「携帯」や「マスク」を検知…AIで“振り込め詐欺”を防ぐ国内初のATM 詳しい仕組みを聞いた

カテゴリ:ビジネス

  • 日立オムロンが詐欺被害防止のため、AIを活用したATMを開発
  • 「携帯電話を使用している人」「マスク・サングラスを着用している人」を検知
  • 現時点で“詐欺”と“そうでない場合”の判別は難しい

「携帯電話を使用している人」などを検知

いわゆる振り込め詐欺の認知件数は架空請求や還付金詐欺など手口を変え、多様化しながら、年々増加傾向にある。

こうした中、振り込め詐欺など特殊詐欺の被害を未然に防ごうと、日立オムロンターミナルソリューションズが人工知能(AI)を活用したATMを開発した。

ATMに内蔵したカメラを通じ、AIが利用者の容姿やしぐさを検知する仕組みだ。検知するのは、「携帯電話を使用している人」の画像と「マスク・サングラスを着用している人」の画像。

「携帯電話を使用している人」を検知するのは、利用者がATMで“振り込みの取り引き”を行っている場合。
携帯電話で通話しながらATMを操作している画像を検知すると、ATM画面に取り引きを中止する旨の注意喚起と詐欺に関する質問を表示。それに対する回答によって取り引きを強制的に中断・終了するという。

「マスク・サングラスを着用している人」を検知するのは、マスクやサングラスを着用して、“出金の取り引き”を行っている場合。

「マスク・サングラスを着用している人」の画像を検知すると、マスクやサングラスの取り外しを促す画面を表示。取り外さない時は出金取り引きを強制的に中断・終了するという。

こうした機能を備えたATMは全国初。
画期的な機能だが、なぜ検知する画像が「携帯電話を使用している人」と「マスク・サングラスを着用している人」だけなのだろうか?
日立オムロンターミナルソリューションズの広報担当者に聞いた。

多発する2つの犯罪手法に注目

――この機能で検知できる画像は「携帯電話の使用」と「マスク・サングラスの着用」のみ?

現時点では本機能で検知できる画像は「携帯電話の使用」と「マスク・サングラスの着用」ですが、今後はお客さま(金融機関さまなど)の要望をふまえて検知対象を拡張することを検討しています。


――検知できる画像を「携帯電話の使用」と「マスク・サングラスの着用」に特化した理由は?

ATMを用いた金融特殊詐欺(還付金詐欺やキャッシュカード手交型詐欺)で、多発している2つの犯罪手法に注目して今回の機能を検討しました。

1つ目は従来から多発している「還付金詐欺」。

被害者が携帯電話でATM操作を誘導されながら、犯人の指定する口座に振り込みをしてしまうというケースが多いことから、“振り込み取り引きにおいて携帯電話を使用しているかどうか”を検知の対象とすることにしました。

2つ目は近年増加する「キャッシュカード手交型詐欺」(キャッシュカードを騙し取る詐欺)。

犯罪者が被害者からだまし取ったキャッシュカードを用いて、不正に出金をする際、マスクやサングラスの着用をして出金取り引きをするケースが多いとのことで、マスク・サングラスを着用したまま出金取り引きを実施していることを検知する機能を検討しました。

今後は検知の対象の拡張を想定しており、この2つに特化しているわけではありません。


――どのような警告のメッセージが表示される?

愛知県警様とのイベントの際は愛知県警様からアドバイスを頂き、下記のメッセージを表示しました。

例えば、マスク・サングラスの着用の場合:「お願い事項。犯罪防止のためマスク・サングラスを着用してのお取引はできません。」「着用の場合は外して確認ボタンを押してください。」

実際に市場で稼働させる際は、この機能を導入されたお客さま(金融機関さまなど)との打ち合わせによって、ATM画面に表示する警告メッセージを検討します。

――着用しているのがマスクだけ、サングラスだけでも警告は表示される?

本機能を導入されたお客さまの設定により、両方でも片方でも表示可能です。

“詐欺”と“そうでない場合”の判別は難しい

――詐欺とは関係なく、携帯を使用したり、マスク・サングラスを着用したりしていても、警告は表示される?

詐欺の可能性がない取り引きで警告を出さないようにする工夫は今後継続して検討していきますが、「詐欺対象/非対象」の判別が現状は難しいため、現段階では検知したら警告画面を表示します。

実際に市場で稼働させる際には、お客さま(金融機関など)と相談の上、詳細な仕様は検討します。


――この機能でAIはどのような点で活かされている?

本機能では画像検知にAIを活用しています。
ディープラーニングで多種多様なデータを学習させ、判別対象の種類を類推する画像検知の精度を上げています。

学習したものをATMに取り込むことで高精度の判別が可能となります。


――AIが学習することによって、「詐欺の場合」と「詐欺ではない場合」を判別できるようになる?

詐欺の場合と詐欺で無い場合のATM利用者の相違点が分かってくれば、この相違点を本案件のAIに学習させて画像から検知させることも可能になると考えます。

今後もお客さまや警察関係機関にアドバイスを頂きながら精度を高めていきたいです。

増加傾向にある特殊詐欺による被害を防ぐ効果が期待されるこのATM。
日立オムロンの担当者は「今後は認知度を広げ、導入につなげたい」と話している。

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