強権プーチンの支持率急降下! 天然ガスと宗教を武器に影響力復活なるか

カテゴリ:ワールド

  • ロシアの新たな経済政策でプーチン大統領の支持率急落
  • ロシア正教会がウクライナから追い出される可能性も
  • 豊富な資源を武器に影響力復活なるか?

強権プーチン大統領の支持率急落

支持率が急落したプーチン大統領

2018年ロシア・ワールドカップ開催日に発表されたロシアの新たな経済改革は、今やプーチン大統領の悩みの種だ。10月発表された世論調査によると、プーチン大統領の支持率は急落し、30%台に低迷した。この数字は2014年2月以来のことで、改革への反発が見てとれる。

経済改革の内容は、旧ソ連時代の1932年から未だに変更されていない定年退職制度の見直しが中心になっている。これまで男性の定年退職が60歳だったのを65歳に、そして女性は55歳だったのを60歳に引き上げるとされている。しかし、国民のデモ抗議などで結局プーチン大統領は改革の見直しを余儀なくされた。

支持率の回復の鍵は、どこにあるのか?
実は、日本ではあまり報道されていないある動きにが、注目されている。

宗教による権力誇示の可能性

支持率が40%を下回ったのは、2014年のウクライナ紛争前だった。クリミア半島編入後には51%と劇的に回復した。これは歴史上クリミア半島に対する強い執着心を持つロシアゆえの、支持率回復だと考える。本来クリミア半島は、ロシア国民の強さを象徴する場所とされてきた。第二次世界大戦中に、ドイツ軍を8ヶ月間にわたりくい止めた例がある。

ロシア正教会

だが今回、クリミア半島以外にも、支持率を回復する可能性のある外交案件が出てきた。それは宗教だ。ロシアの宗教は「ロシア正教会」であり、正教会団体の中でも最も影響力と資金力を持つ団体である。それに対抗してきたのが「東方正教会」だ。東方正教会は、ロシア正教会に比べて信者数などの点で劣っている。

ところが10月、その東方正教会が、ウクライナ正教会を傘下にすることを表明したのだ。ウクライナはロシア正教会にとって多くの信者数を誇り、資金源でもあった。

東方正教会に利権を奪われれば、ウクライナ東部の紛争で領土を広げない限り、ロシアが影響力を失っていくことになる。

そのため、ロシアにとってはロシア正教会をウクライナ内で維持できるかどうかが重要になる。しかし、ウクライナ大統領は、「ロシア正教のキリル総主教(ロシア正教会)はウクライナ軍を殺戮しているロシア軍に祈りをささげている」と発言し、ウクライナからロシア正教会を追い出す姿勢を見せている。

それに反論するかのように、ロシア政府は「正教会の権利を保護する」とし、一歩も譲らないことを明らかにした。この事態はクリミア半島編入の発言に似ていて、状況も似ていることは否めない。

豊富な資源を武器に

天然ガスのパイプライン「ノルド・ストリーム」のコンプレッサー・ステーション

もう一つ、支持率回復の鍵となるのは、資源貿易による経済の活性化である。プーチン大統領は、豊富な資源を武器に再びロシアの影響力と経済力を復活させようとしている。

2016年冬、プーチン大統領は日本を訪問した。その際に話題となったのが、日露液化天然ガスの経済協力プランだ。計画内容はロシアと日本を結ぶパイプラインの開発だ。アジア進出を企む中、実は対立しているヨーロッパとも天然ガスパイプラインのプロジェクトを進めている。ロシアは、アメリカに続きガスの生産量が最も多い国だ。ヨーロッパ諸国は、主に価格の安いロシアから天然ガスを買い続けている。

その天然ガスをヨーロッパに繋げている供給のルートは、大きく分けて3つある。旧ソ連時代から使われているウクライナのパイプラインとトルコ方面のパイプライン、2011年からヨーロッパ向けのバルト海のパイプラインだ。しかし、ウクライナのパイプラインの運営が情勢により危ういことや、今後ヨーロッパでの需要が増えることを踏まえ、ロシアは、バルト海を通してもう1本のパイプラインを引くことを決めた。

バルト海を通る天然ガスのパイプライン

ただ、ヨーロッパ諸国とロシアの関係は、シリア問題やウクライナ問題などで悪化していて、ロシアの天然ガスに依存しすぎることが危険だと懸念する声もある。

現在、日本は主に中東から天然ガスを購入しているが、もしこのプロジェクトが成立すれば日本人はより安くガスを買えるようになる。一方で、よりロシアからの天然ガスに依存することにもなる。それは、ロシアにとって日本に対する外交圧力をかけやすくするかもしれない。例として、当時ウクライナ情勢悪化に合わせてヨーロッパはロシアに対し経済制裁に踏み切った。その際にロシアはヨーロッパへのガス供給を止めることを口にしたことがある。結果はそうならなかったものの、エネルギーの供給はロシアの武器となっている。

 ロシア経済が繁栄するためには、各国へのエネルギー資源の供給が重要なポイントになる。アジア進出は、プーチン大統領にとって新たなマーケットの開拓として評価されることになるのだろうか。また、新たに現れた宗教分裂で影響力を保てるのか。注目が集まっている。

(執筆:FNN パリ支局 カメラマン 小林善)