度数の高い「ストロング系」が人気…アルコール依存症にならない飲み方を専門医に聞いた

カテゴリ:暮らし

  • 度数が高い「ストロング系」が急成長!2012年の倍以上の市場
  • 適度な飲酒の指針は「1日平均純アルコールで約20g程度」
  • アルコール依存症は、最新データの平成26年が過去最高

お酒を飲まない人でも近頃「ストロング系」缶チューハイの人気が高まっていることはご存じだろう。
コンビニやスーパーの酒売り場に行けば、甘さを抑えたものから果汁をたっぷり加えたものまで「STRONG」と書かれた色とりどりの商品がずらりと並んでいる。

いずれも価格は低め、アルコール度数は8%や9%と高めになっており、中にはワインと同等の12%を謳うものも登場している。

Twitterでは安く手軽にすぐ酔えることから、様々な意見が投稿されている。
・忙しくて時間がないので酔っぱらうまでを短縮したい
・コンビニで冷えてて缶のふたを開ければそのまま飲める事が重要
・「酔う」というより「わからなくなる」ためのお酒


またストロング系を表現した「虚無の酒」「ロング缶は福祉」「魔法の水」などという言葉も話題になっていた。
様々な形で注目される「ストロング系」は今、どれだけ売れているのだろうか?

サントリーが2018年に公表したレポートによると、缶チューハイや缶カクテルなど、そのまますぐ飲めるアルコール飲料(RTD=Ready to Drinkの略)の市場は、10年連続で拡大し続け、過去最大規模に達したという。
その内訳をみると、度数3%以下のRTDは横ばいか微減しているのに対し、8%以上の商品は、2012年の2.3倍に迫る見込みで、アルコール度数が高い商品ほど増えていることがわかる。

出典:サントリーRTDレポート2018

アルコール依存症の患者数は過去最高

強いお酒が売れている一方、お酒で体を壊す人は増えていないのだろうか?

厚生労働省では「節度ある適度な飲酒」として「1日平均純アルコールで約20g程度」という指針を出している。
純アルコール量とは「アルコール飲料の量(ml)×度数÷100×0.8(アルコール比重)」という計算式で求められるというが…ピンと来ない方は下にある表を覚えたほうが分かりやすそうだ。

例えば5%のビール中瓶1本(500ml)の場合、「500×5÷100×0.8=20」で、純アルコール量は20gになる。
ちなみにストロング系350mlの場合、7%で19.6g、8%で22.4g、9%で25.2gとなり、度数によっては1本で「節度」の基準を超えてしまう。

出典:厚生労働省

安くて手軽だからと言って大量のお酒を飲み続けると体に良くないのは明白。
それに、人によっては飲み続けた結果、耐性や精神・身体依存などが形成されて、自分でコントロールできなくなり、飲むのはよくないとわかっていながらも飲んでしまう「アルコール依存症」になってしまうかもしれない。

実は、厚生労働省の患者調査によると、アルコール依存症の総患者数は、最も新しいデータの平成26年(2014年)で4万9千人と過去最高になっているのだ。

出典:厚生労働省 平成26年 患者調査(傷病分類編)

推計患者数: 調査日当日に、病院、一般診療所で受療した患者の推計数
総患者数: 調査日現在において、継続的に医療を受けている患者の推計数
※平成5年以前と平成8年以降は分類法が異なるため年次比較はできない
※平成23年は東日本大震災の影響で一部の調査を実施していない

なぜ、アルコール依存症患者が増えたのか?
そして現在ストロング系が人気だが、アルコール依存症にならない飲み方はあるのか?
アルコール依存症の治療で30年の歴史がある千葉県の医療法人梨香会 秋元病院の病院長、川向哲也先生に伺った。

女性の依存症・高齢者の依存症が増えている

――アルコール依存症の患者が増えている実感はある?

徐々に増えてきているという印象があります。


――アルコール依存症が増えている原因は?

理由としては他の精神疾患にもあてはまることですが、アルコール依存症が疾患として認知されることが様々な啓蒙活動などにより増え、医療につながる機会が増えているのかもしれません。
また、若年者の飲酒習慣は減ってきていますが、代わりに女性の依存症・高齢者の依存症が増えてきているという傾向があるようです。
核家族化や高齢者の孤立化などの社会の風潮も関係している可能性が高いです。


――アルコール依存症の人は、どんな飲み方をするのか?

経済的な理由から4リットルの焼酎などを大量に消費するという光景が多く見受けられます。


――安くて度数の高いお酒を飲むと、より依存症になりやすい?

安価に大量のアルコールを摂取できることになりますので依存症を助長することは間違いないと思います。
分かりやすく言えば、アルコール飲料の値段が現在の100倍になればアルコール依存症が激減することは間違いないと思います。

「1本までと決めての飲酒」

――アルコール依存症になっていないか、自分だけでチェックできる?

AUDITなどのスクリーニングテストが有名です。
インターネットなどで簡単に検索し実施できるのでセルフチェックに役立てることは有用です。
その他ICD-11、DSM-Ⅴといった精神医学における診断基準も参考になるかと思います。

(※AUDITとは90年代初めに、世界保健機関(WHO)がスポンサーになり作成されたスクリーニングテストのこと。10の問題を答えると、危険な飲酒をしているか分かるという。
厚労省のAUDITはこちら。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-021.html

――アルコール依存症は治るのか? 治ったら元通りお酒を飲めるようになるのか?

アルコール依存症は「治る」「治癒する」という概念はなじまない疾患です。
10年間断酒していても、依存症の状態に戻ってしまう例はいくらでもあります。
アルコール依存症は、一旦診断されれば一生付き合っていかなければならない「持病」と認識したほうがいいでしょう。
これまではアルコール依存症の治療は「断酒」が大前提という風潮がありましたが、最近では軽症者に関しては「節酒」による治療アプローチも盛んに行われるようになってきています。


――アルコール依存症にならないための「ストロング系」の飲み方は?

ストロング系のアルコール飲料はお財布にはやさしいという側面がありますが、9%のアルコール飲料であれば「1本まで」と決めての飲酒であれば依存症になる恐れは少ないでしょう。
純アルコール量で20gまでの飲酒に抑えることが重要です。

「ストロング系」の人気とアルコール依存症増加の因果関係は、現時点ではわからないが、これから年末にかけて何かと飲む機会が増える季節。
こんな時こそ、節度ある適度な飲酒を守って美味しいお酒を飲んでいただきたい。