別格扱いだった習近平国家主席

カテゴリ:ワールド

  • APECが史上初めて首脳宣言を採択できないまま閉幕
  • 中国流の支援事業を地元住民称賛「China is the best!」
  • 日本大使館の真横にも習主席の歓迎看板が…

ペンス副大統領が「痛烈批判」背景は

パプアニューギニアで開催されたAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議が史上初めて、首脳宣言を採択できないまま閉幕した。米中の隔たりを最後まで埋められなかったためだが、首脳会談開幕前の演説から対立が際立っていた。

演説で中国の習近平国家主席が、「保護主義と一国主義が世界経済に暗い影を落としている」などと、名指しを避けつつもアメリカを批判したのに対し、直後に演台に立ったアメリカのペンス副大統領は「中国が不公正な貿易を改めるまでアメリカは行動を変えない」「独裁主義と侵略はインド太平洋地域に居場所はない」「中国が近隣国の主権を尊重し、自由・公正で互恵的な貿易を支持し、自由と人権を守るならば、我々のビジョンである『自由で開かれたインド太平洋』で名誉ある地位を受けられる」などと、強硬発言を連発した。

国際会議の場で、名指しでここまで他国を批判するのは極めて異例だ。今年のAPECでは一気に米中対立に焦点が集まった。

左:中国 習近平国家主席   右:アメリカ ペンス副大統領

アメリカが中国をここまで痛烈に批判するのは、貿易問題をめぐる不満もさることながら、中国が提唱する「一帯一路」構想をテコとした影響力拡大がもはや軽視できないものになっていることの裏返しだ。

ペンス副大統領は演説で、オーストラリアがパプアニューギニアのマヌス島で進めているロンブラム海軍基地の増強計画にアメリカも協力する方針を示した。またその翌日には日米豪ニュージーランド首脳はパプアニューギニアの電力供給に協力する共同声明に署名した。途上国のインフラ投資で台頭する中国を念頭に置いたものといえ、海軍基地の件と合わせ、いずれも中国への対抗意識がにじむ。

「China is the best!」地元住民も称賛

「この道路は『中国港湾エンジニアリング』が建設したものだ」
「この道路のおかげで我々の生活はとても良くなった」
我々のガイドは、中国企業が建設した道路を通るたびに称賛、感謝の言葉を口にし、「China is the best」とまで言っていた。

パプアニューギニアの首都ポートモレスビー中心地では、中国の援助で建設された、もしくは建設が進んでいる道路や建物を目にすることができた。「CHINA AID(中国援助)」という文字や漢字で大きく企業名やスローガンなどが書かれているため、すぐに中国案件とわかる。
建設に関わる中国企業関係者が多いためか、東洋人は中国人に見えるようで、我々が街の市場を歩くと子供たちが「ニーハオ、ニーハオ」と声をかけてきた。

圧巻だったのは、パプアニューギニア議会につながる6車線道路だ。約1kmの道路には中国とパプアニューギニアの旗がズラリと並んでいた。一般国民の生活道路ではなく、ほぼ政治家専用になるであろう立派な道路を造ってあげたのは中国流支援事業ならではだろう。

中国が掲げる「一帯一路」の支援では、「いかなる政治的条件も付けない」ことを売りにしている。言い換えれば、日米や西欧諸国の支援のように、自由、民主主義、人権など細かい注文を付けることはなく、被支援国の政権が欲しいものを造ってくれるのだ。

日本大使館真横に習主席歓迎看板

しかし、この中国流の支援が途上国においては効果てきめんであることを思い知らされた。

出席した21の国・地域のリーダーの中で、中国は明らかに別格な扱いを受けていた。
習氏は一番乗りの形で、APEC首脳会議開幕前にパプアニューギニアを公式訪問し、この6車線道路の引き渡し式や、中国の支援によりつくられた学校などを回った。この間、パプアニューギニアのオニール首相はずっと習氏に付き添い、歓待し続けた。

街の中心部には習氏を歓迎する巨大パネルが設けられていた。しかも、その場所は奇しくも日本大使館の真横。主要国の首脳クラスが集まるにもかかわらず、このようなパネルが作られていたのは習氏のものだけだ。

看板の左にあるのが日本大使館

パプアニューギニア取材に行った我々にとって、現地での中国の存在感は想像をはるかに超えていた、というのが正直な感想だ。もちろん中国による援助が現地の人々の生活を豊かにするものであれば喜ばしいことだ。

しかし、元々ユーラシア大陸を中心とした経済圏構想だった「一帯一路」は、もはや現在、範囲を世界中に拡大しており、中国の国際的な影響力向上に大きな役割を果たしているのは間違いない。この影響力をどのように行使し、何を目指しているのかが見えないことに国際社会が不安に感じていることを中国自身も認識してほしいと思う。

(執筆:FNN北京支局長 高橋宏朋)