実は大チャンス! 2020年に日本が“サイバーセキュリティー大国”になるには?

イスラエル「HLS&CYBER2018」リポート

カテゴリ:ワールド

  • イスラエルで開催された「セキュリティーの見本市」を取材
  • 「ドローン」と「顔認証」をアピール
  • 「訓練」や「教育」のサービスも充実

東京オリンピックに向けて、我が国のセキュリティー対策は大丈夫なのだろうか?

漠然とした不安はあるものの、サイバー領域は専門性が高く、一般人には正直よく分からない。

FNN.jp編集部は去る11月、サイバー大国イスラエルを訪問し、2年に1度開催されるサイバーセキュリティーの国際展示会「HLS & CYBER 2018」を取材した。

2020年に向けて、日本でも着々と準備が進むサイバーセキュリティー対策。いったいどんなポイントを押さえれば良いのか? イスラエルの最新事情を元に紐解いてみたい。

セキュリティーの見本市

Tel Aviv Convention Center

2018年11月12日から15日の3日間、イスラエルの商都テルアビブで開催された「HLS & CYBER 2018」。

サイバー分野に特化した、HLS = Home Land Security(国土安全保障)、つまりはセキュリティーの見本市で、およそ160社が展示を行い、カンファレンスでは政府関係者が次々と登場しスピーチを行う。

Adiv Baruch

イベントのチェアマンでイスラエル輸出国際協力機構のAdiv氏はオープニングのセッションでこう語る。

「2018年、マルウェア(悪意のあるソフトウェア)は800億件以上生まれ、今も毎月100億件以上生まれている。直近5年に目を向ければ、全世界で830億ドル以上がサイバーセキュリティー対策に費やされ、被害総額は2.43兆ドルにのぼる」

そして、1,000社を超えるイスラエルのサイバーセキュリティー企業が、この世界を守っていくという。

この先も尽きることのないニーズ。業界をリードしている自信。何よりビジネスとして鉄板であることが理解できる。

「ドローン」と「顔認証」をアピール

会場を見渡すと日本人はごく少数であるが、イスラエル企業はもちろん2020年の東京オリンピックも視野に入れているようだ。ひときわ目立っていたのは「ドローン」と「顔認証」だった。

RAFAEL社のDroneDome(ドローンドーム)

2015年4月、首相官邸の屋上にドローンが落下したニュースも記憶に新しいが、来るオリンピックで超満員のスタジアム上空に不審なドローンがゆうゆうと浮遊していたとしたら、恐ろしいことだ。

写真はドローンを検知するシステム、Drone Dome(ドローンドーム)。

RAFAEL社(ラファエル・アドバンスト・ディフェンス・システムズ)はイスラエルの軍事・防衛関連企業大手で、短距離ミサイル防衛システム「Iron dome(アイアンドーム)」の開発元である。

アイアン ドーム (Iron Dome)

アイアンドームはその名の通り、鉄のドームとなりミサイルを迎撃する。この運用実績を元に新たにドローン検知システムとして開発されたのがドローンドームだ。

PERCEPTO社のドローン
PERCEPTO

また、PERCEPTO社のドローンは人の動きを自律的にトラッキングする。逃げる人間をドローンがどこまでも自動追尾する様は、ディストピア感さえ漂うが、この技術をスポーツ中継に応用すれば、これまでにないクリエイティブな表現が可能になるだろう。

Any Vision

顔認識システムのAnyVisionは、群衆の中から瞬時に特定の顔を抽出する。半導体メーカー大手NVIDIAと提携することで、正確で速い処理を実現する。

BriefCam

BriefCamは映像を要約する技術で、性別や服の色など特定の条件に該当する箇所を抽出する。これまで何時間も要していた監視カメラ映像の目視チェック作業を短縮する事が出来る。今年5月にキヤノンに買収されている。

ドローンや監視カメラなど物理的なサービスはフィジカルセキュリティーと区別されることもあるが、それではサイバー空間ではどんな対策が必要なのだろうか?

サイバーセキュリティーは「訓練」と「教育」が大切

イスラエル電力公社によるジョイントベンチャーCYBERGYM社は、電力など重要インフラを運営する企業向けに、模擬的にサイバー攻撃を発生させ、訓練できるサービスを提供している。

CYBERGYM社のサイバー訓練(YouTube)

既に日本にも進出し、日立などの企業が実際にサイバー訓練を行っている。

少し意外だったサービスが、非技術者向けにサイバーセキュリティー教育を提供するCybint。

Cybint

専門性のある高度な技術だけでなく、一般向けに実践的なノウハウをe-Learningとハンズオン形式で教えていく。例えば、初歩の初歩であれば、ハッキングされにくいパスワード設定について学ぶ。既に同様のサービスがありそうな気もするが、「ハッカー側の考え方」を体感できるなど、イスラエルのノウハウが凝縮されている。

高度な技術が並ぶ会場で、初見では少し拍子抜けしたのだが、結局のところオリンピックのような国民的イベントにおいては、こうしたアプローチが最も有効だと腑に落ちた。

平昌五輪でも様々なサイバー攻撃が発生しているが、多くはいわゆる「標的型メール攻撃」、つまり添付ファイルをクリックすることで感染している。もちろん、高度な技術を駆使するハッカー集団の攻撃もあるが、実は古典的な手法で、開催時期のかなり前段階でウイルスが潜伏し、当日に活動を開始するのがよくあるパターンのようだ。

日本がサイバーセキュリティー大国になるには...

2020年の東京オリンピックで過去最大級のサイバー攻撃を受けることは、ほぼ間違いないだろう。

ただしその後は、大会を通じて蓄えたサイバーセキュリティーのノウハウを世界中にセールスする事ができる。

必ずしも天才的なアルゴリズムを発明する必要はなく、実績をベースに洗練された使い勝手の良いサービスを提供できれば、世界中にニーズはありそうだ。日本はこの機会をチャンスと捉えて前向きに取り組むことで、サイバーセキュリティー大国になれる可能性も大いにあると感じた。


帰国後このレポートをまとめながら、まだ開封していなかった情報システム部からのサイバーセキュリティー対策メールをクリックし、一人勝手にものすごく高い意識でe-Learningに取り組んだのだった。(20点中16点でギリギリ合格)

<これまでのイスラエル・レポート>

① 「もう一つの脳」を作る。イスラエルの天才技術者が開発中のすごいモノ

② 起業国家イスラエルを生んだ「ボーっと生きてんじゃねえよ!」の精神

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