「ああ、死ぬんだ私」児童虐待被害者が語る“現実”…絶望から救った“希望の光”とは?【北海道発】

カテゴリ:国内

  • 「死ぬ覚悟をした」…被害者2人が語る児童虐待
  • 虐待テーマの映画原作者が語る「前向きな力」とは?
  • 「子供のサイン見逃さないで」…被害者が伝えたいこと

児相の相談件数4倍に…被害者2人が語る“虐待”

北海道内では、児童相談所にこの10年で4倍の相談が寄せられているという。身近にある児童虐待を防ぎ、そこから立ち直るには何が必要なのか。そして虐待は、どのような現実が待ち受けているのか。2人の被害者が語った。

札幌の50代、佐藤さん(仮名)。妹と両親と暮らす生活の中に「暴力」があったという。

佐藤さん(仮名)は幼少期には父から、成人してからは母から虐待を受けた。

佐藤さん(仮名):
小学校にあがる前、夫婦げんかの果てに母親がぼこぼこにやられて、血まみれになった母親を何度か目撃しているんです。そういうことされたから(母も)性格ゆがんじゃったのかな。

父親は佐藤さんにも「しつけ」と称し、腕や足の見えない部分を殴っていたが、高校生のころ、母親の浮気を疑い、包丁を持ち出したことも…。

佐藤さん(仮名):
台所に行って包丁を持ってきて、テーブルにドンと刺して、(浮気のことを)言わないなら、お前らを殺して俺も死ぬ!ああ、死ぬんだ私ってその時は死ぬ覚悟をした。
私の小学校の「生きているうちに家を出たい」って夢はここで途絶えるのか…と。

子育て中に、虐待の連鎖を感じる場面もあったという。

大学へ行く希望は聞き入れられず、成人したころから母親の言葉の暴力が始まった。夜中に家を飛び出したものの、心の病も発症。26歳で結婚し、子育てをしながら虐待の連鎖を実感する瞬間もあったという。

佐藤さん(仮名):
結局、私も一時期だけなんですけど、娘に手を上げたことがあって…。自分がされてあんなに嫌だったのに、しちゃいけないと思っていたけど、意識していてもしてしまうから、こういうのは繰り返すのかなと…。

函館市の40代、なこさん(仮名)も、虐待を経験した一人だ。子どもの頃によく訪れた五稜郭公園。しかし、良い思い出は残っていないという。

函館市の名所、五稜郭公園。なこさん(仮名)にとっては良い思い出はない。

なこさん(仮名):
(親に)遊んでもらった記憶はない。遊びに夢中になっていると周りが暗い。恐る恐るチャイムを鳴らすとチェーンがかかっている。「約束したでしょ、外にいなさい」と。
夜になって入れてもらえて説教されて…、じゃあ(遊びに)出ない。家にいる。友達減っていくし、そこらへんからこじれていったかな。

“しつけ“の範囲を超えていると気づいたのは、小学校に入り友達と話をしてからのこと。父だけでなく、母からも心理的虐待と感じさせる態度が続いたという。

なこさん(仮名):
母は父の味方。母は「怒られるのはあなたが悪いからでしょ」と。何でも「自分で考えなさい」と。(私は何が悪いか)わからないから聞いているのに、なぜ考えなきゃいけないの? この人たちに何を言っても無駄なんだと…。

「母は父の味方」。心理的な虐待が続いたという。

虐待テーマの映画原作者「前向きな力」伝えたい

11月16日から全国で公開された映画「母さんがどんなに僕を嫌いでも」。主演の太賀さんと吉田羊さんが、北海道・江別市内の映画館で舞台挨拶に立った。

太賀さん:
(見た人に)ちょっとした希望や勇気を与えられると確信して、この映画に参加しています。

「希望や勇気を与えられる」と、主演の太賀さん。

吉田羊さん:
人間同士きちんと向き合って逃げずにいればきっとわかりあえる。思考転換をしてポジティブに生きていける背中を押す作品になっています。

情緒不安定な母親を演じた、吉田羊さん。

映画は、吉田羊さん演じる情緒不安定な母親が、長男のタイジにいらつき、言葉や暴力をふるう虐待をする。17歳で家を飛び出したタイジは、幼いころに支えてくれた工場の婆ちゃんからの優しさに触れ、会社の同僚や友人とも出会い、心を通わせる幸せを感じるように。母親をいまでも好きでいることに気付き、再び母と向き合う道を進むというストーリー。

原作者の歌川たいじさんの体験をもとに映画化されたこの作品。札幌で開かれた講演会には大勢の人が集まった。
映画原作者の歌川さんが、全国を講演で周り伝えたいのは、「前向きな力」だという。ゲームの“ライフ”(体力、生命力、耐久力など)を例に出してこう表現する。

まんが家・歌川たいじさんの体験をもとに映画化された。

歌川たいじさん:
(ゲームで)ライフがいっぱいある時、少ししかない時と生活が変わってくる。ライフがいっぱいある時に気付くことや、ライフがないと気付かないこともあるので、ぜひ一個、私の言葉でライフを増やしたい。

児童福祉司の人数が足りている状況でない

増え続ける虐待に、札幌市の児童相談所では…

札幌市 児童相談所 岸政明地域連携課長:
2017年度は、約1900件の児童虐待が認定されています。10年前にさかのぼると500件くらい。この10年で約4倍の増加という状況です。地域から孤立しているとか、世代間の分裂で、養育のサポートをうまく受けていない家庭が多くなっているということは、都市部の傾向としてあると思う。

虐待が認定された場合、児童相談所が面接指導するのが約9割。しかし課題もあるという。

札幌市 児童相談所 岸政明地域連携課長:
これだけ虐待認定件数が増えて、子どもたちを将来にわたって支援したり、家族再統合をしていったり、それはすべて児童福祉司の仕事。(対応する)人数が足りているとは決して言える状況ではない。

「人数足りているとは言えない」認定件数が増える一方、対応人員に限界がある。

“希望”があったから…被害者が伝えたいこと

幼少期の頃から、両親からの虐待を受けた札幌の佐藤さんにとっての希望は…。

佐藤さん(仮名):
母の友人で、私のことをすごくかわいがってくれるおばさんがいた。学期の休みのたびに家においでと言って、一週間くらい泊めてくれた。家では味わえない、母のようなぬくもり、気持ちの大きな人でした。

母の友人の「おばさん」に救われた佐藤さん(仮名)。

おばさんがいなければ、いまの自分は無かったという佐藤さん。地域の力の必要性を感じている。

佐藤さん(仮名):
近所付き合いが薄い世の中ですが、子どもたちを地域で育てる意識もあったらいいのかな。

函館のなこさんの場合は、34歳の時に出会った夫が、希望の光だった。

なこさん(仮名):
父親に甘えたかったけど、甘えられなかったのをこの年になってさせてくれている。「お前はお前だよ」と。一人の人間として生きてていいと認められた気がして、(夫の)懐の深さには感謝しています。

いま必死に耐えている人に伝えたいことは…。

なこさん(仮名):
どんなにおとなしい子でも絶対サインは出している。そのサインを見逃さないで。つらかったら言葉にして助けを求めてほしい。殺伐とした世の中だけど絶対に味方はいる。だからつらい時は助けを求めてもいい。いろんな形で消えて行った小さな命が、これ以上増えないよう願うだけです。

「言葉にして助けを求めて」。なこさん(仮名)は呼びかける。

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