「無断キャンセル」には損害賠償が請求できる…経産省が対策レポートを発表

カテゴリ:ワールド

  • 無断キャンセルの被害は年間2000億円!
  • 「コース予約」の無断キャンセルは全額請求できる場合がある
  • しかしレポートには強制力はない…経産省に聞いた

飲食店を予約したのに連絡もなく来店しない…いわゆる「無断キャンセル」について11月1日に経済産業省が対策レポートを公開した。

「無断キャンセル」といえば、Twitterで被害を受けた店側が怒りや嘆きを投稿したことが話題となり、編集部でも度々取り上げている。
(飲食店を悩ます「無断キャンセル」 法的に問題はあるのか?)
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出典:経産省 (白部分は通常の予約)

実は、飲食店のすべての予約に対し「無断キャンセル」はわずか1%もない。
しかし、店側が受ける被害は推計で年間2,000億円にも上ると言われている。
この「無断キャンセル」がなくなれば、店側が損する機会が減るのでメニューの質やサービスがグレードアップするかもしれない。客側も、より良いサービスが受けられるだけでなく、予約が取りやすくなるというメリットがある。
そして、レポートによるとキャンセル料については、請求する飲食店はあるものの、ごく一部に留まっているという。

そこで経産省をはじめとする関係省庁や、無断キャンセル問題に精通した弁護士、大学教授、業界団体代表、飲食店向けITベンダーなどを集めた勉強会が平成29年度に設立。
様々な議論を重ね、「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」を発表した。

レポートの中では、無断キャンセル防止のため店側に取り組んでほしいこととして、「予約の再確認の徹底」、「顧客がキャンセル連絡をしやすい仕組みの整備」「キャンセルポリシーやキャンセル料の目安を明示」「事前決済や預かり金の徴収等の導入」という4項目を挙げている。
その中には電話でできるものもあるが、ITの活用やクレジットカード清算の導入が効果的だとしている。

一方で、客側へのお願いもまとめられている。
予約のギリギリになって来店できなくなることがあるのは事実としてあるが「飲食店に行けないことがわかった時点で、何らかの手段で飲食店にその旨を連絡していただきたい」としている。

「コース予約」だと全額損害賠償を請求できる!?

それでも「無断キャンセル」が起きたら、店側は被害を受けないためどうすればいいのか?
レポートでは、キャンセルによって店側が被害を受けることは債務不履行不法行為に当たるとして、客側に対して損害賠償請求が可能だとしている。
さらに損害賠償額を計算する2つのパターンをまとめている。

1、コース予約…「全額」の可能性もある
用意した料理など再販することが難しいコース予約は、「無断キャンセル」で損害の全額を請求できる場合があるという。
ただし、注ぐ前のドリンクなど再販できる飲食物や人件費を除くなど、個別の事情を考慮する必要がある。

2、席のみ予約…「平均客単価の5~7割」
料理ではなく席のみ予約した場合、実際にいくらの損害が発生したかを計算するのはきわめて難しいという。
レポートでは、平均客単価から上記の1と同じ材料・人件費を除いた額の「何割か」が損害賠償の目安になるとしており、一般的には5~7割としている。

ただし店側はキャンセルの方針を事前に客側に示しておく必要があり、キャンセル料の設定理由も説明しなければならないという。

ここまでいろいろ説明してきたが、実はこのレポートには強制力や法的な効力はまったくない。
いったいなぜこんなレポートを発表したのだろうか?
経済産業省の担当者に聞いてみた。

「忘年会シーズンの少し前に対策に取り組んでもらえたら」

――強制力はないレポートで何が変わるのか?

私たちが参加した勉強会では、様々な飲食店の方々から「無断キャンセル」はやはり大変な問題だという話を伺いました。
しかし、お客さんとの関係を大きく損なわない形で、自分たちの利益や生産性を高めるにはどうしたらいいか分からない。毎日の仕事に追われる中では、なかなか「無断キャンセル」問題に手が付けられないということでした。

今回のレポートは強制力はありませんが、飲食店の皆さんが自分のお店に取り入れられるようなことがまとめられています
こういうことを手始めにやってみようとか、横置きしていた課題に対して、一歩二歩と進んでいただけることを期待をしています。
忘年会シーズンのすこし前に、こういったものが広がることで、じわじわと飲食店の皆さんが対策に取り組んでいただけたらいいなと思います。

――すでに独自の方法で無断キャンセル対策をしている店は、そのままでもいいのか?

そういうお店はむしろそのままでいいと思います。
自分たちが今やっていることに足りない要素があって、レポートの中にいいなと思うものがあったら追加で実施していただければいいですね。

補助金を活用した予約管理のIT化

――このレポートだけで、すべての店がガラッと変わるのは難しいのではないか?

予約台帳に手書きで名前を書くようなやり方では、2日前にリマインドして無断キャンセルを防ぐなどの対策は難しいと思います。
そこで経産省のサービス政策課では、サービス産業のIT化を進める補助金を出す事業を行っています。
これらをうまく活用していただきながら、会計処理や顧客の情報管理、予約管理をIT化して、それとセットで無断キャンセル対策を進めていただきたい。


――これから経産省は、無断キャンセル対策にどう取り組んでいくのか?

まず、IT導入の補助金をしっかりと活用していただく。
あとは、今回の対策レポートをうまく活用している好事例を、外食に携わるいろんな方々に知っていただくためにお伝えする。
単に「このレポートを出しました。終わり」ではなくて、この両輪で無断キャンセル対策を知って頂きたい。

――ちなみにレポートでは「無断キャンセル」を「No show(ノーショー)」という言葉で表現していたが?

これからラグビーW杯2019や2020東京オリンピック・パラリンピックなどがありますので、インバウンド対応にもなると考えています。
「No show」は今、あまりなじみがない言葉ですが、海外では「無断キャンセル」として通用する言葉です。
そういうことも意識をしながら、レポートの中では両方の言葉を併用して、特に「No show」という言葉を多用しています。

忘年会シーズンを前に一定の指針を出した経産省には、店側も客側も得をしない無断キャンセルの対策について主導して欲しいと思うが、レポートを発表した同じ日に経産省は「無断キャンセル対策推進協議会」を設立した。
これは、飲食店向けに無断キャンセルの防止や被害を最小限にするための仕組みを提供しているIT企業などが集まった団体で、問題の解決に向けた仕組みづくりを行っていくという。