「絶滅危惧種」議員は消え去り 分断アメリカの“ねじれ議会”は機能不全が止まらない

カテゴリ:ワールド

  • 以前は “ねじれ議会”でも政治は前進できていたが‥
  • ねじれを乗り越える超党派議員は『絶滅危惧種』
  • トランプ“勝利”で議会内の分断は一層深く広がる

“分断政治”状態が予想される

下院での勝利宣言をする民主党のナンシー・ペロシ院内総務

中間選挙の結果、上院は共和党、下院は民主党が過半数を握る、いわゆる“ねじれ議会”となったことについて、「アメリカでは議会はよくねじれている。特別な事態ではない」といったコメントが見聞きされる。だが、状況はそんなに甘くはない。

来年1月3日に新議会がスタートするや、上院と下院、そしてホワイトハウスと下院は分断され、文字通りの“分裂政府”状態になると予想される。トランプ大統領と共和党は、民主党との非難合戦に明け暮れ、世界の顰蹙を買うことになるだろう。

トランプ大統領は中間選挙の翌朝に民主党に協力を呼びかけたが、それは政略的な宥和ポーズにすぎない。協力関係にはならないだろうと見越し、後々「民主党は呼びかけに応えなかった」と非難できるように布石を打ったのだと思える。

過去の“ねじれ”と今の“ねじれ”は異なる

アメリカの政治史において、“ねじれ議会”の状況が当たり前のように生じてきたのは、ねじれても議会が機能してきたからだ。上下両院で共和・民主両党の有志が超党派でねじれを超えて協力し、法案や予算案を成立させてきた。

アメリカ議会では『党議拘束』がなく、夫々の議員は自らの信念と判断で立法活動に携わり投票行動を決めるからだ。さらに議員一人ひとりが法案作成に通じたスタッフを抱え、議会の委員会などにも立法を支援するスタッフが多数いるので、政党や大統領(行政機構)の言いなりにならずに立法活動を進めることができる環境があるのだ。

だがこの10年あまり、ねじれを乗り越える超党派の立法活動を困難にする大きな変化が進行している。それはアメリカ社会の党派的分断だ。

次の図は、無党派の調査機関「ピュー・リサーチ・センター」が公表したもので、『党派的分断』が急速に進んでいることが見て取れる。

~Pew Research Center HPより~

青い山は民主党支持層。赤い山は共和党支持層。それぞれの山は、イデオロギー的に左右への広がりと分布を示す。1994年と2004年の図では変化はみられるものの顕著ではない。それが2017年の図では、青い山と赤い山の形がそれぞれすっかり変わっている。左と右に大きく偏っている。

重なる部分も著しく小さくなっている。青い山と赤い山それぞれのイデオロギー的中央値を示す2本の垂直線が2017年の図では大きく隔たっている。民主党支持層と共和党支持層は大きく離反し、分断された状況が一目瞭然だ。

「絶滅危惧種」議員の存在

議員は選挙区の支持者の意向を等閑視できない。支持者あっての議員活動だし、議員活動を通じて支持者に応える責務があるからだ。つまり、支持者が左へ寄っていくのなら議員も左へと動き、支持者が右なら議員も右だ。結果、分断の谷=青と赤が重なる部分に居続け、時に青から赤へ、あるいは赤から青へと党派の境界を超えうる議員は絶滅危惧種となる。

ジョン・マケイン上院議員

その1人が今年8月に死去したジョン・マケイン上院議員だった。共和党議員でありながら『異端児』『独立独行』と称されたのは、民主党議員と協力して何度も重要法案を成立させたりしたからだ。上院での盟友の1人は民主党リベラル派として有名なエドワード・ケネディ議員だった。

マケイン議員を生み育んだ土壌が『予備選挙』という制度だ。一言でいうなら、選挙に出る人を有権者が選ぶ制度だ。党のボスたちが彼らの都合と思惑で立候補者を選ぶ『公認制度』とは根本的に違う。当選者は党への負い目は何もないから忖度もしない。だから『党議拘束』をかけようとしても利かないのだ。

『異端児』誕生は期待薄

しかし、現在のように支持層の右傾化、左傾化が進んでしまうと、予備選挙で選ばれる候補者自体が右派化、左派化してしまう。わざわざ予備選挙でも投票に出かけようという有権者は、そうする強い動機を持っている人たちだし、予備選挙では11月の本選挙より一桁少ない票数で当落が決まる。中間選挙で現れたミニトランプたちは、熱狂的なトランプ支持者によって予備選挙を勝ち抜けば、共和党地盤の選挙区では本選挙で難なく連邦議員に当選する。そしてワシントンの議会でトランプ大統領の尖兵となる。トランプ大統領の勝利だ。

こうした政治環境では、ねじれを超える超党派の行動をする『異端児』が新たに誕生することは稀だ。絶滅危惧種は消え去るのみ。そして『ねじれ議会』の機能不全は、打開のために動く『異端児』議員がいないまま、泥沼化することになる。私たちはこれから2年、そのような政治状況を目撃することになるだろう。

(執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋)
(サムネイル:イラストレーター さいとうひさし)

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