【中国トンデモ事件簿】マラソン選手がレース中に国旗を落として批判殺到「国旗と成績どっちが大事?」

カテゴリ:ワールド

  • レース中の選手に国旗を押し付け批判が殺到
  • 他の大会でも同様の慣例が・・その理由は
  • 運営側「ゴール前に国旗渡す慣例変えない」

中国で行われたマラソン大会で、優勝争いのデッドヒートのさなかに沿道スタッフがコースに”乱入“し、中国の選手に中国国旗を渡した。選手はその国旗を一度受け取るものの、直後に落としたことに批判が沸き起こり、謝罪する事態になった。しかし、旗を渡した運営側の説明に、さらに批判が高まっている。

レース終盤のデッドヒート!その時コースに乱入したのは

国旗を渡そうとコースに乱入 ~上海テレビニュースより

11月、江蘇省蘇州市で行われた国際マラソン大会。ゴールまで数百メートルの場所で、中国の女子選手とエチオピアの女子選手が熾烈な優勝争いをしていた。すると沿道から一人のボランティアスタッフがコースに飛び出し、中国選手に中国国旗を渡そうとした。この時は渡せずに選手は走り去ったが、まもなく、別のスタッフがコースに現れて、再び中国国旗を手渡した。エチオピア選手は、突然現れたスタッフを避けて走らざるを得なかった。これらはまさに優勝争いの、ラストスパートの場面で起きた事態だった。中国選手は、しばらくして国旗を落とし必死の形相で走ったが、5秒差で優勝を逃してしまった。

まさかの批判に選手は・・・

コース上で国旗を広げ選手に渡すスタッフ ~上海テレビニュースより~

レース後、SNS上では国旗を落としたことが問題視された。中国では国旗を侮辱する行為は罰せられることがある。「国旗を捨てるのはけしからん」と批判の声が上がり、別のマラソン選手が「どんな理由であれ国旗を捨てるのは良くない。成績は国旗より重要なのか?」とSNSに投稿し、波紋が広がった。

中国選手はメディア取材に「ペースを乱されるので最初に現れたスタッフは避けたが、次は目の前に旗を広げて立っていたので受け取るしかありませんでした」と、やむを得ず国旗を受け取ったと説明。落としたことは「捨てたのではありません。国旗は濡れていたし、手もかじかんでしっかりつかめていなかったので落としてしまいました。申し訳ありません」とSNSで謝罪する事態になった。

これに対しネット上では、選手を擁護する意見が多く見られた一方、愛国を理由に他人を批判する行為を「新時代の文革だ」と批判する声も上がった。批判コメントをした選手に対し、「今度あなたがマラソンに出る時は、100本の国旗を渡してあげよう」との批判もあった。

なぜレース中に国旗を渡す?

そもそもなぜ、優勝争いの極限状況でスタッフがコースに入り国旗を渡したのか。当初、運営側周辺からは「スタッフが愛国の気持ちを表した個人の行為だった」との説明があったが、その後説明が変わった。

運営側は「ゴール前に選手に中国国旗を渡すことは、中国のレースでは一つの内容だ。これまで20か所以上で同様のことをしてきたが事故はなかった。今回は雨が降っていて寒く、路面も濡れて滑りやすかったので、このようなことになってしまった。選手には深く謝罪したい」 つまり、国内の他のレースでもゴール直前の選手に国旗を渡し、選手が羽織ったり広げたりしてゴールするようになっていたのだ。現地メディアによると、国旗を落とした選手も1か月前の大会でゴール前に旗を受け取り、広げてゴールしたほか、他の国内大会でもゴール前に旗を渡されゴールする選手の姿があった。 

「国旗を渡す慣例は変えない」

それにしてもなぜゴールした後ではダメなのか?との疑問が湧く。あるネットユーザーは「中国の大会では中国選手は順位に関係なく旗を渡される。生中継の時に効果的だからだ」と皮肉を交えて批判した。国際大会で中国選手が勝利し、誇らしげに国旗を掲げてゴールテープを切る… そんな場面を演出したいという運営側の思惑が見えてくる。その姿は、確かに美しいが、今回の状況で、それはふさわしかったのか? 当該選手はメディア取材に「二度、旗を渡されてペースが乱れました。今後はゴールした後に国旗を渡して欲しいです」と答えた。

しかし、運営主体の責任者は中国メディアに、「中国選手が国旗を羽織ってゴールする場面は感動的だ。国旗を渡す規定は慣例で、変えることは出来ない。国旗をまとってゴールすることは、選手が育ててくれた国家に感謝を表すことだ。今回の大会は大成功で、国旗を渡し選手を邪魔する意図はなかった」とコメントした。

この説明に、ネット上では「変えられない? またやるのか??」「優勝することが最大の愛国ではないか」「一部の人を満足させるために、捻じ曲げられた愛国形式主義が選手を苦しめる」「骨の髄まで形式主義。恥知らず」「選手は国旗を着て試合に参加すればよい」などとする批判が相次いでいる。

スポーツが愛国主義推進の道具に

スポーツは、愛国心が高揚する場だ。日本でも、普段は国旗や国歌を強く意識しない人でも、サッカーワールドカップやオリンピックになると、日本人としての誇りを強く感じることがあるだろう。スポーツを通じて愛国心を強く意識することは決して悪いことではない。しかし今回の問題は、中国では、スポーツが国威発揚、政府の愛国主義推進の道具になっていることをあらためて示している。スポーツ大国の中国に、“選手ファースト”の思想が本当にあるのか、疑問を感じる。

(執筆:FNN上海支局 城戸隆宏)

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