ゴーン容疑者は「特別背任罪」になるのか?元東京地検特捜部副部長の若狭氏が教える“今後のポイント”

  • 6ヵ所ある内、2ヵ所の高級住宅の無償提供が実質的な報酬にあたる可能性
  • 過少記載は会社の事を思った善意か、何かの隠ぺい目的か
  • 虚偽記載だと日産の責任が第一次となるが、特別背任罪だと個人犯罪に

50億の不正受給

日産自動車・川口均専務執行役員:
お騒がせして申し訳ないというところ、それはお伝えしています。(日産は)自浄作用をしっかりと出していく、そういう過程の中にあると考えております。

日産自動車・三菱自動車・ルノーといった、世界的自動車連合のトップを務める、カルロス・ゴーン容疑者の逮捕は世界に衝撃を与えた。ゴーン容疑者は、日産からの報酬をめぐり、代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者と共謀し、過少記載した疑いがもたれている。

有価証券報告書には2015年3月期まで5年間の報酬を約49億8700万円と記載。しかし、実際の報酬は約99億9800万円。いわば隠された報酬として、5年間で約50億1100万円を不正に受け取っていたとみられている。

その隠された50億円の一部が、日産側から無償提供された高級住宅とみられることが分かった。アメリカ・ニューヨーク、オランダ・アムステルダム、ブラジル・リオデジャネイロ、フランス・パリ、レバノン・ベイルート。そして東京。ゴーン容疑者はこれら世界各地で日産側が保有する高級住宅を利用していた。

そのうち、出生地であるリオデジャネイロと、幼少期から高校時代を過ごしたベイルートは、まさにゆかりの地。この2ヵ所の高級住宅は、日産が約60億円を出資して設立したオランダの子会社を通じて購入され、ゴーン容疑者に無償で提供されていたとみられており、この無償提供が実質的な報酬にあたる可能性があり、隠された50億円の一部とされている。

高額報酬の常連から一転、巨額報酬隠しの疑いがもたれているゴーン容疑者。東京地検特捜部は、不透明な金の流れの実態を調べ、事件の全容解明を急ぐ構えだ。

若狭氏「動機が今後の捜査のカギ」

元東京地検特捜部副部長・若狭勝さん

今回の一件に関して、元東京地検特捜部副部長の若狭勝氏にお話を伺った。 
 
――50億の受け取りを隠そうとしたのはなぜ?

若狭氏:
“動機”が何だったのかということが、今回の事件の一番大きなカギといっても不思議じゃないです。他の横並びで社長等の報酬にさげないと、抜きんでてると、日本国内においては色々文句言われるから下げようという、ある意味善意みたいな感じで、会社のことを思って…というのも考えられるし、あるいはもっと仕組まれたものがあって、自分の何らかのものを隠すために、こういう形で過少申告をせざるを得なかったのか。その辺は今後の捜査のポイントですが、いずれにしても現時点においてここが大きい。これからどっちにいくか、分けると思いますね。


たとえば、トヨタ自動車の豊田章男社長の役員報酬額は約3億8000万円となっており、約7億3500万円のゴーン容疑者の半分ほどだ。では、どうやって役員報酬を決めているのか。
日産の有価証券報告書の一部によると、「取締役会議長が各取締役の報酬について、定めた契約などを参考に、代表取締役と協議のうえ決定する」と記されている。

――これだけ見ると、ゴーン容疑者が自分の報酬額を自分で決められるのでは?ガバナンスは機能していた?

若狭氏:
そう思います。それだけ権限が集中していたということですから。
結論からいくと「(ガバナンスは)機能していなかった」面が強いと思います。これだけのことを、かなりの年数にわたって、分からずじまいできてたということだけでも、ガバナンスが足りなかったと言わざるを得ないですよ。

――高級住宅の名義は日産ないしは日産の子会社のものになっている。たとえばゴーン容疑者が会社を辞めた時に、その土地を売って利益を得たとすれば犯罪になる?
 
若狭氏:
少なくとも「特別背任」になるかどうかということについて言うと、まったく業務上は必要がないと。それを、あえて会社の金で購入したという事になれば、それは「特別背任罪」になりうるんですよ。ただ、報酬というのがどの範囲のことまでをいって、特捜部が逮捕に至ったのか。

つまりビジュアル、目に見えるキャッシュ、金額だけで過少記載してたという認定なのか、それとも実質的には不動産を買ってゴーン容疑者が自ら使っていることも報酬だという見方をして、それをひっくるめて過少記載だと特捜部が言っているのか。この辺が今後の大きなポイントになってくると思います。

特別背任罪=個人犯罪に問えるかどうか

1999年度に赤字だった営業利益を、わずか1年で黒字へV字回復させたゴーン流の経営。
EV=電気自動車開発に経営資源を集中投下、日産はリーフの開発で、次世代エコカー市場をリードした。日産・三菱・ルノーの3社連合を組み、去年の合計販売数が初めて1000万台を突破。トヨタを抜いて、2位に躍り出た。

経営者としての高評価の一方で、高額報酬は度々物議を醸しており、日産からほぼ毎年、10億円前後の報酬を受け取っていたとされるゴーン容疑者。2年前、会長を務めるルノー株主総会でも、日本円で約9億4000万円にのぼる報酬案に、株主の過半数が「高すぎる」として反対。フランスでも批判の対象になってきた。

 
――今後の捜査のポイント、ここから先どのように捜査は進展していく?

若狭氏:
やはり「特別背任罪」に問えるかどうか、問える可能性を秘めて特捜部は相当力を入れると思いますね。この虚偽記載だけで終わっちゃうと、日産側からすると不服だと思うんですよ。ゴーン容疑者の個人的な犯罪、特別背任罪は個人犯罪なんですけど、それを特捜部はきちんと立件してもらうことによって、一連のものはゴーン容疑者の不正体質が全部もたらしたものだという画を描けるんですよね。

虚偽記載だけだと、有価証券報告書を出すのは会社ですから、会社の責任が第一次的にあるわけであって、その意味では「個人犯罪をとにかく立件してもらって、落としどころをちゃんと見つけたい」というふうに思います。

 (「プライムニュース イブニング」11月20日放送分より)

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