うつ病や失職の原因にも…!「乾癬(かんせん)」は“皮膚病を越えた病”

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  • 誤解されることが多く、患者は苦しむ
  • 名前は(カンセン)だが、実は…
  • 治療法は大きく進歩!

アンジェリカさん告白の皮膚病

皆さんは「乾癬(かんせん)」という病気を聞いたことがありますか?
モデルの道端アンジェリカさんが、昨年 自身が患っていることを告白した、慢性的な皮膚疾患です。
欧米では以前から罹患率の高い疾患でしたが、日本でも食生活の欧米化やストレスから増加し、現在の患者数は約43万人と推計されています。
また、10代から70代まで、年齢に関係なく幅広く分布しているのが特徴です。

10月29日は「世界乾癬デー」に制定され、世界中で啓発イベントが開催されました。
日本でも10月28日(日)からの2日間、東京タワーで啓発イベント「INSPIRE JAPAN WPD 2018」が行われました。
なぜ、そうした啓発活動が必要になるのか。
それは、患者さんが多いにも関わらず、なかなか正しい理解が進まず、誤解されることがとても多い疾患だからです。
そしてそのことが、患者さんを大きく苦しめてしまうのです。

自分のまわりが真っ白に…

「乾癬」の典型的な症状は、まず皮膚が赤くなって盛り上がる紅斑(こうはん)が発生します。次にその上を銀白色の鱗屑(りんせつ)がカサブタのように覆い、やがてそれがボロボロと大量にはがれ落ちます(落屑(らくせつ))。
患者さんからは、「服を着ていても鱗屑がぽろぽろ落ちる」「ソファーに座っていると、自分の周りが真っ白になる」「立っていても、自分の足の形がわかるくらい落屑がある」との声が聞かれます。
その心身の負担は相当に大きいものです。

「乾癬」の発疹ができやすい部位は、慢性の機械的な刺激を受けやすい頭部、肘・膝、臀部、下腿伸側などです。
さらに症状が進むと病変部が、互いにくっついて大きくなっていきます。
皮膚の一部である爪が変形することもあります。
かゆみは、患者さんの約60〜90%にみられますが、個人差があります。

うつ病や、結婚をあきらめたりも

近年、「乾癬」は「More than skin deep」、すなわち皮膚にとどまらない病気であるといわれています。
「乾癬」の症状は皮膚表面で起こるため、見た目にも非常に目立ち、患者さんの生活の質が著しく低下します。 
温泉やプールに行けない。皮膚症状が手足にでるため、スカートがはけない。半袖のシャツが着られない…など日常生活での支障は多くなります。
さらに、日常生活の中で、手をさわることを躊躇されたり、「汚い」と陰で言われているのを耳にしたり…。
そうしたことが大きな精神的ストレスとなり、ひどい場合は引きこもりや、うつ症状を来す例も少なくありません。結婚や出産をあきらめたり、仕事を失ってしまった事例さえあります。
このように、「乾癬」は皮膚病ですが、極めて社会的な病気でもあるのです。

「乾癬」は感染しない!!

「乾癬」をめぐる最大の誤解は何か?
それは、「カンセン」という名前から、つい「感染」に結び付けられ、ヒトに感染すると誤解されることです。
しかし、「乾癬は絶対に感染しない」のです!
細菌やウイルスによる病気ではないので、発疹に触れても、温泉やプールに一緒に入っても、他人に感染する心配は全くありません。
これは「乾癬」についての、極めて重要な情報です。
「世界乾癬デー」が設けられたのも、この事実を啓発するためなのです。そして、治療をあきらめたり、やりたいことをあきらめたりしている乾癬の方々に、専門医にかかり乾癬を克服しよう、何でも挑戦できるんだよ、と呼びかけるためなのです。

「乾癬」の原因ですが、遺伝的要因に環境要因が加わって発症すると考えられています。
最新の研究では、免疫システムが深く関わっていることが明らかになりました。乾癬になりやすい体質に環境因子が加わると、免疫異常を起こし乾癬の発症につながると考えられています。

治療法は大きく進歩!

治療法は、症状にあわせてさまざまな方法を選択します。
ステロイド外用薬やビタミンD3外用薬を患部にぬる<外用療法>、光源ランプで紫外線を照射する<光線療法>。
それで十分な効果が認められない場合は、飲み薬の<内服療法>に移行します。
昨年、日本で「乾癬」の内服薬としては25年ぶりに発売された「オテズラ」という新薬は、これまでになかった機序で作用し、副作用も少ないとされ、内服療法の新たな選択肢となりました。

さらに、近年登場した、「生物学的製剤」の注射と言う、画期的な治療法は、炎症を起こす特定の体内物質を標的として、その働きを抑えます。
皮疹の90%改善を目指すことができるようになりました。重症の患者さんでも皮疹のない状態を保持する事が可能となってきたのです。現在、生物学的製剤は7種類に増えています。     

画期的新薬以上のものは…

「乾癬」の治療は時間を要します。長い治療の過程では、患者さんが希望を失ったような状態になることもあります
もし周囲に患者さんがいたら、正しい知識を持ち、間違った先入観なしに接する、社会の一員である私たちにとって、とても大切なことです。

具体的な事例としては…頭皮に「紅斑」があると、美容院や理髪店で避けられてしまうこともあるそうです。そうすると、患者さんにとっては、大きな心の傷になってしまいます。
「頭皮の専門家」でもある美容師・理容師さんが、「乾癬」について正しい認識を持って接して下さると、画期的な新薬と同じくらい、患者さんにとっては大きな支えともなるのです。

聖母病院 皮膚科部長
小林 里実

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