悩みや治療過程の画像を共有…“アトピー患者”のための専用アプリを作ったのは公認会計士

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  • アトピーの悩みや治療過程を画像で共有できるiPhoneアプリ「アトピヨ」
  • 作ったのは元アトピー患者の会計士
  • プライバシーにも配慮 写真はアプリ内にのみ保存

アトピー患者をつなぐ専用アプリ

増え続ける、医療系スマホアプリ。
体調を記録する日記型のものや、手当の方法などが検索できる辞書型のもの、さらには医師に相談できるチャット型のものなど、そのタイプは様々だ。
そんな中、iPhone用“アトピー見える化アプリ”「アトピヨ」が注目されている。

「アトピー性皮膚炎」は、成長とともに症状が治まる患者もいる一方で、大人の患者も多く、完治は難しい疾患といわれ、患者数は45万6000人以上とされている。そのうちの36%が0~19歳、44%が20~44歳と、比較的若い世代に多い。(厚生労働省「平成26年度 患者調査」)

皮膚の激しいかゆみや乾燥、出血などを伴い、かゆみによって十分な睡眠がとれなかったり、不安や抑うつ症状などに悩まされる患者も多いという。

この「アトピヨ」は、アトピーの症状を画像で共有できる無料アプリ。
ユーザー登録は匿名ででき、年齢やアトピー歴、治療法や処方されている薬、悩みなどをプロフィールに書きこめるようになっている。

ユーザーは患部の写真を投稿して「治療日記」のように使ったり、他のユーザーの写真を見て参考にできるだけでなく、ユーザー同士がコメント機能を使って治療のアドバイスをしたり、相談に乗ったりすることもできる。

写真で治療経過が見えるようにした“アトピー専用アプリ”は日本初だということで、現在、2000回以上ダウンロードされているのだ。

SNS上ではユーザーのリアルな声とともに、「悩みを共有する人がいると安心できる」「アトピー以外の病気にも応用できそう」との声が挙がっている。

このアプリを開発したのは、本業は会計士のRyotaro Ako(リョウタロウ・アコウ)さん。
なぜ、全くの“畑違い”のアプリを開発したのだろうか?お話を伺うことができた。

開発者は「元アトピー患者」

――「アトピヨ」開発のきっかけは?

3年前に家族で熱海の古い旅館に宿泊した時に、ハウスダストアレルギーで救急車で運ばれたことがありました。部屋の中の古いソファーや布団で子供たちが遊び始めた結果、顔や腕などの上半身が赤く腫れ上がり、動悸も強くなり、深夜に救急車を呼ぶことになってしまいました。ステロイド注射で何とか症状は治まったものの、アレルギー疾患から逃れられない自らの体質を改めて自覚しました。

そこから、患者会でボランティアを始めたり、環境アレルギーアドバイザーの資格を取得したり、自分なりにアレルギーの勉強を積み重ねてきました。そして2017年からプログラミングの勉強を始めました。「TechAcademy」というオンラインスクールに通い、7ヶ月かけて「アトピヨ」アプリを開発・リリースしました。


――「アトピーに特化したアプリ」を作ろうと思ったのはなぜ?

私自身もアレルギー体質ですが、今日本人の2人に1人がアレルギーを持っていますので、アレルギー疾患の中で何かやりたいと思っていました。

その中でもアトピーというのは、
(1)人目に触れるという点で精神的にも辛いもの
(2)喘息や鼻炎は辛い時もありますが、平常でいられる時間もあります。アトピーはほぼ24時間かゆみが続き、睡眠や日常生活の質が大きく損なわれる
(3)最近の研究で、アレルギーマーチ(アレルギー疾患の連鎖)のはじめにあるのがアトピーや肌荒れで、そこから食物アレルギーなど他のアレルギー疾患に連鎖していくことが分かってきた

そこで、アトピーが一番重要性が高いのではないかという問題意識がありました。



実はAkoさん自身も、アトピー・喘息・鼻炎という3種類のアレルギーに悩まされた経験がある「患者」なのだという。
アトピーは幼少期に完治したということだが、その経験を生かしてアトピヨを開発したのだ。

アトピヨの大きな特徴は、医師と患者が繋がるのではなく、患者同士が繋がることができる、ということ。
ユーザーの間では、自分が普段していない治療法に対する質問コメントなどが多いという。

治療法ごとの“実施前後の画像とコメント”が有益な情報

「アトピヨ」開発者のRyotaro Akoさん

――「アトピヨ」を使っているのはどんな人が多い?

アプリユーザーの3分の2が女性です。特に20代〜40代の女性が多いです。
これは、女性のほうが見た目を気にする傾向があることと、アトピーは、幼児期の発症率がかなり高く(厚労省の資料によれば12%前後)、お子さんのアトピーに困っているママに使っていただいているからだと思っています。


――「患者が一番欲しい情報」はどんなもの?

アトピーの治療法ごとの実施前後の画像とコメントです。
アトピーの方は、なかなか治療結果が出ず、改善と悪化を繰り返して悩んでしまう時期があったりします。その際に、この治療方針でやっている他の人はいつ頃良くなったのだろう、とか、他の治療方針でやっている人はどうなんだろうといった部分が最も知りたい部分になると思います。


――「患者同士がつながる」ことはどんな意味がある?

医者と患者が繋がることは「治療」が一番の目的だと思っています。患者同士が繋がることは「治療」ではないが、治療をサポートするものと思っています。
慢性疾患や重度の疾患となると、治療期間が長期にわたります。
その間に、本人は、病院以外にも普段の生活があります。この普段の生活をサポートするのが、「患者同士の繋がり」であると思っています。
従来から、難病には患者会という形で、相談したり、お互いを励まし合うネットワークがありました。この「患者同士の繋がり」の一つの形が患者SNSであると思っています。また、この患者SNSを含めた「患者同士の繋がり」は、医療や製薬と緊密に連携してこそ、より効果を発揮するものだと思っています。

体の部位ごとに写真を投稿・検索でき、経過写真を並べて比較もできる

多くの人が見るインターネット上では、相談したくてもなかなか患部の写真を公開しづらい…という人も多いはずだ。
同じ症状を抱える患者同士、かつアプリという小さな空間だからこそ、気兼ねなく公開・相談できる安心につながっているのだ。

また、インターネット上には様々な相談サイトがあるが、たとえば文字だけで「肌がカサカサして…」「傷がジュクジュクして…」と説明しても、完璧には伝わらないだろう。
実際に写真を見て意見を交換できることで、より正しく、より欲しい情報を得ることができるのだ。

プライバシーにも配慮

そして、アトピヨのもうひとつの大きな特徴が、こうした患者の心情に寄り添ったプライバシーへの配慮だ。
投稿した写真はアプリ内にのみ保存され、スマホ内のアルバムには残らないのだという。


――「撮った写真が残らない」ことのメリットは?

アトピヨ内のカメラから撮った写真は、クラウド上に保存され、アプリからのみ見られるようにしています。
スマホのアルバムには、旅行やカフェなどの画像も多いです。そうしたプライベートの画像を友人に見せるとき、患部の画像を間違って見せないように配慮しました。
また、アプリ内で、部位などのカテゴリーごとに整理されて保存されますので、スマホ内の写真のフォルダ整理が不要というメリットもあります。

――ユーザーからの反響は?

一番衝撃的だったのが、約1,500件(11月18日現在)の投稿画像があるのですが、そのうちの2件は、肌の画像に「死にたい」というコメントがありました。幸いにも、この投稿に対しては、辛い気持ちが分かる同じ患者側からすぐにコメントでフォローがされ、本人も前向きになることが出来ていました。

アトピーは、人目に触れる病気であるため、そのメンタル面の影響が周りが思っている以上に深刻です。この様な病気で辛い気持ちや悩みを気兼ねなく吐き出し、患者同士がお互いをサポートする場としての患者SNSアプリの必要性を再認識することになりました。

また「仕事から帰る電車で乾燥が辛くて辛くて…早くこのアプリやりたかった!みなさんとコミュニケーション取れることでかなり頑張れてます!ありがとうございます!」といったコメントもありました。
医師と患者という基本的な関係に加えて、同じ患者同士で本音で気軽に話してサポートできるということが、前向きに病気の治療に向かい合う上でとても大事なものだと考えています。


――今後「アトピヨ」に追加したい機能や、今後の展望について教えてください。

非公開機能を年内に追加する予定です。
今は、投稿した画像は、匿名でアプリ内の全員に共有されます。それによって、お互い励ましたり、アドバイスをもらえたりというメリットがあります。
しかし、アトピーを自分のペースで治療し、その管理用にアプリを使いたい、もしくは、顔の症状を出すのは匿名でも抵抗があるといった声も多くいただきました。そこで、公開・非公開をカテゴリーごとに選択できるような機能設定を追加する予定です。

今後の展望につきましては、大きく3つあります。
1つ目が医療機関との連携です。具体的には、ご本人の同意の上、経過画像を医療機関に提供することで、対面診療やオンライン診療のサポートとなることです。

2つ目が製薬会社との連携です。アトピーは今年新薬が出たのですが、こういった新薬を出す際の治験サポート面ですとか、毎日の薬の使用状況を提供するといったことを考えています。

3つ目がAI(人工知能)の活用です。約1,500件(11月18日現在)の投稿画像があるのですが、この画像が増えた段階で、アトピーと他の皮膚疾患と区別することや、アトピーの症状ごとに有効な治療法や薬の傾向を出すことにAIを活用することを考えています。


当事者にしかわからない悩みや辛さを共有できるアプリ。
今後、アトピーに限らず、ひとりで悩む患者が相談できる場所が増えることを期待したい。

(「アトピー」に画期的新薬が登場!重い症状の改善に期待)

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