“宇宙を創る巨大装置”を日本に!佳境の「国際リニアコライダー」誘致

カテゴリ:国内

  • 国際リニアコライダーって何?
  • 宇宙の謎を解く!がん治療や農業に寄与も
  • 日本が注目される理由と課題 

国際リニアコライダーとは?

ILC(International Linear Collider)=国際リニアコライダーをご存じだろうか?

「リニア」とは「直線型」という意味。「コライダー」とは「(衝突型)加速器」。つまり、「国際直線型加速器」というのが直訳だ。

その加速器=コライダーとは何か。加速器は、粒子に大きなエネルギーを与えて加速させる装置で、素粒子や原子核などの目に見えないミクロの世界を観察するために開発されたものだ。

そして、国際リニアコライダーは、国際協力のもと、全長20km以上もある直線型加速器を作り、現在達成しうる最高エネルギーで電子と陽電子を光速近くまで加速して、衝突実験を行う計画だ。そしてこれは20年以上もかけて計画され、世界中の科学者が注目している大事業なのだ。

(c)Rey.Hori

リニアコライダーは宇宙の謎を解く

ただ科学に詳しくない私も、一体何のことなのか?と当初は頭を悩ませた。そこで識者に聞いてみたところ、この計画の目的は「宇宙の謎を解く」ことだという。

この実験は約137億年前の宇宙誕生時に起こった「ビッグバン」を再現するのとほとんど同じで、ようするに”宇宙を創る”。そして、この世界がどのように成り立っているのかを調べる壮大な計画なのだ。

実際のところ、我々は宇宙のほとんどのことを解明できていない。人類が把握している宇宙の物質は全体の5%程度と言われ、残りのうち約25%は目に見えない物質=ダークマター、約70%は謎のエネルギー=ダークエネルギーだと考えられているが、この解明にも国際リニアコライダーは活用できるとされている。

また、2012年7月に、すべての物に質量を与える元となったとされる「ヒッグス粒子」が発見されたと大きく報じられたが、この発見も巨大な加速器で陽子を衝突させた実験によるものだ。国際リニアコライダーは、このヒッグス粒子の謎を解き明かすためにも重要な役割を果たすという。

(c)Rey.Hori

私たちの暮らし向上にも役立つリニアコライダー

しかし、この国際リニアコライダーが実現したところで、私たちにとって何かいいことがあるのか?と思うかもしれない。実はこうした基礎科学研究の積み重ねは、ITや医療などのイノベーションに繋がるものなのだ。

加速器=コライダーでの実験は既に、がん治療などの医療分野や、新材料の開発、農作物の品種改良などにも役立っていて、国際リニアコライダーが完成すれば、さらなる医療の進化や、次世代半導体の製造などの成果も期待されている。

そして今、その国際リニアコライダー計画の日本誘致に向けた動きが最終段階を迎えているのだ。

(c)Rey.Hori

超党派が誘致に気勢!日本の動向に世界が注目

リニアコライダーの計画は1980年代頃から本格化し、欧米でも進められてきた。そして日本も世界有数の素粒子物理学の力と、加速器技術を背景に精力的に研究を進め、日本企業も当初段階から積極的に協力してきた。

そうした中、リニアコライダーは最終的に「国際協力のもと世界に1つだけ建設」することになり、欧米の候補地も浮上してきたものの、世界の素粒子物理学者らからは、日本が最有力の候補地だとして、日本政府が国際リニアコライダーを誘致するよう強く求められているのだ

11月13日、「リニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟」の総会が、政界のみならず、経済界、学術界などから約100人が参加して開催された。

会長の河村建夫元官房長官が「政府としても、科学技術創造立国を目指す上で、これ以上のプロジェクトはないと我々確信を持って進めている」と述べたほか、幹事長の塩谷元文科相も「欧米との連携もある程度整ってきた。そういった状況を踏まえて、最終的にはこれからの日本の方向を明確に打ち出す段階に来ている」と誘致に向けて気勢を上げた。
今後、議連としては関係する大臣などにも働きかけていく予定だという。

リニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟(11月13日)

建設の候補地としては、岩手・宮城にまたがる北上山地などが挙げられている。国際リニアコライダーが建設されれば、誘致先には世界中から数千人の研究者が集まり、研究都市としても発展し、世界最先端の科学技術が発信される場所になる。科学・教育面以外には、経済面でも大きなメリットがあり、20年間で約5兆7200億円の経済効果が見込まれるとの試算もあるくらいだ。

今後に向けた課題は?

国際リニアコライダー誘致について、日本政府が名乗りを挙げるのかどうかは、ヨーロッパが来年に素粒子研究計画の5年ごとの見直しを行う中で、年内か年明けがギリギリの期限だと言われている。一方で中国は既に独自の次世代加速器の建設計画を進めていて、日本が名乗りを上げなければ、素粒子物理学の中心が中国に奪われる可能性も指摘されている。

ただし、課題もある。最大の問題は予算・コストだ。加速器本体のほかにも、研究施設建設費、人件費等も含めたコストは約8000億円とも言われており、その半分は欧米諸国が負担するが、誘致したホスト国として日本は約4100億円を負担する必要があると試算されている。超党派の議連の会合でも出席者から、公的な負担の軽減を目指すため「民間からのお金も集めるべきだ」との声が挙がっていた。

また、「リニアコライダーの技術が本当に民生分野に応用できるのか」との疑問の声が挙がっているほか、電力供給への影響、実験に関する事故の懸念、放射性物質の管理を懸念する声もあり、関係機関は不安の払しょくに努めている。

日本政府の最終判断まで、ギリギリの期限が迫ってきた、国際リニアコライダー計画。その最終判断は如何に?世界が注目している。

(フジテレビ政治部 自民党担当キャップ 中西孝介)

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