不正行為の背景は?“日産V字回復の救世主”カルロス・ゴーン容疑者逮捕
- “コストカッター”の異名、日産を約4年で黒字回復させる
- ルノー会長兼社長、日産自動車会長、三菱自動車会長を兼務
- 「全能感が出てきて、人の話を聞かなくなってきたのでは」
日産自動車会長のカルロス・ゴーン容疑者が自らの報酬を過少に申告した疑いがあるとして、11月19日金融商品取引法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕された。
ゴーン容疑者の経営手腕と不正行為が起きた背景に迫る。
付いた異名は“コストカッター”
1999年にフランス・ルノーから当時、経営危機に陥った日産自動車に派遣され、最高執行責任者(COO)に就任したゴーン容疑者。
19年前の1999年にに来日したゴーン容疑者は、「どれだけ多くの犠牲や痛みが必要になるか、私にも痛いほどわかっています。他に選択肢はありません」と述べている。
付いた異名は“コストカッター”。
業績が低迷していた日産自動車の救世主として、日本だけではなく世界がその経営手腕に注目した。
就任から約1年後の2000年には、自ら各地にある生産工場や販売店に出向き、従業員と笑顔で接するなどしていた。
だが一方で、その経営手腕は非常に厳しいものだった。
1999年に「日産リバイバル・プラン」を発表。工場の閉鎖や従業員の大幅なリストラを断行した。
さらに、再建計画が成功するまでのスピードも早く、COO就任当時に2兆1000億円あった実質有利子負債を約4年で完済し、黒字回復させた。
ゴーン容疑者の経営手腕について、長年取材してきたジャーナリスト・安井孝之氏は「目標を決めて、それを達成できなかったら『責任を取れ』と辞めさせる。もしくは異動させる。日本的な経営だと『残念だけど次、頑張れよ』ですが、そういう意味では、とても厳しい人」と話した。
2002年には企業改革に手腕を発揮した経営者として、当時の小泉純一郎首相から直接表彰も受けている。
そして、2005年にはルノーの社長に就任、2016年には燃費不正問題が発覚した三菱自動車との連携も主導し会長に就任している。
さらに、2017年には日産自動車の会長にも就任するなど、ゴーン容疑者は3つ会社の役職を兼務していた。
不正行為の発覚は「内部通告」
こうした中で、19日に激震が走った逮捕劇。
2011年3月期からの5年間で実際の報酬額は「約99億9800万円」だったのに対し、有価証券報告書に記載した額は「約49億8700万円」。差額は50億円を超えている。
この背景を安井孝之氏は「この20年間、経営の実権を持ち続けた人はゴーン氏。聞く耳を持っている人だが、全能感が出てきて、徐々に人の話を聞かなくなっていったのではないかと思います。抑える人がいなくなったということです」と指摘した。
では、自身の報酬を実際の半額以下に減らしてまで記載し続けたのはなぜなのだろうか。
安井孝之氏は「2000年代初頭、多額の役員報酬が日本では一般的には払われていない時期でした。そのため、株主などから『年間10億円近く貰うゴーンさん、多いよね』というような批判もありました」と話した。
日本の経営者の中でもひときわ、高額な報酬を得ているとして話題となっていたゴーン容疑者。
19日の夜に会見を開いた日産自動車は、「内部通告」が不正行為発覚のきっかけだったと発表。
不正行為の背景について西川廣人社長は「ルノーのトップと日産のトップを兼任するということは、あまりにもガバナンス上、1人に権限が集中しすぎる。強い憤り、落胆ということを強く覚えております」と述べた。
また、日産自動車は他にもゴーン容疑者が会社の投資資金や経費を私的に支出するなど複数の重大な不正行為が認められたと発表した。
(「めざましテレビ」11月20日放送分より)