「いいもの見せてあげようか…」壮絶!常態化する介護現場のセクハラ被害【北海道発】

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「仕事だから言えない…」“常態化“する介護現場のセクハラ

2018年は財務省幹部のセクハラ問題や、スポーツ界のパワハラなど、様々なハラスメントが注目された1年だった。しかし、いまだ深刻な被害を受けながら、訴えることが難しい人たちが世の中には存在する。それが、「介護現場」で働く人たちだ。2018年、北海道が行った調査では、特別養護老人ホームで働く介護職員の54%が、「セクハラや暴力の被害を受けた」と回答。介護現場で何が起きているのか?なぜ声を上げられないのか?

デイサービスで働く30代:
“おれの下半身見て喜んでる“とかいう言葉であったり、胸であったり、下半身であったりあからさまに体に触る。わざとやっているのが分かってるんで…

 デイサービスを行う事業所で働く、介護職の30代の女性の証言だ。セクハラ被害は、現場で常態化していた。

デイサービスで働く30代:
言葉もあるけど、直接体に触ったりは日常茶飯事で、普通にありすぎて。(被害者は)たくさんいます。介護職やっている人は1回以上は受けていると思う

ホームヘルパー(訪問介護員)として働く40代の女性も、セクハラ被害に遭っていた。彼女は最近、仕事中に70代の男性から、アダルトビデオを見せられたというのだ。

ホームヘルパー(40代):
“いいもの見せてあげようか“と、テレビをつけ出して、アダルトビデオをつけた利用者様がいた。“やめてください“とは言ったけど、その言葉を言った後に音を大きくしていった。力だったら負けるんじゃないかとか、押さえられたり、怒らせすぎて首絞められたりとか、そういうことがあった時、怖いですよね。密室だから

ヘルパーとして働くこの女性は、被害を受けても、サービスの利用者に強く抗議することは、心理的なハードルがあるという。

ホームヘルパー(40代):
“抱きしめたくなる“と言われて怖くなって、どうしよう、どうしようと思ったけど、仕事が終わるまで、やっぱり仕事で来たからには、やっぱり帰れないかなって。“人をばかにしているな“って思っても、(利用者本人に)言えないですよね。そう思っても、仕事だから言えないですしね

セクハラ・暴行被害 54%が「受けたことある」

北海道が2018年行った実態調査では、特別養護老人ホームの介護職員のうち、「利用者からの性的嫌がらせや、暴力行為などを受けたことがある」と答えた人は54%にのぼり、利用者からのハラスメントは、多くの職員が抱える悩みであることがわかった。介護職員は、高齢者という社会的弱者を守る立場。 そのため、ハラスメントを拒絶するために押し返すなどの行動は、虐待として扱われる恐れがあるという。

ホームヘルパー(40代):
高齢者を虐待しているのではないかと…、でも、私はこういう風にされたとか、こういうふうに言われたと言っても、やりすぎなんじゃないかとか、どこまで正当防衛だったのかとか、最終的にそういう話になっていくかもしれないし…

身を守るための方法が分からないと語る現場の職員。一方、指導する北海道は、重大な問題としながらも、施設で対応を考えてほしいとしている。

北海道保健福祉部福祉局 施設運営指導課 秋田裕幸さん:
これだけ多くの介護職員の方が、(利用者からのハラスメントの)経験があると答えているので、非常に重要な内容だと問題意識は持っています。介護する方が利用者の暴力があったので暴力で返したとなると身体的虐待になるから、事業者としての事故となる。施設としての工夫をするよう求めていきたい

自らも介護職員への聞き取りを行い、ハラスメントの実態を調べている淑徳大学の結城康博教授は高齢化がさらに進む前に、真剣に対策に取り組むべきだと訴える。

淑徳大学 結城 康博教授:
今後、団塊世代の方が85歳になってくると、かなりの要介護者が在宅で1人暮らしという問題もありますから、ヘルパーさんの被害は増えていくと予想される」

「ある程度は致し方ない」…“例外“と考える人も

そもそも介護職は、人手の確保が難しい職種だ。特別養護老人ホームなどを対象に行った調査で、道内の66.8%の事業所が「人手不足」と答えた。結城教授は、ハラスメント対策は、職員を確保するためにも重要だと話す。

淑徳大学 結城 康博教授:
いま介護現場は人手不足で、若い人がせっかく介護職についたのに、利用者や家族によるセクハラ・パワハラで辞めてしまう例も全国的にあがってきています。ですから、利用者側のセクハラやパワハラ問題にしっかりと取り組まなければ、結果的には介護人材不足対策になりません

2018年、改めてクローズアップされたハラスメント。
しかし、介護現場でのセクハラについては、“例外“と考える人も少なくない。

デイサービスで働く30代:
職場で話してみたら“もうそんなの日常茶飯事だから自分でなんとかするように“、“触られるだけまだましだよ“、と言われたことがあって、それはないよと思いながら。そういうふうに考えている人がいる限り絶対だめだと思うので…

防止のカギは?動き出した介護現場

ハラスメントを防ぐために、動き出した現場がある。札幌市の特別養護老人ホーム・西野ケアセンター。11月、職員向けに初めてハラスメントに関する研修を始めた。

西野ケアセンター 石井和枝サービス課長:
お尻触ったらだめだよ、だめなものはダメって言っていいのだけれど、私の手際が悪いからそうなっちゃったとか、そんな事はあり得ませんので。一人で、私が悪いのだとか、私が我慢すればいいのだなんて思わないで、声をあげていただきたいと思います

研修会では、ハラスメントを受けたと感じたら、一人で悩むのではなく、会社に相談すれば、組織として対応していくことを職員に伝えた。

研修に参加した職員:
自分が悪いなと思ってしまっていたので、そうじゃないと、今回の研修で感じた」「わたしも部下がいるので、部下のことも守っていかないといけないし、私自身も守られる立場にあると再確認できた

しかし、介護現場でのハラスメントについて、加齢や病気によるものなら仕方がないと感じている人も少なくない。淑徳大学の結城康博教授は、介護職員と事業所側、双方の意識を変えていく必要があると考える。

淑徳大学 結城康博教授:
多少のハラスメントがあっても、これをある程度かわすことが専門職ではないかという認識を持っているヘルパーさんもいるが、ハラスメントはよくないことですので、多少のハラスメントだとしても、すぐ上司に報告するなり、もしくは家族とか、関係機関に報告して、一人で抱え込まない、ヘルパー側の問題意識が大事。そういう悩みを持った介護職員がいたら、同僚や上司は兆しをしっかりと認識して、組織として対応していくことが非常に大事なこと

利用者の様子を家族に“写真“で報告 狙いは?

この施設では3年前から、利用者の普段の生活を、写真を添えて家族に伝えている。

職員:
「失礼します。こんにちは」「いつも笑顔であいさつしてくれます。最近ちょっと少しずつしか食べられなくなっちゃったからね」「また何かあったら報告します」

利用者の家族:
「安心して帰れますよね。みなさん明るく介護されていて、特別問題ないと思います。みなさん優しいですよね」

写真を添えるのは、ハラスメントを防ぐ狙いもある。言葉で伝えても、家族がハラスメントの事実を信じてくれないこともありますが、写真や動画を見せることで、客観的に状況を理解してもらうことができる。職員と家族が、一緒に対応を考えることが理想だ。

淑徳大学 結城康博教授:
何がハラスメントなのかということを、職場全体で共有して、そしてハラスメントも実は利用する側もハラスメントの加害者になるんだということをしっかりと契約時に説明することで、利用者側もハラスメントを、させないということも大事なんではないでしょうか

ようやく明らかになった介護職へのハラスメント。現場で、社会で、なかったことにしてはいけない。 被害に遭った女性は訴える。

デイサービスで働く30代:
介護する側も、もっと頑張れるような現場を作らないと、離職する人ばかりで、何か手立てをしないとたぶんもう介護現場はもう間に合わないと思います。現実を家族や施設全体で、きちんと取り上げてほしい

北海道文化放送

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