なぜカニたちは愛し合えなくなったのか 

  • 日本海沿岸におけるズワイガニ漁は、三年後には半減すると推定されている
  • メスの卵を持たない未成熟のカニの資源量が過去20年で最低の水準
  • 海水温とブリの行動がカニの生育に影響・・・・?

不安を抱えながらカニ漁解禁

カニ漁解禁

11月6日、ズワイガニの漁が、富山県以西の北陸から山陰地方にかけての日本海側で解禁を迎え、オスガニの漁期が終わる3月20日までカニの季節が続く。メスガニは、資源保護の目的から1月10日までしか漁をすることはできない。

ズワイガニは、丹後半島の西から山陰地方にかけて水揚げされたものを「松葉がに」、越前漁港や三国漁港などの福井県の漁港では「越前がに」、石川県の橋立漁港、金沢港などのものは「加能がに」と呼ぶなど、各地が競い合いブランド化が進んでいる。

過去20年で最低の資源量

福井県の漁港で水揚げされたカニ「越前がに」

この日本海のカニに異変の兆候が表れているようだ。

日本海区水産研究所によると、今年は、例年なみの水揚げが期待されるが、日本海側のズワイガニの資源量は減少傾向にあるという。今年の初夏に能登半島から山陰地方の沖合にかけて資源量調査を行ったところ、捕獲が規制されているオスの甲羅幅が9センチ以下、メスの卵を持たない未成熟のカニの資源量が、過去20年間で最低の水準だったという。同研究所では、日本海沿岸におけるズワイガニ漁は、三年後には半減する推定している。

ブリが稚ガニを大量に捕食?

日本海では通常、メスは水深250メートル付近、オスは水深300~400メートル付近のやや深い海域に生息していると言われる。いずれにしても水温は、0℃から5℃程度の冷たい海域である。繁殖期になると互いに引き寄せられるように海域を移動し、交尾をするのだ。交尾は、抱き合うように腹部同志を密着させて行う。交尾すると直ぐに産卵し、メスは初産で1年半、二回目以降は1年間、卵を抱えて生活をする。産卵期は、初産卵が6月~8月、二回目以降は2月頃である。

カニは成熟するまで9年ほどかかると考えられているため、原因を探るには3~5年ほど前の日本海の情況を考えなければならない。

2015年の秋から2016年の春にかけて日本海中央部の海水温が高く、日本海を南下するブリの行動に異変があった。本来、ブリの名産地である富山湾に入らずに、日本海を直接南下し、石川県から鳥取県にかけての沿岸部が豊漁になったのだ。この時期に孵化したての稚ガニを大量にブリが捕食したことも考えられる。また、表層の海面の温度が高かったため、海底から上昇する海流「湧昇流」が例年より弱まり、オスガニがメスガニの待つ上部の海域まで辿り着けなかった可能性もある。

北朝鮮漁船の密漁にも要注意

石川県加賀町の海岸に流れ着いた北朝鮮漁船

その他の原因としては、北朝鮮や韓国の漁船による密漁、乱獲も考えられる。日本海沿岸の漁師たちは、資源量保護に真剣に取り組んできたが、日本の禁漁期に侵入してきた北朝鮮漁船が、小さなカニまで獲ってしまっているのだ。今年の春に石川県加賀町の海岸に流れ着いた北朝鮮漁船には、カニ籠などのカニ漁に使う漁具が残されていた。

北朝鮮漁船に残っていたカニ籠

また、2017年夏に石川県の小木漁港の漁船が撮影した北朝鮮漁船が不法操業をしている映像には、カニ籠を積んだ漁船や、網でカニを捕獲している漁船の様子が映し出されていた。密漁漁船の警戒は、カニの資源保護のために不可欠であろう。

カニは、日本人にとって無くてはならない食材である。このまま日本海のカニが減少してしまうと、三年後には、日本人の冬の楽しみである「よせ鍋」にカニが入らない事態となってしまう。「かにしゃぶ」も手が届かないものになるだろう。しかも、カナダ産やロシア産のカニが主流になってしまう。また、冬のカニは、過疎に悩む日本海沿岸地域の貴重な観光資源である。カニの減少は、これらの地域で暮らす人々にとって死活問題なのだ。

早急に、漁場の保護とカニ生態系を考えての移植放流、密漁の取り締まりなど、カニの資源回復に有効な手段を講じなければならないのだ。

(執筆:海洋経済学者 山田吉彦)