べるなど、保育の質の担保に向けた制度設計を進めると強調している。

地方側は妥協案に「一定の評価」も「格差」の課題が…

幼児教育・保育の無償化に関する国と地方の協議(12月3日)

この新たな妥協案を提示後に開かれた、担当4大臣(宮腰少子化相、石田総務相、柴山文科相、根本厚労相)と全国市長会など地方3団体との2度目の協議。

国と地方の協議であいさつする宮越少子化相

地方側は、国の妥協案について「一定の評価はできる」として、いったん各団体で持ち帰って意見集約を図り、対応を決めることにした。今月中旬にも予定されている、地方自治に関係する国の政策などについての協議の場で対応を示すことにしている。

この妥協案に関して、地方3団体の1つ「全国市長会」が課題としてあげているのは、財政に余裕がある都市の負担が重くなり、ほかの自治体と負担の格差が出る点だ。妥協案で国庫負担が引き上げられた分は、国からの地方交付税で賄われるが、財政に余裕があるため普通地方交付税が交付されない自治体「不交付団体」は、自己負担せざるをえず、不公平感が出るというのだ。この点については今後、各地方団体で対応を検討することにしている。

また地方側は、指導監督基準を満たしていない認可外施設も無償化対象になることから、地方側は「保育の質が担保されない」と引き続き懸念を示している。年内に設置が予定されている無償化についての国と地方の協議の場で、認可外保育施設の質の問題について議論することにしている。

新たな問題…自治体によって無償化の範囲が異なる?

こうした保育の質に関する地方の懸念に対応するため、根本厚労相は、無償化の対象となる認可外保育施設などの範囲を、地方自治体ごとに条例で定められるようにすることを検討する考えを示した。

根本厚労相の記者会見(12月4日)

これを受け、ある市長は「わが市では、指導監督基準の存在しないベビーシッターについて、無償化の対象外にしようと思う」と述べるなど、自治体によって無償化される保育サービスの範囲に差が出る可能性がある。

無償化により、あまねく子育て世帯の負担が軽減されることを期待したいが、住んでいる地域により差が生じることになれば、当初の想定と異なるうえ、子育て世帯の理解も得にくいだろう。思わぬ形で難航している幼児教育・保育の無償化。この先の議論に注目したい。

(フジテレビ政治部 首相官邸担当 山田勇)


取材部の他の記事