“ゴーンなき日産”はマクロン大統領と戦えるのか?

カテゴリ:ワールド

  • 3社の連携は維持?分裂?それとも合併へ?
  • マクロン氏にとっても自動車は戦略分野
  • 「アライアンスの安定」をめぐる同床異夢

3社アライアンスはどう変わる?

フランスのルノー本社

“ゴーンショック”で気がかりなのはフランスのルノーと三菱自動車との3社アライアンスがどう変わるかだ。そのままか、バラバラになるのか、それとも合併か。それによって連結で14万人近くいる従業員の将来も左右される。

ゴーン容疑者逮捕について会見する日産の西川社長

日産の西川社長は「パートナーシップそのものについて影響する事案ではない」と話し、フランスのマクロン大統領は「アライアンスの安定を注視している」とコメントした。当面は“ゴーンショック”による関係者やマーケットの動揺と不安心理を抑えることが最優先なので、マニュアル通りの発言といえる。つまり、本心は別にあると考えるべきなのだ。

マクロン氏は「物言う株主」

ゴーン逮捕について会見でコメントしたフランスのマクロン大統領

マクロン大統領が早々に出てくるのは、フランス政府がルノーの株式の15%を保有する筆頭株主で、経営にも口をはさむ「物言う株主」だからだ。実際、マクロン大統領はルノーに日産との合併を働きかけたことがあり、それに異論を唱えてきたのがゴーン氏だったという。

ルノーによる日産支配の圧力は、マクロン以前にも度々取りざたされてきたが、大統領本人が露骨に口を挟んでくるという話はあまり記憶にない。

“ゴーンショック”はマクロン大統領にとってチャンス

ルノーが日産株の約43%を保有する資本関係からすれば、話はシンプルだ。
抵抗勢力だったゴーン退場を受け、マクロン大統領がフランス政府の言うことを聞く人物をルノーの経営トップに据える。そして筆頭株主ルノーの圧倒的な影響力を使って日産を支配すればいい。場合によってはルノー主導の合併もありだ。

フランス政府にとっても日本同様、自動車産業は戦略分野だ。すそ野が広い分だけ雇用政策としての利用価値も高い。マクロン氏とフランス労働界の関係はぎくしゃくしている。“ゴーンショック”を自らにとってはチャンスだと見ているであろうことは想像に難くない。

そう考えると、ゴーン退場は日産の選択でもあるが、決して楽観はできない事態だ。
ルノーの出資比率を3分の1未満に下げておけなかったのかなどと考えずにはいられないが、そこはゴーン流の計算もあって、あえて手を付けなかったのかなと思う。

ゴーンを追った日産経営陣の力量は?

1999年 日本語で日本での戦略について語るゴーン社長(当時)

筆者は1999年のゴーン来襲の際は自動車業界担当で、当時は銀座にあった日産本社で行われた日本メディアとの初めてのグループ・インタビューの席にいた。「コストカッターと言われることを自身どう思っているのか?」と質問したら、「好きではないが構わない。やることを見ていて欲しい」と自信に満ちた答えだったことを覚えている。

その後のV字回復につながる取り組みを追いながら、『経営者が代わると会社はこんなにも変わるのか。日本人経営者は無能だったのか?』などと考えざるを得なかった。

ゴーンの暴走はひどい。だがゴーンを追った現日産経営陣の力量は不明だ。
ゴーン前の日産に逆戻りすることはあり得ない。その上で、ゴーンのいない日産はマクロン大統領以下フランス政府からの圧力にどう戦い、日産にとって望ましい状態にアライアンスを安定させるのか。マクロン大統領のいう「アライアンスの安定」は、日産のそれとは全く別物であろうことを肝に銘ずるべきだ。

(執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋)

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