廃屋同然の京都の町屋が大人気の宿に 空き家問題とホテル不足を一挙に解決に導く“皆得”ビジネスモデル

カテゴリ:国内

  • 全国の7軒に1軒以上が空き家 その数は年を追うごとに増加中
  • 京都の空き家率は全国平均以上 中には江戸時代に建てられた京町屋も
  • 海外の口コミサイトで一気に評判が広がる

あなたの家の隣も空き家かもしれない 全国の7軒に1軒以上が空き家

全国で深刻化している空き家問題。総務省の住宅土地統計調査(平成25年 ※5年ごとに調査)によると、全国の総住宅数6062万に対して空き家は819万。この国では実に7軒のうち1軒以上が空き家という事態に見舞われていて、さらにその数は右肩上がりだ。 

また、森ビルのシンクタンクが10月に発表した、全国の都市(東京をのぞく)を経済や文化など6分野でスコア化した都市ランキングで堂々の1位に輝いた京都市も例外ではない。年々、観光客数が最高値を記録するなど、人気がうなぎのぼりの“華やかな観光地”との印象とは裏腹に、空き家率は14%。全国の平均値13.5%を上回っている。

その京都市内の空き家の半数近くが「京町屋」だ。なかには江戸時代に建てられたものもある京町屋は、たいていが細い路地に面しており、その入り口は狭く、奥に長い「うなぎの寝床」と呼ばれる建物。

所有者が高齢化しつつあるなか、バリアフリーからはほど遠く、さらに家によっては風呂もなく二世帯が住むには狭いため、相続されたとしても放置されてしまうケースが多い。

屋根が崩れたボロボロの京町屋がまさかの人気宿に変化

きっかけは、京都市のリフォーム会社「レアル」が「外国人観光客増加によるホテル不足」のニュースを日々、目にするなかでのひらめきだった。
リフォーム会社にはその業態ゆえ、おのずと市内の「空き家」情報が集まる。この空き家を借り上げてリフォームし、宿泊施設にはできないだろうか、と。

まず、1年かけて1万軒以上の空き家を自らの足で調査。その中から、立地条件やオーナーとの交渉の末、選び抜いた1軒の京町屋をリフォームし、「鈴(Rinn)」というブランドで宿泊施設にして開業したのだ。

廃屋同然の京町屋が大変化 提供:株式会社レアル

第一号の宿となった京町屋は屋根が崩れ、土壁も柱もボロボロだった。しかし、リフォーム会社としてのノウハウを存分に活かし、数千万円のリフォームを施したところ、それは高級旅館のたたずまいへと変化した。

時の流れを感じさせる深い色合いの柱はなるべくそのまま利用、土壁も元の色合いを再現して塗り直し、京町屋特有の古風な雰囲気を残した。さらに露天風呂をつくり、外国人観光客が存分に「日本」を味わえるつくりにした。

狭い庭が露天風呂に 提供:株式会社レアル
屋根は崩れ壁もボロボロだったがここまでキレイに 提供:株式会社レアル

一方で、最新設備も完備。客のチェックイン前に、遠隔操作で京都駅前のオフィスから床暖房やライトをオン。客が到着するときには「あたたかい我が家」が待っているという仕掛けにした。また、気軽に出かけられるように、玄関先にはレンタル自転車(※別料金 宿による)を用意。チェックアウトは、鍵をポストにいれるだけでOK。

これらが受けて、あっという間に人気に火がついた。

売上高・経常利益がうなぎのぼり 課題も浮上

口コミは海外旅行サイトを中心に一気に広がり、2016年3月に営業を開始した際は1軒だった“京町屋ホテル”は、その後、月に1軒ほどのペースで増やしていき、いまでは35軒に拡大。ローシーズンなら4名利用時で1人4200円からという低価格、さらに、荷物を預かるチェックインオフィスは京都駅から歩いて5分という利便性も受けた。客は入室可能な時間になれば、市内に点在する京町屋ホテルのひとつに、送迎してもらえる。荷物は先回りして届けられている。

京都駅から5分のチェックインオフィス

京都市のリフォーム会社として、京町屋の保存・継承、まちの景観をそのままに残したいとの京都への強い愛情が、ビジネスを成功に導いたともいえる。

唯一の課題は、ときたま出る近隣住民からのクレーム。空き家のオーナーと契約する際、近隣住民には業務内容を説明し、理解を求めたうえで開業するものの、騒音問題が出てしまうことがあるという。隣の家とは壁越しで「地続き」になる京町屋だからこそともいえる問題だ。どの宿泊施設でも起こりうる問題のひとつだが、今後、チェックインの際に注意事項のさらなる徹底を図るという。

創業以来、売上高がうなぎのぼりのこの会社は、今後、京町屋21棟を追加で開業する予定だ。まさに、空き家問題と観光客急増に伴うホテル不足を解消に導く“皆得”ビジネス。世界的にも人気の観光地だからこそ、宿泊施設としての需要があるとはいえ、全国が抱える空き家問題の解決のヒントがここにあるのではないだろうか。

(執筆:フジテレビ プライムオンラインデスク 森下知哉)