日本は既に世界4位の移民大国? 岸田政調会長が明かす、政府が“外国人労働者”受け入れへ大転換したワケ

  • ホテルなどは人手不足で、外国人技能実習生に頼らざるを得ない現状
  • 「優秀な外国人の人材に、日本を選んでもらわないといけない」
  • 「人手不足が成長の足かせになっていて、この対応を考えなくてはいけない」

外国人なしでは成り立たない労働の現場

群馬県水上温泉で創業56年の「みなかみホテルジュラク」。利根川の清流を臨む露天風呂にお客さんの目の前で一品一品作るライブブッフェが評判の湯宿だ。
1日500人が宿泊する巨大ホテルはこの日も多くの観光客で賑わっていた。しかし、この春に入社した新入社員はわずか1人だ。ホテル業界は勤務体系が不規則なため、興味を示す若者は少なく、温泉地はどこも人材不足に悩まされているという。

フジテレビ「報道プライムサンデー」が取材したこの日、従業員たちがホテルの一室に集められ、日本語の勉強を始めていた。
彼らは“外国人技能実習生”だ。技能実習制度は先進国としての技術を日本で学び、開発途上国の人に持ち帰ってもらうという制度。今日本で働いている外国人は、専門的な技術や知識を持つ高度専門職、あるいは留学生や技能実習生などといった“学ぶ人”に限られているが、この技能実習生が今日本の労働力を支えている。

このホテルでも今まで150人ほどを受け入れ、人手不足の解消につながっている。

しかし、従来の外国人技能実習制度に限界を感じているという声が多く挙がっている。外国人技能実習生は在留期間が限られているため、日本語と技能が出来るようになったところで国に帰ってしまうというのが“もったいない”というのだ。

そこで政府は2日、出入国管理法改正案を閣議決定した。今回、安倍政権が来年4月から始めようとしていることが2つの新たな在留資格を創設すること。単純労働の分野でも働く為だけに日本にやってくることを認めるという、大きな政策転換になる。

「特定技能1号」は相当程度の知識または経験があれば在留資格は上限5年、しかし家族の帯同は認められない。
一方、熟練技能を持っていると認められた「特定技能2号」は在留期間の上限はなく、家族(配偶者と子)の帯同も認められる。つまり永住も可能となって、家族も日本に住むことができる、ということになる。

しかし不安の声も上がっている。
「移民政策ではないのか」「治安は悪化しないのか」「拙速だ」「社会保障はどうするのか」「日本人と職の奪い合いになるのではないか」というものだ。

4日放送の報道プライムサンデーでは、自民党政調会長の岸田文雄氏と識者にこの問題を直撃した。

技能実習生は事実上の“外国人労働者”

有本香氏(ジャーナリスト)

有本香(ジャーナリスト):
技能実習生の方、昨年1年だけでも7000人以上(7089人)が行方不明となっている。今年もすでに4000人を超えているということです。データを取り始めてから合計3万人以上です。こういったことを聞くと、多くの方が不安に思うでしょう。
それも含め、制度そのものが十分検討されていないのに、見切り発車しようとしているんじゃないかと思います。まずこの技能実習制度についてはどう思われますか?

岸田文雄(自民党政調会長):
国際的にも、制度については議論や指摘がありました。外国人の技能実習生が大変厳しい環境の中で働いている、そういったことに対しての指摘がありました。昨年この制度について見直しを行い、待遇・環境についての改善を行って、制度自体の有り様の見直しを行った。
行方不明となった技能実習生、その原因を考えますと、まずは待遇・環境の改善が必要だと考えました。また実態の把握をしっかりしないといけないと思います。
今回の新しい制度はそれとは別ですが、今回の制度でも、実態の把握をしっかりやることが大切だと思います。

有本香:
技能実習生制度は悪名高く、実際は外国人の労働者を安価で確保するということで、これを是正することで新しい制度を作るというのは納得できるんです。しかし技能実習生制度は残るんですよね?
私、安倍総理に直接伺いましたけど、総理も「期限で帰っていただくんだ」と言っていました。でも、国に帰す仕組みが今のシステムではありません。新たな組織を作ったら、期限で帰っていただく、そういうシステムができるのかどうか、そこがはっきりしていない。

岸田文雄氏(自民党政調会長)

岸田文雄:
技能実習生制度は国際貢献、開発途上国の方々に様々な技能を伝達する、という国際協力の一環です。今回新しく作った制度は「労働」という観点から、新しい制度を作ったという違いがあります。
実態を把握することが重要であるということから、出入国在留管理庁という新しい組織を立ち上げ、人員を拡充して他の省庁との連携を図ります。
期間が来たらお帰りいただくということですが、人手不足という観点からどれだけ必要なのか、入っていただく段階から政府として実態を把握しながら、調整をしていく仕組みになっています。一挙に大量の方々に帰っていただくとかそういう事態にならないように、しっかりとした制度を作らなければならない。

移民なしで日本はやっていけるのか?

平井文夫(フジテレビ報道局上席解説委員):
私は(有本さんとは)反対の意見です。拙速という不安の声がありましたが、拙速どころか遅いと思っています。
移民なしでやっていけるのか。「移民は反対だ」「消費税は反対だ」と、そんな国ないですよ。もちろん、いろんなトラブルはありますよ。でもみんなで解決策を考えながら新しいことをやって行かないと、日本の国は沈んじゃう。
もうちょっと踏み込んで外国人労働者を働かせるための仕組みを作った方がいいんじゃないですか?

岸田文雄:
今回の制度は深刻な人手不足という観点から始まっています。制度を導入することで、どのようにして日本が多様性や他文化を受け入れることができるか、これが問われることになると思います。
目を世界に転じますと、中国はじめアジアの国の人口が減少していくんです。優秀な外国人材は各国争奪戦になるのではないか、そういう時代が来るのではないかという指摘もあります。少なくとも日本が求めているような優秀な外国人の人材に、日本を選んでもらう、そういう意識はあります。

パトリック・ハーラン:
実際に開始するのは半年後じゃないですか。これから議論していって、私たちの意見が反映されていくのに半年で間に合うんですか?大丈夫なのか不安があります。

岸田文雄:
従来から議論が行われてきた経緯があります。また、厳しい人手不足という環境もあります。その中で適切なタイミングでスタートしなくてはいけない。
この4月からスタートできるようしっかり努力すること、これが重要だと考えています。

有本香:
確かに自民党などでは内部で議論はされてきたという経緯はありますが、国民サイドにそれはあまり知らされてこなかったんで唐突感があるし、決まっていないことがありすぎて不安が大きくなっている。

平井文夫:
こんなにいっぱい外国人いるじゃないですか。

有本香:
日本は実はすでに世界第4位の移民大国という統計もあります。年間40万人くらい入っている。
今までの制度は資格外と言って、留学生が実際にはアルバイトとして働いていたりしています。それを実態に合わせていく事が必要だと思います。

外国人が日本の社会保障を悪用するケースはどうする?

有本香:
社会保障は、今の立て付けですと多くの人が国民健康保険というものに入ると思います。
しかしこの国民健康保険は国民でなくても入れます。しかも今回の1号の家族を帯同していない労働者の外国人の場合、帯同していない家族も含めて保険でカバーする対象になりうるというのが日本の制度の特殊性です。
社会保障の制度の面でも議論していかないと不安は大きくなる。制度上の穴はほとんど検討されていません。

岸田文雄:
今日本で働いている外国の方々は、128万人を超えると言われています。この制度はまず4万人程度から始めると言われています。
社会保障が悪用されるのではないかという事ですが、これは重要であります。こう言った議論は国会でもしっかり詰めることになります。間に合うように努力をしなければならないし、間に合わせなければいけない。

パトリック・ハーラン:
外国人労働者の家族は社会保障ではカバーしないのか。岸田さんご自身のお考えではどうですか?

岸田文雄:
働いてもらう方の環境を整備しなかればいけない、ということですから、その制度の外にある家族については考えなくてはいけない。全部無制限というのは対応は難しいのかな、と。これから詰めなければならない。

佐々木恭子:
単純労働の1号の人が2号に移るとき、どのようにチェックするんですか?

岸田文雄:
所管官庁が然るべき試験を行う、そのように承知しています。

平井文夫:
(今回の制度は社会実験で、)社会実験は危ないという批判はあるけれど、社会実験するしかないと思いますね。日本ってすでに移民大国なんですね。そのためには外国人労働者が働くシステムをちゃんと作らないと、30年後に僕たちがおじいさんやおばあさんになった時に「僕たちのオムツを誰が変えてくれるの、誰もいなくなっちゃった」ってなりますよ。
そこは冷静に考えないと、「移民は怖い」「トラブルがある」「保険を誤魔化す奴がいる」そういうことを一つ一つ解決していかないと後から困るのは僕たちだし、僕たちの子供達。

事実上の“移民政策”ではないのか?

有本香:
「これは移民政策ではない」と政府も議員も言っているんですけど、そのことの欺瞞というものにみんななんとなく気がついているわけですよ。であるならば、もっと踏み込んだ議論をすべきだし、「実態としてこういうデメリットもありますが」というところまで、全て国民にさらけ出すべきだと思います。

岸田文雄:
移民ということについて、国際的には各国が移民というものについて色々と定義をしていますが、一定のものはありません。ある程度の規模の方々を、条件や期限をつけずに受け入れることによって、国を維持するということが基本的な点だと思います。
その点から考えると、今回は人手不足の観点から労働、働いていただくという目的のために受け入れをさせていただく。期限や更新制度など、一般的な移民の概念からは異なっているということは事実だと思います。人手不足が成長の足かせになっている、この対応を考えなくてはいけない、これで今回の制度に至ったということです。


政府は今の国会(会期は12月10日まで)での成立、来年4月の開始を目指している。いまだに詳細が見えない中、国会の議論を通して、国民の不安を解消していくことができるだろうか。

法案が成立すれば外国人受け入れに関して“政策の大転換”となる。その時、国民が納得して迎え入れることができるよう、「報道プライムサンデー」では今後もこの問題を取り上げていく。

(報道プライムサンデー 11月4日放送より)

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